カニ殻から高品質キチンを溶出できる媒体を開発、抜糸不要の縫合糸や人工皮膚に応用|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

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カニ殻から高品質キチンを溶出できる媒体を開発、抜糸不要の縫合糸や人工皮膚に応用

大阪ガス子会社のKRIが開発
カニ殻から高品質キチンを溶出できる媒体を開発、抜糸不要の縫合糸や人工皮膚に応用

カニ殻からキチンを取り出し糸に成形

大阪ガス子会社のKRI(京都市下京区、川崎真一社長)は、カニ殻から医療用の機能性材料に使用可能な高品質のキチン(直鎖型含窒素多糖高分子)を溶出できる溶媒を開発した。薬剤の合成に使う汎用的な溶媒に、独自の添加剤を加えた。カニ殻を同溶媒に室温で3、4時間漬ければ、キチンが取り出せるという。今回の手法を用いれば、従来手法に比べ約3分の1のコストでキチンの製造が可能。

KRIは今回の簡易手法で得たキチン溶液から湿式成形を施し、シート膜やビーズ、糸をそれぞれ試作した。同材料は強度があり、紡糸性に優れ、生体にもなじむため、抜糸不要の手術縫合糸や創傷被覆材、衣料用繊維、人工皮膚などへ応用が想定される。

KRIではキチンの機能性材料としての実用化を提案し、今後は材料メーカーから年5件ほどの受託研究を行う予定だ。

カニなど甲殻類の殻はキチンが20―30%含まれるが、それ以外の炭酸カルシウムやたんぱく質など共存物が強く結合されている。これを取り除くのに多くの工程が必要で手間や時間がかかっていた。従来のように強酸や強アルカリを用いた前処理などが不要となるため、ダメージが少なく、高品質なキチンの獲得が期待できる。

KRIは長年にわたり多糖類の溶解技術を研究し、知見を蓄積する。キチンは甲殻類やキノコなど多くの生物に含まれ、地球上で合成されるキチンの量は1年で1000億トンと推計され、応用展開も増えている。

日刊工業新聞2021年3月4日

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