世界の技術者が競うWRS。近未来のロボット社会を演出
国際ロボット競技会「ワールド・ロボット・サミット(WRS)2020」が9日、愛知県国際展示場(愛知県常滑市)で開幕した。ロボット開発に打ち込む技術者たちの姿と、近未来のロボット社会を創造する。バーチャルの展示会とリアルの競技会を組み合わせ、世界から参加できる仕組みを整えた。競技会では工場やコンビニエンスストア、学校など社会で働くロボット技術を競う。(総合2、最終面に関連記事)
開催式で長坂康正経済産業副大臣は「ロボットに関わる技術、アイデアが競い合うことでイノベーションとなることを期待する」とあいさつ。愛知県の大村秀章知事と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の石塚博昭理事長とともに会場を回った。
長坂副大臣らはロボットが実現するコンビニエンスストアの未来像や競技の様子などを視察。大村知事は「ロボット産業が盛んな愛知県でWRSを開催できるのは光栄なことだ」と語った。石塚理事長は「イノベーションを加速し、その成果をスピーディーに社会に実装することを期待する」と述べた。
家庭用ロボットの技を競うサービス部門では、最先端の人工知能(AI)技術が投入された。深層学習(ディープラーニング)で雑貨を認識して収納に片付ける。深層学習で認識精度が飛躍的に向上し、手が付けられるようになった。
WRSは経産省とNEDOが共催。競技会には世界から20カ国90チームのロボット技術が集まる。大会2日目の10日はソフトバンクロボティクス(東京都港区)やファナックなどが最新のロボット技術やプログラミング教育を披露する。
WRSアンバサダーのディーン・フジオカ氏「社会実装、汎用性必要に」
パートナーロボットチャレンジは同一機種のハードウエアに、チームによって異なるプログラムを載せるという競技の仕方が印象的だ。一つのハードウエアをいろいろな用途に使う汎用性を感じる。社会でロボットを使うには、汎用性が必要になるだろう。
フューチャーコンビニエンスストアチャレンジの競技フィールドでは、ロボットが働きやすい店舗空間を設計する発想に興味をひかれた。製品組立チャレンジでは材質によってロボットの扱いやすさが異なるため、思うようにつかめないと始めからやり直すなどトライを重ねていたのが印象的だった。
WRSは世界の技術者が競う場だ。世界の人がいろいろな環境や文脈の中で、発想や技術を生み出す。ジュニアカテゴリーはリモート競技で会場ではふれ合えなかったが、才能や興味を将来に向かって発揮してほしいとエールを送った。
ロボットの活用フィールドは人ができないこと、人が入っていけない場所など、広がるだろう。エンターテインメントの分野、例えば「人狼ゲーム」の司会進行やトランプのディーラーをロボットがやったら、ロボットが日常の景色に自然にいるという社会になる。
10月には災害対応ロボットやインフラ点検などの競技がある福島大会がある。東日本大震災から10年が経過したが、まだ復興が十分ではない場所もある。ロボティクスでよりよい未来をつくるWRSに携われたことがうれしい。(談)