1年で5件買収。オリンパスが医療機器事業でM&Aに積極的な理由
内視鏡と並ぶ柱に
オリンパスは内視鏡、治療機器を手がける医療機器事業でM&A(合併・買収)に継続的に取り組み、成長を加速させる。M&Aでは事業規模よりも技術・製品開発面でのシナジーを重視する。2020年8月以降、治療機器を中心に5件の買収を実施。将来を見据えた投資を続け、治療機器を内視鏡に並ぶ柱に育成することを目指す。(石川雅基)
オリンパスはM&Aを通じて、外部の独自性の高い技術を積極的に取り込む。同社の竹内康雄社長は「医療にはさまざまな課題があり、顧客へのソリューションを増やす必要がある。そのため、これまでM&Aに積極的に取り組んできた」と話す。M&Aでは「完成した事業を買収するのではなく、技術や製品をかけ合わせて価値を高める」(竹内社長)ことに重点を置く。
呼吸器の製品を手がける米ベラン・メディカル・テクノロジーズや、内視鏡の視認性を高める器具を展開する英医療スタートアップのアークメディカルデザインの製品など、既に売り上げにつながっている買収もあるものの「買収した企業が大きな利益に貢献するのには時間がかかる」(同)とみる。
5日にはコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を米国に設立する。ロボットや人工知能(AI)など、同社の事業と関連性のある世界のアーリーステージ(起業直後)の企業に5年間で約55億円を投資する。M&Aのターゲット企業との関係構築や技術トレンドの情報収集などを目指す。「年1―2件の投資を想定する」(同)という。
オリンパスは年5―6%の売上成長を目指す。営業利益率は、23年3月期までに20%以上に高めることを目標にしており、海外医療機器大手のアイルランドのメドトロニックや米ジョンソン・エンド・ジョンソンなどと同水準まで高めたい考えだ。
事業の独立性高め成長 竹内康雄社長
オリンパスの竹内康雄社長に中国の国産優遇策の影響や科学事業の分社化などについて聞いた。
―5月、中国政府が地方政府に医療機器の国産製品の調達比率を示したガイドラインを出しました。
「現段階で特に対策は取っていない。軽視はしていないが、中国で医療機器を自国だけで供給することは絶対できない。今後、国産優遇策がどのように進むかは読めないが、当社は医療の発展に貢献する取り組みを粛々と続ける」
―科学事業の分社化を検討しています。
「分社化の一番の目的は、独立性を高めて意思決定を迅速にすることだ。現状、科学事業の利益を医療事業に投資している。今後は、科学事業の成長のために使いたい。科学事業で手がけている病理用の顕微鏡と医療機器事業とで顧客やコア技術は一致するが、新しい製品開発につながるようなシナジーはそれほどない」
―事業間のシナジーについての考えは。
「経営戦略において事業間のシナジーは特に意識していない。当社は顕微鏡、カメラ、内視鏡など個別の事業分野の中で幅を広げてきた歴史がある。コア技術を転用してソリューションを展開する」