主要生保の下期運用方針出そろう、低金利の厳しい環境下でどうする?
国内主要生命保険会社は低金利の厳しい運用環境下で、収益力向上を目的にオルタナティブ資産や高利回りが見込める社債といったクレジット資産への投資を推進する。新型コロナウイルスワクチンの普及などで主要国の経済正常化が進む従来予想を据え置き、2021年度期初方針をおおむね踏襲する。(増重直樹)
国内主要生保9社の2021年度下半期運用方針が出そろった。
日本生命保険の岡本慎一執行役員財務企画部長は「ヘッジコストは歴史的な低水準。スプレッド収益を獲得できる海外社債は重要な資産」として積み増す考えを述べた。国際分散投資の観点で実施するプライベートエクイティやベンチャー投資では、米国の新規株式公開(IPO)市場活況を受け、投資妙味のある分配金を獲得できる見通しも示した。
住友生命保険も外貨建てクレジット資産への投資を継続。25年に導入予定の経済価値ベースの資本規制を見据え、金利水準も考慮しつつ30―40年の超長期国債を買い入れる。
太陽生命保険は米政府系MBS(不動産担保証券)や投資適格の社債ファンドへの組み入れを進める。富国生命保険も欧米を中心に外貨建て社債を下半期に500億円積み増す方針。朝日生命保険は下期に600億円のクレジット投融資を予定、実現すれば21年度期初計画から400億円上振れる。
世界的潮流であるESG(環境・社会・企業統治)投融資も継続する。第一生命保険は強化しているオルタナティブ投資の不動産運用について、投資基準に環境・社会要素を組み込むことでESG投資を強化する方針を示した。21―23年度に5000億円のESG投融資目標を立てている明治安田生命保険は、21年度上半期だけで目標の約4割に到達。大崎能正執行役員運用企画部長は「収益性や中身を吟味しているが、結果的に計画を大きく上回っている」とした。
機関投資家の利回り向上ニーズを背景にクレジット資産やESG債に投資が集中する運用環境に対して、中堅生保からは「グリーン債や国内社債市場は顕著にタイト」と“過熱感”を指摘する声も聞かれた。優良な案件では購入希望額より割り当てが少なくなる事例も増えているという。
足元では半導体の供給制限などで米国のインフレ圧力が高まっているが、短期的との見方が中心。中国の不動産部門におけるデフォルト(債務不履行)懸念は、中国資産のエクスポージャー(投資残高)が低く、運用面でのリスクは軽微との見方が多い。