凸版印刷が親子上場廃止で狙う効果
凸版印刷は、株式公開買い付け(TOB)によりトッパン・フォームズを完全子会社化した。同社は凸版の子会社のうち国内唯一の上場会社だった。親子上場を廃止することでグループ経営の効率を高める。シナジー(相乗効果)創出により、デジタル変革(DX)事業の成長に弾みを付けたいという狙いもある。
「両社ともBPO(業務受託)の事業拡大を目指している。完全子会社化で両社のノウハウ、テクノロジーを融合してトータルサービスとして提供できるようになる」。麿秀晴社長はTOBの狙いについてこう語る。これまで、トッパン・フォームズは書類の電子化やデータ入力などの事務系分野、凸版はイベントや書籍関連分野で、業務を受託。このため、顧客先は同じでも「トッパン・フォームズは事務部門、凸版はプロモーション部門」(麿社長)へサービスを提供してきた。窓口を一本化し、顧客に一貫したサービスを提供できるようにする。
加えて足元ではDXニーズが急拡大している。IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)などデジタル技術を活用したBPOソリューションの展開に向け、シナジーを最大化する必要があると判断した。重複投資を減らせるというメリットもある。
ただ、凸版にとって今回の親子上場廃止の真の狙いは事業ポートフォリオ転換だ。ペーパーレス化に伴い紙印刷事業の縮小が進む中、DX事業の拡大や海外の生活関連事業、新規事業の拡大に取り組んでおり、トッパン・フォームズ完全子会社化は第1ステップとなる。詳細は明らかにしていないものの、2023年10月には持ち株会社制へ移行することも検討している。
22年4月には、フォトマスク(半導体回路の原版)事業の分社化も行う。将来的には新規株式公開(IPO)も視野に入れる。技術革新が著しい半導体業界の需要に応えるには持続的な設備・研究開発投資が求められており「自前で企業として独立し資金調達を行い、サイクルを回せるようにした方がよい」(麿社長)と判断した。