独立系の製紙メーカーの倒産劇、私的整理を阻んだ金融機関の乱れ
独立系の製紙会社としては唯一のクラフト紙製造を手がけていた大興製紙が、1月15日に東京地裁へ会社更生法の適用を申請した。同社は1950年6月設立。63年と72年に米国企業と紙の製造技術で提携を結び、技術力向上に努め、その地位を確立していった。
しかし2018年夏ごろからの米中貿易摩擦によって中国の取引先が生産調整に入ったことに加え、国内取引先も中国向けの取引が減少。業績悪化に加え、金融機関の抜本的な支援を受けられなかったことで資金繰りは逼迫(ひっぱく)。ついに19年10月末に期限を迎えるシンジケートローンの返済資金が確保できない状況に陥った。
そこで私的整理手続きによる再建を企図して同年11月に金融機関説明会を開催し、リスケジュール計画を策定することを確認した。その後、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による急激な需要の落ち込みからリスケ計画は先送りせざるを得なかった。
20年4月に開催したバンクミーティングで新計画案の全行同意を目指したが、一部下位行の同意が得られず、同年6月に全行同意を得て、ようやく暫定リスケ計画が成立した。だが、新計画は同年夏ごろまでに新型コロナが収束することを前提していたため、暫定リスケ計画は未達が続いた。
スポンサー支援を前提に借入金カットを伴う事業再建を模索したが、メーンバンクの追加支援は厳しく、下位行からもシビアな対応が予想され、会社更生法の適用の申請に踏み切った。
同社の会社更生法適用の背景には、長期にわたる製紙業界の低迷や改善されない低収益、設備過多など、さまざまな構造的な要因があった。さらに金融機関のスタンスの違いや多行取引の中でメーンバンクと下位行の足並みの乱れも見逃せない。今回の倒産劇は新型コロナ前からの業績悪化に加え、新型コロナが最後のトリガーとなったという新型コロナ関連倒産の象徴的なケースでもあった。
(帝国データバンク情報部)