高出力な全固体電池の実用化へ!大阪技術研が厚さ10分の1の固体電解質シート
大阪産業技術研究所(ORIST)は、厚みが30マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下と薄膜ながら強度を備えた自立型のリチウムイオン電池用固体電解質シートを開発した。量産技術もめどをつけた。従来の固体電解質に比べ厚みが10分の1以下で、電気抵抗が小さいのが特徴。電極とともに積み重ねられ、大容量、高出力の全固体電池の実用化へ応用が期待される。
全固体電池は電気自動車(EV)やIoT(モノのインターネット)機器への搭載に向け電極の開発が進む一方、正・負極間の電解質の厚みが大容量化の課題となっている。同研究所は、微細な貫通孔を持つ樹脂フィルムに電解質粉末を充填することで、強度を保ちつつ電解質の薄膜化に成功。電気抵抗を抑えられるほか、高度な充放電特性を備えることも確認された。今後、リチウムイオン電池材料評価研究センター(リブテック、大阪府池田市)が開発を進める電極と共に性能検証を進める。
同シートはベースとなる樹脂フィルムに、感光材料を利用しパターンを生成するリソグラフィ技術で微細な孔を開け、硫化物系の固体電解質粉末を充填させ、加熱・加圧処理を施して作製する。同研究所は8センチメートル角のシート作製に成功したが、製造装置次第で大面積化できるという。
全固体電池は実用化へ向け開発が加速。国内では村田製作所が2020年度下期中に酸化物系全固体電池の量産を開始し、トヨタ自動車が京都大学とフッ化物イオン電池の開発に乗り出している。
大阪産業技術研究所は従来着目されてこなかった電解層の薄膜化により、全固体電池の大型化へ道を開いた。同シートは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が支援する「先進・革新蓄電池材料評価技術開発」第2期事業の一環で開発した。
日刊工業新聞2020年10月15日
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