注目集まる「カーボンリサイクル」、日本の技術を世界に売り込めるか
2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた動きが加速している。中でも二酸化炭素(CO2)を資源と捉え、分離・回収し製品に再利用する技術「カーボンリサイクル」に注目が集まる。世界が脱炭素に向けて一斉にかじを切る中で、日本の強みを生かした技術を開発・社会実装し、海外に技術や製品を売り込む戦略が重要になる。(冨井哲雄)
普及開始、40年に前倒し
経済産業省は7月、カーボンリサイクル技術に関するロードマップ(行程表)の改訂版を公表。50年の目標達成に向け、カーボンリサイクル技術を利用した製品の普及開始時期を40年ごろとし、現行版より10年前倒しとする内容を盛り込んだ。同ロードマップは19年6月に策定され、今回が初めての改訂。「競争環境が大きく変わり、産業界の開発の実態を踏まえ更新した」(資源エネルギー庁カーボンリサイクル室の土屋博史室長)という。
改訂での新たな技術として取り上げられたのが、大気中からCO2を直接回収する技術「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」だ。費用面での課題があるが、低コスト化に向け要素技術の開発が進められている。CO2が1トン当たりの回収コストを現在の3万―6万円から40年以降に2000円台に減らす目標を掲げる。政府の大型研究開発計画「ムーンショット型研究開発事業」ではDACの実用化に向けた研究開発が始まっている。
DACなどのCO2の分離・回収技術のほか、旭化成が世界に先駆けてCO2を原料に化学品であるポリカーボネートを作るなど、日本のカーボンリサイクル技術には一定の優位性がある。一方、米欧では大手が特定の技術を持つ多くのスタートアップに接触し、プロジェクトに参加させている。土屋室長は「カーボンリサイクル実現のための技術を1社で全て賄うことは難しい。日本でもスタートアップや中小企業が持つ技術を生かすことが重要ではないか」と強調する。
民間では、三菱ケミカルやJパワーなど80社以上が参画する「カーボンリサイクルファンド」が実用化に向けた研究への助成、政策提言などを実施し、カーボンリサイクルの取り組みを加速している。世界での激しい競争に打ち勝つため、産学官一体の取り組みが重要となるだろう。