キヤノンMJが文章の電子テキスト化ツールで狙うビジネス
キヤノンマーケティングジャパン(MJ)では人工知能(AI)を活用した光学式文字読み取り装置(OCR)サービスを展開する。契約業務など、紙帳票が多く残る保険・金融業界などに提供するほか、社内での導入も進め、業務工程の自動化や効率化を実現している。今後は文書のデータ化・ビジネスのデジタル化のみならず、その後のデータ活用支援など、企業のデジタル変革(DX)を一括支援していきたい考えだ。
OCRは書類を読み取り、登録した文字パターンと照らし合わせて文書の電子テキスト化を行う。手書き文字の場合、登録できるパターンに限界があるほか、筆跡や背景色などのノイズが原因で認識困難な事例もあった。
キヤノンMJ、キヤノンITソリューションズ(ITS、東京都港区)が提供するクラウド型AI―OCR基盤「CaptureBrain(キャプチャーブレイン)」ではこれらの課題を解決。コージェントラボ(東京都港区)の手書き文字認識AIエンジン「Tegaki」と、キヤノンITSのAI技術を活用した項目特化型OCRエンジンを搭載し、手書き文字や活字、金額など、項目ごとに最適な設定を選択できる。
認識率を向上させる機能も備える。帳票の特徴を認識し、登録データとの一致率を判断する「AI帳票分類機能」により、利用者は帳票を一度登録すれば分類を自動化できる。「AI画像補正」では文字のエッジ強調やノイズの除去などを実施。画像処理前と比較すると、文字認識率は5―10%向上した。
3月には、朝日生命保険にキャプチャーブレインと連携した「イメージ処理プラットフォーム」を構築した。過去導入したOCRシステムでは対応できなかった手書き文字のデータ化が可能になり、手続き時間の短縮や業務負荷の軽減につながった。金融SS第一グループの大野浩輝氏は「データ化した情報から、契約者の健康状態の分析や商品開発につなげてもらうなど、企業のDXを支援したい」と展望を語る。
キヤノンMJ社内でもAI―OCRの活用が進む。2019年には法人向けに提供する保守サービスの契約管理業務に導入。ひと月当たり約100時間、1年間で1000万円の外部委託費用削減を実現した。今後は「社内で蓄積したノウハウを社外にも展開したい」(磯村雅弘ソリューション営業推進部長)考えだ。(狐塚真子)
「失敗パターンから学ぶ製造業AI導入のカギ」開催します
ニュースイッチでは製造業のAI活用に関連したオンラインイベント「失敗パターンから学ぶ製造業AI導入のカギ」を10月20日14時から開催します。
製造業でのDX化に向けた取組みが各企業で実践される中、とくに製造現場へのAI導入を試みるケースが増えてきました。すでにAI導入プロジェクト推進の経験を持つご担当者も多いはずです。AI活用の代表的なパターンも見えてきた一方で、そのアンチパターン(失敗の典型例)にも傾向が見えてきています。
本セミナーでは、ニュースイッチでも話題になった特集「AIは幻想かー導入現場のリアル」の執筆を手がけた、AI開発スタートアップLaboro.AIの代表取締役CTO 藤原弘将氏が、製造業の代表的なAI導入ケースである異常検出、需要予測、故障予知、安全管理、工程スケジューリングをテーマに取り上げ、それぞれのアンチパターンを紹介し、AI導入プロジェクトを成功に導くためのヒントを提供します。
お申し込みはこちら(締め切り:10月19日正午まで)