主力市場が大幅減益のトヨタ、執行役員が見通す今後の市場環境|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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主力市場が大幅減益のトヨタ、執行役員が見通す今後の市場環境

主力市場が大幅減益のトヨタ、執行役員が見通す今後の市場環境

トヨタ自動車が発売した新型プリウス(ハイブリッド車モデル)

トヨタ自動車が9日発表した2022年4―12月期連結決算(国際会計基準)は、過去最高の売上高に対し、営業減益となった。資材費高騰や半導体不足が響く中、目立つのが主力市場である北米の減益だ。一方、底堅い需要やこれまでの体質強化策を反映し、通期の利益予想は据え置きとした。23年度も堅調な需要環境を予想する。暦年で1060万台を目安とする生産台数見通しを公表しているが、計画通り進められるかが焦点となる。(名古屋・政年佐貴恵)

22年4―12月期の地域別業績で大きく落ち込んだのが、北米だ。営業利益は前年同期比90・2%減となる492億円だったが、10―12月期で見れば前年同期の1088億円の黒字から、137億円の赤字に転落した。主な要因は資材高騰の影響で「減益分の7―8割を占める」(トヨタ)という。コスト増に対して販売価格の改定が間に合わなかったほか、労務費など固定費増も響いた。

アジアやその他地域では販売が増え増益で着地。日本は資材高騰の影響があったが、輸出に伴う円安効果が1兆円ほどあり、同28・1%増の1兆5451億円だった。一方、22年4月以降の四半期ベースで初めて減益となったのが中国。コロナ禍に伴う消費者マインドの低下などが響いた。22年4―12月期では、原価低減などが押し上げ増益となった。

足元では受注残が積み上がっており、車両の供給が収益に直結する状況だ。ただ全体の業績を大きく押し下げているのが、資材高騰。通期では仕入れ先のコスト負担分を含め、1兆6000億円の営業減益影響を見込む。半導体不足も不透明感が残る。

トヨタの長田准執行役員は23年度の市場環境について「各地域で5―10%の幅で成長するのではないか」と予測する。着実に挽回生産を進め、目安とする1060万台に近づけられるかが今後の業績を左右する。それには生産を下支えするサプライチェーン(供給網)の安定維持が重要になる。

トヨタは資材高騰影響のうち、3―4割を仕入れ先への還元分と見込む。「サプライチェーンの苦境を守る。特に1次取引先以降のティア(階層)の深い所まで行き渡らせることが課題だ」(長田執行役員)。今後、1次取引先と取り組みを強化していく。ただ「未来永劫(えいごう)、(コスト負担分を含む)1兆6000億円を続けられる訳ではない」(同)とし、仕入れ先の状況も注視しながら来期以降の対応を検討する。

前期比では減益予想だが、通期見通しは据え置く。長田執行役員は「減益予想は悔しい思いがあるが、ロシア事業撤退や想像もつかないインフレといった不確定要素が起きた中で利益を確保できた。十数年取り組んできた企業体質強化の成果だ」と総括する。収益力という基盤を基に、従来カバーしていなかったコスト負担という“緊急対策”でサプライチェーンの底上げを図り、来期の高い目標につなげたい考えだ。


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日刊工業新聞 2023年02月10日

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