渋谷で突然「モノづくり」に出会う体験を。入社10年未満の社員たちが、ショップを立ち上げたワケ|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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渋谷で突然「モノづくり」に出会う体験を。入社10年未満の社員たちが、ショップを立ち上げたワケ

グッドファクトリーショップができるまで
渋谷で突然「モノづくり」に出会う体験を。入社10年未満の社員たちが、ショップを立ち上げたワケ

前列右より、雑誌編集部の鎌池愛、雑誌広告部の福田史織、後列右より、ニュースイッチ編集部昆梓紗、イベント事業部蓮見明里、コンテンツサービス部濱中望実(写真撮影時以外マスク着用)

日本のモノづくり企業の技術と知恵、センスとギミックが詰め込まれた、「グッド」なmade in 工場の製品を紹介するショップ「グッドファクトリーショップ」。なぜ今、中小製造業の商品を集めたポップアップストアを行うのか。企画を立ち上げた3人の社員に、開催のねらいと思いを聞きました。(聞き手・森崎まき)

モノづくりの面白さ・技術のカッコよさに出会える「グッドファクトリーショップ」開催!

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―「グッドファクトリーショップ」を始めることになったきっかけは。

鎌池 私たちはもともと、入社後に出版局に配属された3人です。数少ない若手女性社員同士で仲良くなり、2人が他の部署に異動してからも、LINEグループでやりとりをしていました。普段は雑談ですが、たまに仕事のアイデアを出し合うときがあって、その一つです。

蓮見 TENTというデザイナー会社が、大阪の町工場と協力して、食器を作ったんです。私がSNSで見つけて、「めっちゃ可愛い」って衝動買いして。そこが、開発ストーリーを紹介するウェブサイトを作っていたんですよね。そのサイトをLINEグループでシェアして、「こんな感じで展示会ができたらいいな」と送ったら、昆さんからすぐに「いいね 渋谷でやろう」と返信がありました。

 私はニュースサイト「ニュースイッチ」の編集を担当しています。最近、BtoB製品を手掛ける中小企業であっても、デザインの力によって注目が高まるという事例が多いです。そういう文脈と合うし、実現できそうだなと思いました。会場は渋谷で、とにかくおしゃれに、というコンセプトは最初から固まっていました。

蓮見 私は「国際ロボット展」など展示会を主催する、イベント事業部に所属しています。ちょうど部内で新しい展示会を検討しており、私も自分の企画を出すにあたって「どうせなら、自分のテンションが上がるものをやりたい」と考えていました。

鎌池 私は月刊誌「プレス技術」で、町工場のBtoC製品を紹介する連載「わが社の新製品戦略」を担当しています。6年間で、80社以上を取材しましたが、町工場のBtoC製品って、生産が追い付かなったり、原価割れしてしまったり。4-5年すると、立ち消えになることが多いんです。

 BtoC製品がブランドとして存続すれば、景気の波に左右されにくい、売り上げの柱になります。もっと力になりたい、と、もどかしさを感じていました。 それで2人に、「おしゃれなBtoC製品を出している会社は知ってるよ」と話したんです。

雑誌「プレス技術」と連載「わが社の新製品戦略」

―3人の現在のお仕事と、問題意識に合致したんですね。とにかくおしゃれに、というのはどうしてでしょうか。

 「ニュースイッチ」は、モノづくりの面白さや技術のすごさを、若い人や、モノづくりに接したことがない人に伝えたくて、2015年に立ち上げたサイトです。6年間やっていて、デザインの力は重要だなと痛感しています。直観的に「いいな」と思えるようにしないと、人は来てくれない。逆に、「いいな」の引っ掛かりがあれば、モノができるまでの過程や、技術にも興味を持ってくれるんじゃないかと。

 東京ビッグサイトでもやるけれど、まずは渋谷で。ふらっと遊びに来ている若い人たちに、突然出会ってほしい。その場で購入もできるよう、展示会でなくショップにしました。

鎌池 私は、自分の取材先を見てもらいたいと思う一方で、単なる「おしゃれな雑貨屋さん」をやるなら、違うなと思っていました。世の中はおしゃれなもので溢れているし、その道のプロがたくさんいますよね。

 それに、中小企業の懐事情が厳しいことが、身に染みてわかっています。BtoC製品を出したくても、開発にも販路開拓にもコストがかかる。出してもあまり売上になっていないケースもあります。

 展示会をやっても、彼らの損になるのではないか。正直、2人に気持ちが追い付くのは遅かったです。最初にわーっと盛り上がったあと、「本当にうちがやるべきか」ということを、時間をかけて話し合ったよね。

蓮見 これまでも、町工場を集めた展示会やブースはあります。そことの違いはなんだろう。新聞社がやる意味はなんだろう。3人で一番議論した部分かもしれません。

鎌池愛(雑誌「プレス技術」編集部)

―いったん立ち止まって考えたのですね。できる見通しが立ったのは。

鎌池 企画段階で、取材先の企業に話してみたら、すごく興味を持ってくださったんです。反省しました。どの企業も、あきらめていないから、いろんなことができるんですよね。いつでも誰でも、挑戦する人は突破口を求めているのだと、考え方が変わりました。

 ヒアリングをすると、BtoCのビジネスを拡大したい会社だけではなく、BtoC製品を宣伝材料にして、BtoBの仕事を増やしたい会社もいることがわかりました。弊社なら、そういう会社にも訴求できるのはないか、と気づきました。

蓮見 私たちは新聞社ですから、「ここは“グッドファクトリー”だ」とわかる知見が強みじゃないかとも話し合いました。BtoCも宣伝して、BtoBのビジネスも応援する。「やりたい」と盛り上がってから4か月間、ヒアリングの結果をもとに企画を練り、どんどん企画書を更新していきました。

 出展企業は、一斉に募集をかけるのではなく、「ここは」という会社にお声がけしています。技術が素晴らしい、取り組みが革新的、新しいことに挑戦する社風などの面で選びました。

鎌池 おしゃれに作るのは技術が必要なんです。どの会社も、技術的な壁を乗り越えている。出展企業選びは時間をかけたけど、選びやすかったです。


―実現に向けては、さまざまなハードルがあったのではないでしょうか。

蓮見 出展料と経費のバランスは難しい問題でした。

 社内ではその点を心配する声もありましたが、「何のためにやるのか」をとことん話し合った結果、新しい挑戦している中小企業を応援したい、という企画趣旨はなんとしても守りたかったです。

蓮見 最終的にその問題をクリアしてくださったのはスポンサー企業の皆様でしたね。

 日刊工業新聞はBtoBの媒体です。一般紙ではありません。今回の展示会に限らず、日刊工と付き合ってもらって、日刊工のサービスと記事で、お客さんが儲かるというのが、BtoBの媒体として一番やりたいことです。

 私たちが普段広告をいただいている工作機械メーカーさんも、日刊工の読者である機械ユーザーに広告を見てもらって、機械を買ってほしいから広告を出してくださっているわけですよね。工作機械メーカーさんもユーザー企業さんを応援することは、結果として自分のためになるんじゃないか。そう考えて、出展企業が使っている工作機械のメーカーさんや、団体に選りすぐってお声がけしました。そしたら、実績のない企画にもかかわらず、皆さん今回の企画に同意してくれたんです。皆さん、若い人へのフォローや、新しいことにチャレンジするユーザーへの応援が必要だなと思っていて、入ってくださった。スポンサーさんには感謝しかありません。

昆梓紗(デジタルメディア局「ニュースイッチ」編集部)

―今までのやり方だけでは届かない、という思いは共通していたのかもしれませんね。

 これまで、新しいことをやろうとしても、マンパワーがなかったり、今までのやり方を踏襲してしまったり。そうならないように、気の合うチームメンバーがやりたいと思える企画にすることを重視しました。また、コンセプトが「かっこよく」「おしゃれに」なので、企画段階からデザイナーの濱中にチーム入ってもらい、全体のディレクションをお願いしました。

蓮見 ふつう、展示会は出展料をいただいて場所をお貸しする、というだけのビジネスですが、今回は、展示パネルやレイアウトも私たちが一緒に考えて作っています。

鎌池 何も知らない人に伝えるため「プレス加工」「工作機械」などのモノづくり用語にも説明をつけたり。会場もいくつか、みんなで下見に行ってね。会場が決まってからは雑誌部の広告担当の福田にもチームに入ってもらい、出展社候補の企業も一社一社、自分たちで趣旨を説明し、参加の検討をお願いしてまわりました。

蓮見 もっと人通りが多い会場もあったけど、モノを置いただけでも格好いいような会場はhotel koe tokyoさんだけだった。

 愛が深いよね。中小企業さんと一緒に汗をかく、というのも、ずっとやりたかったことです。

蓮見明里(イベント事業部)

―今後は。

蓮見 今回をちゃんとやって、次は規模を拡大したいですね。出展するのは挑戦的な方ばかりで、「次はこういうことがしたい」という話がどんどん出てきます。皆さんのやりたいことに肉付けして、「モノづくりって面白いよね」ということを広げられれば。欲を言えば、数年後海外に販路獲得、なんてことになれば一番です。

鎌池 手前味噌ですが、取材先から「日刊工業新聞は対等だ」と褒めていただくことがあります。新聞社だけど、同じ中小企業の素朴さがあると。信用してくれているんです。

 中小企業のいいところは、やりたいことをすぐにやれるところです。社長が声をかけたら、10人や20人の社員が、一斉に同じ方向を向いて動ける。特に私たちが取材しているところは、最新機械を当たり前のように操って、頭に浮かんだものを「形」にできる人たちです。

 一緒にいろんなことができたら。柔軟なアイデアを、同じ目線で聞いて、文章にしたり空間にしたりしていければ、お役に立てるのかなと思います。

ポップアップストア情報

日本のモノづくり企業の技術と知恵、センスとギミックが詰め込まれた、「グッド」なmade in 工場の製品を紹介するショップ「グッドファクトリーショップ」にて、実物を見て、触って、購入できます!

「グッドファクトリーショップ at 渋谷」
日程:2022年1月21日(金) 、22日(土) 10:00~20:00
場所:渋谷 道玄坂 hotel koe(東京都渋谷区宇田川町3−7)
入場料:無料

「グッドファクトリーショップ at 東京ビッグサイト」
日程:2022年3月9日(水)~ 12日(土)10:00~17:00
場所:東京ビッグサイト(国際展示場)(東京都江東区有明3-11-1)
入場料:事前登録制 来場登録はこちらから(2022年1月下旬から来場登録受付開始)


展示会スポンサー


 

 

一般社団法人日本工作機械工業会
 https://www.jimtof.org/

 

株式会社ソディック
 https://www.sodick.co.jp/

 

シチズンマシナリー株式会社
 https://cmj.citizen.co.jp/

 

碌々産業株式会社
 http://www.roku-roku.co.jp/

 

株式会社アマダ
 https://www.amada.co.jp/ja/

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日刊工業新聞社では日本のモノづくり企業の技術と知恵、センスとギミックが詰め込まれた、「グッド」なmade in 工場の製品を紹介するポップアップショップ「グッドファクトリーショップ」2022年3月9日(水)~ 12日(土)10:00~17:00/東京ビッグサイト(国際展示場)(東京都江東区有明3-11-1)

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