INPEXとJAPEXの石油上流2社は脱炭素の潮流にどう挑むか|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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INPEXとJAPEXの石油上流2社は脱炭素の潮流にどう挑むか

INPEXとJAPEXの石油上流2社は脱炭素の潮流にどう挑むか

JAPEXは日本CCS調査の筆頭株主として、石油採掘技術が生かせるCCSの実証実験に参加する。(苫小牧市の実証試験設備)

INPEXと石油資源開発(JAPEX)の石油上流2社が4月1日付で組織改正し、上流開発分野とカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)分野をコア事業の2本柱として両立させる姿勢を明確に打ち出す。脱炭素化の流れの中で最も厳しいポジションにいるが、上流開発で培ったノウハウや技術、産油国との関係性などを最大限に生かせる体制とする。(編集委員・板崎英士)

INPEXは分野と地域の役割を明確にした。分野別では脱炭素を目指すネットゼロ5分野として「水素・アンモニア」「CCUS(二酸化炭素の回収・貯留・利用)」「再生可能エネルギー」「メタネーション」「森林」を策定。2022―24年の3年間を準備期間として、5分野に2000億円を投じ実証研究を行う。

上流開発では3年間に温室効果ガス排出量を19年度比10%以上削減し、燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出が少ない天然ガスへの投資比率を50%に高める。30年の長期目標は温室ガスを30%以上削減、天然ガス投資比率が70%。同時に昨今の世界情勢や厳しい気象から液化天然ガス(LNG)調達の不安があるため、LNGのトレーディング取扱量を1000万トンに増強する。

地域軸では豪州、アブダビ、東南アジア、国内、欧州をコアエリアとした。新たに加えた欧州は北海油田開発と洋上風力に注力する。また、技術研究所にクリーンエネルギー技術の開発拠点「I―RHEX(アイレックス)」を設ける。他社や大学、研究機関と連携し、CCUSなど上流開発で培った技術を脱炭素エネルギーに応用するオープンな研究開発拠点とする。

JAPEXも海外事業を従来の地域別体制から、上流開発からLNGの中下流域までを担当する「海外事業第一本部」と、主に脱炭素分野の開発を行う「海外事業第二本部」に再編する。国内もCNの技術評価やCO2回収・貯留(CCS)、地熱の専任部門を置くとともに、技術研究所も石油・天然ガスの上流技術を研究する組織と、CN関連技術を研究開発する二つの組織に改編する。施設技術関連業務はCN分野も集約し、一体的、効率的に進める。

両社には脱炭素への移行期にも石油、天然ガスを安定供給する社会的使命がある。「石油、天然ガスでも徹底したクリーン化を進めるが、早期生産・コスト回収を重視する」(上田隆之INPEX社長)と、脱炭素エネルギー開発との両立に挑む。

日刊工業新聞2022年2月18日

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