DEレシオ改善する三菱ケミカルグループ、財務戦略のポイント
三菱ケミカルグループは、2020年の田辺三菱製薬の完全子会社化によりふくらんだネットD/Eレシオ(負債資本倍率)を21年度に期初の1・7超から期末に1・40へ改善した。ポートフォリオ見直しの一環で結晶質アルミナ繊維事業の売却を行い、財務体質の改善が進んだ。
化学業界は設備投資規模が大きく、柔軟に資金調達を行うため、DEレシオの目安を0・8以下など堅めに置く企業が多い。同社は引き続き有利子負債の返済を優先事項とし、22年度に1・29、25年度に1未満とする。
最高財務責任者(CFO)の中平優子執行役エグゼクティブバイスプレジデント(EVP)は「DEレシオ悪化は一過性で、改善は正しい方向に進んでいる。課題は収益性や投下資本の効率性にある」と話す。今後のDEレシオ改善も収益向上が基本策となる。
汎用品から高機能品まで幅広く扱う総合化学各社の21年度のコア営業利益率(ROS)は、三菱ケミカルグループ6・8%に対し、住友化学は8・5%、三井化学は10・0%。石化市況の振るわない時は各社5―7%程度となっている。
三菱ケミカルグループは“スペシャリティマテリアルズ”へシフトし、25年度に一段上の11―13%へ引き上げる。石化市況がかなり好況だった17年度の三菱ケミカルグループのROSは10・2%。同社は23年度をめどに石化・炭素事業を分離する方針を出しているが、石化好況時を上回るROS11―13%達成には大きく事業を変革していく必要がある。
先行き不透明感が増す中、まずは原燃料高分の価格転嫁が必須条件。これに加え「ポートフォリオマネジメントとコスト構造改革を加速する」(中平執行役EVP)。事業単位の見直しだけでなく、事業部内でも製品ごとに収益性を確認しミックスを改善する。投資はROIC(投下資本利益率)を基準に案件を選び、効率性を高める。「全社平均のROICのような案件は決断できない」(同)。
事業単位から製品単位まで、スペシャリティシフトをやり切ることがポイントとなる。