富士電機がEV用SiCパワー半導体を量産、シェア2割獲得への本気度
富士電機は2022年度中に松本工場(長野県松本市)で電動車向け炭化ケイ素(SiC)パワー半導体を量産する。第1弾は新型電気自動車(EV)向けで、量産車への供給は初めて。24年度にもSiC半導体の供給は3―4車種に拡大する見通しで、青森県の工場にもSiC半導体の生産ラインを新設し、量産を始める。25年度にSiCを半導体事業売上高の10%前後まで伸ばし、25―26年に市場シェア2割の獲得を目指す。
SiC半導体はインバーターなどの電力変換用に使われる。電力損失を低減でき、車載電池の容量やコストの削減につながる。電池容量を削減できれば車体重量が軽くなり、航続距離を伸ばせる。
富士電機は鉄道向けにSiCパワー半導体の納入実績を持つが、量産タイプの完成車向けは初供給。SiC金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)で、松本工場の既存の6インチウエハー用ラインで量産に乗り出す。
車載用SiC市場は24年頃から急拡大するとみられており、富士電機も24年度以降に供給先が3社に増え、車種も3―4種に拡大する見通し。需要に対応するため、24年度の量産開始を目指して子会社の富士電機津軽セミコンダクタ(青森県五所川原市)にSiC半導体生産の6インチラインを準備中だ。
SiC半導体の次世代製品の開発も進めるほか、24年度以降の次期中期経営計画の期間中に、SiCの8インチウエハーを使う生産ラインを導入することも検討している。
【関連記事】 パワー半導体の規模拡大に消極的だった富士電機が攻めに転じたワケ
日刊工業新聞2022年6月22日