【音声解説】「予約でサーバーダウン」「同調圧力止めて」…職域接種2000人独自調査で分かった職場のホンネ|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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【音声解説】「予約でサーバーダウン」「同調圧力止めて」…職域接種2000人独自調査で分かった職場のホンネ

ニュースイッチは音声メディア「ニュースイッチラジオ」を配信しています。記者やデスクなどが記事を解説するコーナーなどを行っています。配信は毎週火・木曜日の朝7時。アーカイブでいつでもお聞きいただけます。
57回目は「職域接種2,000人独自調査「予約でサーバーダウン」「同調圧力止めて」「渋谷の行列よりマシ」職場のホンネ」について、科学技術部の小川部長が解説します。記事と合わせて音声解説をお楽しみください。
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いつまで続くか分からないコロナ禍においても、政府が26日、新型コロナウイルス感染症のワクチンの2回目接種が総人口の7割を超えたと発表するなど、明るい兆しも見える。国民の接種率向上に大いに役立ったのが企業などの職場で集団接種をする「職域接種」だ。日刊工業新聞社とYahoo!ニュースでは、職域接種を受けたビジネスパーソンなどを対象に、アンケートを実施。そこで見えてきた実態とは-。

調査は9月3~4日に実施。対象はYahoo!クラウドソーシングユーザー2,000人。男女比は7対3、年代は10代1%、20代8%、30代20%、40代34%、50代27%、60代以上9%だった。

また、地域別の回答者数では、東京都14%、大阪府10%、神奈川県10%、愛知県9%と大都市圏が多かったものの、2000人の回答者自体は47都道府県すべてを網羅していた。回答者の職業は68%が会社員で、次いでアルバイト10%、公務員5%、専業主婦(主夫)4%と続いた。

職域接種をしてくれる会社に勤めていて良かった

回答者が所属する企業の規模を尋ねたところ、「従業員数1万人以上」で15%、「同5,000人以上1万人未満」で8%と、合わせて4分の1を占めていた。

従業員数1万人以上の企業に勤める人の声を拾ってみると、大阪府の50代男性は、「近隣の病院では予約が全然取れなかったので、よかった」と振り返る。また、愛知県の50代男性は「移動時間不要でありがたい」、東京都の30代男性は「市や県の職員は対応が遅いので、こういったことは民間でやった方が普及しやすいのだと思った」と語る。神奈川県の30代女性も、「職域接種をしてくれる会社に勤めていてよかった」と大手企業ならではのメリットを実感しているようだ。

一方、配偶者の職場(従業員数500〜999人)で接種した東京都の40代女性(専業主婦)は、「運よく職域接種を受けることができたが、自営業や少人数の会社などにはハードルが高いので、もう少しいろんな会社で職域接種ができるようになるといいと思う」と感想を述べる。

規模が小さくても接種はできた

ただ、会社の規模が小さくても職域接種の機会を確保できた人も多い。回答者のうち、従業員数別では「50人以下」が16%、「51人以上100人未満」が7%だった。地域の商工会議所で職域接種を受けた愛知県の30代女性は、「接種会場はスムーズに流れ、あっという間に接種できたので良かった」と喜ぶ。

同じく商工会議所で接種した福岡県の40代男性は、「職域接種を受けられる人と受けられない人がいる。できる限り受けられるようにしてほしいと思う」と複雑な胸の内を明かす。

あくまで職域接種を受けた人向けのアンケートではあるものの、大手企業だけに偏るわけではなく、中小企業も商工会議所の職域接種などを使って比較的スムーズに受けられた人もいたことが分かる。

接種が遅れたけど渋谷の大行列に並ぶより良かった

職域接種を何回受けたか尋ねたところ、アンケート実施時点で2回接種が63.6%、1回接種が36.4%だった。

くわしく見ると、1回目の接種について、全国的に職域接種が開始された直後の6月にすでに終えた人が12.1%いた。三重県の30代女性は、「ワクチンが足りないから受けられないという心配がなく、安心でした。接種スケジュールも職場の上司が組んでくれていたので、ありがたかった」と喜んでいる。全体では、7月までに約半数の人が1回目の接種を終えていた。

一方、2回目の接種では9月上旬のアンケート時点で3割以上の人が2回目を受けられていなかった。2回目がまだだったという東京都の40代男性は、「8月の供給滞りで延期になってやっと1回目が受けられた。もっと早く受けたかったが、(都が設置した若者向け接種会場の)渋谷での大行列のニュースを見ていると自分はまだいいほうなのかと思う」と述べる。

職域接種は最高の福利厚生

また接種を受けた場所について尋ねたところ、半数の49.8%が「自身の職場」と回答。東京都の50代男性は、「到着後5分程度で接種、その後の待ち時間含めても30分程度で終えたので、非常にスピーディー」と振り返る。

さらに、8.9%が「協力・派遣先の職場」、8.6%が「親会社の職場」、4.7%が「配偶者の職場」、4.2%が「商工会議所」とそれぞれ回答していた。「協力・派遣先の職場」で接種したという東京都の30代女性は「30代なので、区での接種ではかなり遅くなったはずだと思うと、職域でできてありがたかった」としている。

また、親会社の職場で接種したという、千葉県の40代男性は、「娘の接種予約にかなり苦労したので、自分自身がすんなり接種できて良かった。最高の福利厚生だと思います」と喜んでいる。

また、「配偶者の職場」で接種したという千葉県の30代女性は、「母より早くワクチン接種をする事になったので、申し訳なさを感じました」と回答。埼玉県の60代以上だという男性も、「大企業は自社でやる体力があるなあと思った」と振り返る。

実家の両親が早く接種しろとうるさかった

回答者になぜ受けたのかも聞いてみた。最も多かったのが「自分の重症化、感染リスクを減らすため」という回答で、66.1%と全体の7割近くを占めていた。

感想を聞くと、「リスクがあるが、重症化が避けられるので少し安心」(栃木県の40代男性)、「安心して暮らせる毎日が早く来てほしい」(愛知県の40代男性)、「少しでも安心して外出できるようになった」(千葉県の40代女性)など、コロナ禍で不安の毎日の中、ワクチンの接種で安心を得られたことを喜ぶ姿がうかがえる。

また、「人に感染させるリスクを減らすため」と回答した人も18.0%おり、兵庫県の30代男性は「実家の両親から早く受けるようにしつこく言われていたので、それがなくなったこともよかった」と述べる。東京都の50代男性も、「人と接する仕事なので、早くに接種できてよかった」と振り返る。

同調圧力、どうだった?

一方で、「職場の雰囲気的に避けられなかった」と回答した人も5.7%いた。奈良県の20代女性は、副反応が重かったようで、「人の人生に責任持てないくせに無言の圧力はやめてほしい」とした上で、「2回目は何を言われても受けないと決意した」と述べる。

大阪府の50代男性も、「正直受けたくはなかったが、職場に受けて当たり前的な雰囲気があって、しかたなく受けた」と振り返る。京都府の50代女性も「接種しない選択肢がなく、副反応で死ぬかもしれないと覚悟を決め接種した」と回答している。

静岡県の20代女性が「職場には逆らえない」と述べるように、企業単位で職域接種を決めると意図しない形でも、無言の圧力や同調圧力と感じてしまう人もいたようだ。

副反応はあったけど接種して良かった

副反応の有無についても尋ねたところ、47.9%の人が「副反応はあったが、仕事に影響はなかった」と回答。逆に、34.9%の人は「仕事を休む、仕事に影響があるくらいあった」と答えている。

東京都の50代男性は、「2回目接種後に2日間ほど副反応が苦しかった」としつつ、「コロナ感染による命の危険や重症化が防げるという安心感はとても大きなものがあり、接種して良かった」と感じたという。また、愛知県の40代男性は、「『モデルナアーム』という副反応が実際に起こったことに衝撃を受けた」と、モデルナ製のワクチンを接種したことによる腕部の腫れを経験した。

写真はイメージ

埼玉県の40代女性は「副反応が激しく39℃を超える熱が出ましたが、仕事を休ませてもらえる状況ではなかった。人員に余裕がないゆえの接種だった」と吐露する。愛知県の30代女性も、「接種したひとの90%が副反応で休暇を取り要員確保が大変だった」と述べるなど、同じ職場で集団接種をする職域接種ならではの悩みが生じていた。

予約争奪戦でサーバーダウン!

一方、職域接種によるトラブルの有無について複数回答で尋ねたところ、約15%が「希望者が多く予約が取りづらかった」と回答した。三重県の30代男性は、「職場で受けられるのは便利ですが、争奪戦だった。社内のサーバーも落ちたので、十分な量を確保してほしい」と振り返る。また、静岡県の40代男性は「接種時間が19時過ぎで遅かった」と不満を漏らしていた。

また、モデルナ製のワクチンの供給量が足らなくなり、「ワクチン不足で接種が中断」とした人も3.4%いた。東京都の50代男性は、「2回目の接種の目途が立たないことで、不安があった。最初に社内接種が決まった時は、2回目の接種日及び、家族の接種も受け付けていたが、突然延期になった」と困惑を見せる。

とはいえ、全体では約7割が「トラブルはなかった」と回答しており、比較的スムーズに接種ができたようだ。

医療従事者の負担が下がってくれたら・・・

最後に、職域接種を終えての感想を聞いてみた。東京都の40代女性は、「これで少しでも感染のリスクが下がり、そして今病院や療養ホテルなどで戦っている医療従事者の負担が少しでも減ってくれたらと思う」と感想を述べる。

北海道の40代女性は「持病に気管支炎があり、重症化が心配だった。飲食店勤務で接客業なので、職域接種は大変ありがたかった」と感謝を口にする。

一方、東京都の50代女性は「派遣先→自治体→親会社と予約を取ったが予約が取れなかったり、延期されたり、または急に話が来たりした」と状況に振り回されて疲れた様子がうかがえる。

別の東京都の50代女性は、「職域接種と自治体接種のメリット・デメリットはいろいろだと思います」としつつ、「今回は職域の場合はモデルナ、自治体の場合はファイザー。免疫が消失しにくいと聞いて安心感を持ったモデルナでしたが、接種後に異物混入が判明。複雑な思いはあります」と困惑している。

何事も手探りの中で進んだ日本のコロナ対応だが、中でも職域接種の導入は初の試みであり、時間との勝負でもあるワクチン接種による集団免疫の獲得に大いに貢献した。多少のトラブルはあったものの、日本社会や企業の強みである「現場力」が発揮されたようだ。しかし、栃木県の50代男性が指摘するように、「情報が錯綜していた時期であり、もう少し確実な情報が欲しかった」と、一般への周知の仕方には課題が多かった。いずれにしても、ビジネスパーソンたちの間でも、コロナ禍においても職域接種の記憶は深く刻まれたようだ。

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