仮想オフィスを自社開発、日立グループ企業が進める「人事創夢」改革とは?|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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仮想オフィスを自社開発、日立グループ企業が進める「人事創夢」改革とは?

仮想オフィスを自社開発、日立グループ企業が進める「人事創夢」改革とは?

オフィスを再現する仮想オフィスの「360度パノラマビュー」画面(日立ソリューションズ・クリエイト提供)

仮想オフィスで効率アップ

日立ソリューションズ・クリエイト(東京都品川区、竹田広光社長)は、人事総務ならぬ「人事創夢本部」を中心に働き方改革を進める。従業員が夢を持ち、その夢を実現できる夢のある会社でありたいという企業理念を込めた組織名だ。従業員とその家族の幸福と企業成長の両立を目指す。同時に新型コロナウイルス感染症拡大に対応する働き方実現も進めている。(横浜・市野創士)

日立ソリューションズ・クリエイトは2016年に働き方改革を推進するため、システムと制度を整理。グループの日立ソリューションズ(東京都品川区)が開発した人事総合ソリューション「リシテア」を活用し、全社の労働・残業時間の“見える化”を実現した。

社内での各種方針の共有はもちろん、働き方改革の取り組みを説明する手紙を従業員の家族に郵送して周知した。人事創夢本部の中村勝彦副本部長は「取り組みと矛盾する実態の指摘のほか、家族からの貴重な意見が得られた」という。

一連の取り組みにより19年度は平均残業時間が15年度比34%減、1200人近くいた月80時間以上の残業者数が1人となった。一方で、営業利益は60%増と収益性の向上と働き方改革を両立する結果を得ることができた。

在宅・サテライトオフィス勤務も進む。19年時点では約15%の普及率だったが、端末を整備して全社的に実施する期間を設けるなど、コロナ禍の影響もあって21年5月時点で約70%まで普及率が上昇した。4月には「従業員の居住地が多いエリアを選んだ」(中村副本部長)という200席のサテライトオフィスを設置し、さらに環境整備を充実した。

しかしデメリットもある。社内調査の結果では「在宅勤務は業務効率が低下する」との意見が在宅・オフィス勤務双方で全体の30%以上に上った。この課題を解決しようと、業務効率を低下させる要因となるコミュニケーション頻度の低下と公私の切り替えの難しさを軽減するため、オンラインの仮想オフィスを自社開発した。5月から従業員約400人が仮想オフィスを利用する実証実験に参加している。

仮想オフィスでデスク機能を再現する「ワークボード」画面(日立ソリューションズ・クリエイト提供)

仮想オフィスはオフィスフロアを再現する「360度パノラマビュー」と自分のデスク機能を再現する「ワークボード」の2画面で構成。利用中のメンバー写真の表示で空間を共有する認識が生み出され、他のオンラインツールとの連動でメンバーの状況を見える化し、手軽にチャット・通話ができる。利用頻度の高い社内システムもすぐ起動でき、利便性が高い。実証実験の結果を踏まえ全社導入を検討している。

20年には「ニューノーマル推進グループ」も発足した。同グループにも所属する中村副本部長は「部署横断の組織でアイデア実現に向け各部署から加入を募り拡大している」と、全社的な働き方改革を加速する。企業・従業員双方の幸福度を向上する取り組みを推進していく。

日刊工業新聞2021年7月14日

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