好調な建機業界に原料高の影、カギ握る「中国」の生かし方
2021年の建設機械業界は、中国を除く全世界で建機需要が回復した。主要メーカーの21年4―9月期決算は各社が大幅増益を達成。コマツは当期利益が前年同期比2・5倍の931億円、日立建機は同151倍の318億円に回復し、そろって22年3月期見通しを上方修正した。オミクロン株など新型コロナウイルス変異株の影響も現時点では軽微。顧客からの注文や稼働率も落ちていないが、鋼材をはじめとする原料価格上昇がじわじわ効いており、各社とも対策に追われている。
コマツは「世界各国に工場を持つ強みを自在に生かす」(小川啓之社長)ため、中国工場の余剰生産能力の活用を決めた。中国は不動産市況の失速に加え、20年の春節特需の反動減で生産能力が余っている状態。中国工場で組み立てた中型油圧ショベルをロシアとインドネシアに21年度は各500台輸出、22年度は1000台の輸出を計画する。中国の鋼材価格はおおむね日本より1割程度安い。北米や日本向けに板金部品も輸出する考えだ。
酒井重工業も中国の余剰能力活用に取り組む。中国で生産したロードローラー向け板金部品や鋳物部品を、北米を除く日本やインドネシアの工場に輸出する。北米を除外するのは米中分断を考慮したため。部品生産拠点として「最盛期は6―7割を北米に供給していた」(酒井一郎社長)が、北米輸出が困難になり中国国内の需要も伸びが期待薄のため、安価な部品の供給拠点として再活用する。
中国工場の活用では日立建機も、ブームやアームなど製缶品輸出に加え、中型油圧ショベル完成車の輸出も検討している。建機は“鋼材の塊”の要素が強いだけに原料高対策になる側面はあるが、顧客にとっては「中国製品」というマイナスイメージもつきまとう。一方で各社が力を入れる電動ショベルはリチウムイオンなどの電池性能が決め手になり、電池分野は中国が強いと言われるだけに、パイプを残しておきたい思惑もある。