加速するEV開発競争、自動車技術の展示会で見えた最新トレンド
環境負荷低減への社会的な要請の高まりを背景に、電気自動車(EV)など電動車の開発競争が加速している。その中で、普及に向けてネックとなるのが航続距離や燃費(電費)性能だ。部品メーカーは電動車の燃費向上に向け、車載部品の高性能化や小型・軽量化を急いでいる。25ー27日に横浜で開かれた自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展2022」で最新トレンドを追った。
日立製作所と日立アステモは、EV向けインバーターの省エネルギーと小型化を両立する技術を紹介した。パワー半導体をプリント配線基板に一体化したことで電力配線を大幅に削減。インバーターの大きさを半減した。
加えてインダクタンス(磁束変化に対する抵抗)の低減により、パワー半導体がスイッチ動作の際に発生するエネルギー損失を従来比約3割減らした。EVや急速充電器などに活用できるとみる。「2027―28年頃の実用化を目指している」(日立製作所電動化イノベーションセンタ・伊藤誠研究員)という。
ボッシュ(横浜市都筑区)はクラウドでEV車両の電池情報を管理・分析するシステムを展示。個々の電池に合わせた最適な方法で充電するので電池の劣化防止、寿命延伸につながる。長期間モニタリングすることで3年以上先の電池の寿命も推定できる。「自動車や電池メーカーが開発に生かせるだけでなく、中古車売買の価格設定にも収集データを使える」(ボッシュパワートレインソリューション事業部・飯塚勝美マネージャー)とみる。
アドヴィックス(愛知県刈谷市)は、ブレーキをかけると効率的にバッテリーが充電できる「回生協調ブレーキ」を展示。既にトヨタ自動車初のEV専用車「bZ4X」に採用されている。
EVの中核となる駆動モジュール「eアクスル」においても、航続距離を向上する技術開発が進む。ジヤトコの佐藤朋由社長は、モーターの中心軸をドライブシャフトが貫通する同軸のeアクスルでは「当社のお家芸であるギアの技術で小型軽量化高効率を実現している」と自信を示す。同社は20年代半ばにeアクスルの市場投入を予定。佐藤社長は変速機能付きのeアクスルを開発するなど競争力を高め「30年までに年間生産台数を500万台まで伸ばす」と述べた。
eアクスルの性能向上に向け、NTNは軸受の外輪外径面の一部に独自開発の逃げ部加工を設けた「クリープレス軸受」を出品。ハウジングとの接触を回避し、クリープ(外輪が円周方向に回転しずれる現象)を停止する。電動化シフトで新たに生まれるニーズを取り込むため、部品メーカーの開発競争が激しくなりそうだ。