タワークレーンメーカーの風車建設用参入相次ぐ。新たな柱になるか|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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タワークレーンメーカーの風車建設用参入相次ぐ。新たな柱になるか

タワークレーンメーカーの風車建設用参入相次ぐ。新たな柱になるか

北川鉄工所の風車用大型クレーン。風車に近づいての施工が可能になる

タワークレーンメーカーの間で、風力発電に使う大型風車の建設に用いるクレーンへの参入が相次いでいる。主力のビル向けクレーンの足元の生産は高水準だが、受注の先行きには不透明感も漂う。風力発電などエネルギー分野では今後も一定の需要が見込めることから、各社新たな柱に育てようとしている。(福山支局長・清水信彦)

タワークレーンの台数シェアで首位を占める北川鉄工所。初めて開発した風車建設用クレーン「JCW1800K」が、鹿島が施工したいちご米沢板谷ECO発電所(山形県米沢市)の建設工事で採用された。クレーンはTAリフト(東京都千代田区)が所有し、出力2メガワットの風車4基を建設した。今はさらに熊本県で2例目の工事に入っている。

特徴は十字型の脚部で地面に置かれ、風車との間の支えなしで安定を保つこと。地面の基礎との締結やビルとの間の支えが不要。これにより、クレーンを解体・組み立てして次の現場で作業を始めるまでの期間を5日間に短縮できる。

また十字型の脚部により、風車から最短で12・5メートルの近さまで接近してクレーンを立てられる。従来は大型の移動式クレーンを使うことが多かったが、クローラーなどの台車を持つため風車本体に接近するのが難しく28メートルまでしか近づけなかった。作業スペースを小さくすれば建設時の森林伐採を抑えられる。

最大定格荷重は140トン、最大作業高さは150メートル。風車の大出力化に伴って羽根が大きく、背が高くなり、機器類が重くなるのに対応した。クレーンの能力は定格荷重と作業半径を掛け合わせた揚重能力で示すが、このクレーンの揚重能力は1800トンメートル。北川鉄工所がこれまで製作したタワークレーンでは最大で、1基の価格も過去最高額とみられる。

北川鉄工所の競合となるIHI運搬機械(東京都中央区)も、清水建設などと共同で風力発電向け風車の建設用クレーンに参入する。最大作業高さ152メートル、最大定格荷重は145トンと北川鉄工所の性能を若干上回るが、揚重能力では1800トンメートルとほぼ同クラス。2023年6月の完成に向けて、安浦工場(広島県呉市)で製作に入る。

最大の違いは、クレーンの移動に「ドーリー」と呼ぶ特殊な自走式車両を使うことだ。支柱や基礎部分などクレーンの一部だけを解体すれば運搬でき、やはり工期短縮につながる。

北川鉄工所の下江忠明EG統括部長は「建築用クレーンの市場は飽和が近づいており、風力などエネルギー分野に注力していく」と話している。

日刊工業新聞2021年6月30日

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