ポイント発行6000億円規模、2次元コード決済で主導権狙うPayPayの勢い
スマートフォン決済サービス「PayPay」のポイント発行額が、2022年度に前年度比約1・5倍の6000億円規模となり、ポイント発行額首位の楽天を上回る増額を達成する見通しだ。23年度は逆転する可能性も見えてきた。幅広い店舗で少額決済に使えるアプリケーションとして発行額を伸ばしている。今後はネットの利用を伸ばす戦略が奏功するか注目される。(編集委員・川口哲郎)
PayPayの登録ユーザー数は5500万人で、スマホを持つ日本人の2人に1人以上が利用している。2次元コード決済の国内取扱高では3分の2のシェアを握る。今後はポイント発行額で国内首位に立ち、2次元コード決済で主導的な地位を狙っている。
サービス開始の18年以来、利用加盟店の拡大などでポイント発行額は右肩上がりで伸びてきた。22年度にさらに押し上げた要因が、ヤフーやソフトバンクからの切り替えだ。「Tポイント」の契約終了に伴い、22年4月から「ヤフーショッピング」などの買い物やソフトバンクの携帯電話利用料金に応じてたまるポイントがPayPayに一本化された。
地方自治体との連携も利用増加に弾みをつけている。地域の店で買い物をすると還元率が上がるキャンペーンを20年から展開し、800回の実績がある。自治体からポイント還元事業者として選ばれる理由を、波津美里ポイント事業部リーダーは「利用できる場所が身近な所で非常に多いと、自治体の担当者も感じている」とみる。
全国の加盟店数は398万店(22年12月末時点)で、「個人商店などの小規模店舗にも広がっている」(波津リーダー)という。全国22拠点で数千人規模の営業員を動員し、店舗に足を運んだ成果だ。利用者や利用額が増えれば、集客効果を期待して加盟店舗が拡大し、さらに利便性が高まるという好循環に入った。
PayPayは実店舗の利用を継続して増やしつつ、今後力を入れる領域がネットだ。3月からヤフー、LINEと合同で、対象商品を購入するだけでPayPayなどの特典が受けられる新サービスを開始した。9400万人にアプリを提供するLINEと5500万人の利用者を抱えるヤフーと連携し、それぞれの顧客基盤でサービス導入拡大を狙う。同サービスの参加企業はアサヒ飲料や花王など大手4社が名を連ねる。「より密な形でメーカー販促をやっていく」(同)形だ。参加企業は今後、順次増やしていく計画だ。
グループのPayPay証券やPayPayほけんといった金融サービスとの協働体制も構築し、相互の利用拡大を目指す。金融サービスでは860万以上の口座を持つ楽天証券がリードしており、新興のPayPay証券はポイント運用などで規模を拡大できるかが焦点となる。
ポイント経済圏の王座を巡り、楽天、PayPayはともに自社の優位性を競い合っている。PayPayは「一番の経済圏を目指す思いを持っている」(同)として発行額をさらに積み上げる姿勢だ。顧客にもっとも選ばれるポイントサービスはどこになるのか、23年度の動向に注目が集まる。