経産省が産業再興へ支援。新潟「パワー半導体共同工場」の全貌
新潟県での電力制御用パワー半導体共同工場計画が明らかになった。国内メーカー中心に参加を募り、大量生産によるスケールメリットを追求する。世界のパワー半導体市場では欧米大手に比べて日本勢は大規模投資に及び腰で、今後の国際競争力低下が懸念される。ロジックを含めて何度も浮かんでは消えた共同ファブ構想が日本の半導体産業再興に一役買うか注目だ。
計画主体となる合同会社ジャパンスペシャリティファンダリ(東京都中央区)が4月に設立された。M&A(合併・買収)助言会社の産業創成アドバイザリー(同)が設立に関わる。パワー半導体を手がける三菱電機や東芝、富士電機など国内大手を主な候補に資金などを募り、半導体受託製造(ファウンドリー)向けの工場を立ち上げる算段とみられる。2023年度末までの事業開始を目指す。
新潟での新工場を想定し、米国半導体大手のオン・セミコンダクターが20年8月に売却検討を表明した新潟工場(新潟県小千谷市)を取得してパワー半導体生産に活用する可能性がある。新潟工場は8インチウエハー対応で、もともとは同社が11年に三洋電機(現パナソニック)から買収した拠点だ。
新工場では最終的に先端の12インチウエハーラインを導入し、大量生産でコスト競争力の高い製品供給を狙う模様だ。12インチウエハーでの量産は世界最大手の独インフィニオン・テクノロジーズが先行し、スイスのSTマイクロエレクトロニクスもイタリアに12インチウエハー対応工場を建設中だ。
一方、日本では東芝が既存工場内で12インチウエハー対応のパイロットライン導入を進めているが、欧米勢との差は大きい。
ジャパンスペシャリティファンダリは、半導体などの部品・素材の国内生産回帰を支援する経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の交付が決まった。
今後は計画への参加企業集めが焦点だが、00年ごろから経産省主導で何度も議論されてきた共同ファブの実現には難易度の高い利害調整が待ち受ける。
国内のパワー半導体メーカーはロジック半導体やメモリーに比べると世界市場で健闘している。ただ、半導体事業への巨額投資が経営を圧迫した苦い過去から各社設備投資に比較的慎重な姿勢を崩さず、将来的な地位低下を心配する声は少なくない。