「ダヴィンチ」の半額で導入しやすく、新しい手術支援ロボットが登場
国立がん研究センター発ベンチャーのA―Traction(エートラクション、千葉県柏市)は、2021年秋までに価格を抑えた手術支援ロボットを発売する。先行する他社の手術支援ロボの価格は数億円だが、同社では機能を絞り込むことで3000万―5000万円を想定。初年度数台の販売を見込む。大学病院などへ、今後10年以内に国内500施設で導入を目指す。
同社の手術支援ロボは医師を補助する役割に特化。機能を限定し価格を抑えた。米インテュイティブ・サージカルの「ダヴィンチ」とは設計思想が異なるため単純比較はできないが、半額以下で導入・運用できるという優位性を訴求する。今後、医療機器認証の取得に向け準備を進める。
エートラクションのロボは患者の腹部の穴から器具を挿入する腹腔(ふくくう)鏡手術で用いる。同手術では医師のほかに器具や内視鏡スコープを支える助手が数人必要だが、ロボは助手の役割を担う。臓器を掴みながら固定する鉗子(かんし)や内視鏡スコープをアームが保持し、医師の指示で動く。
助手の補助を受けず医師が1人で手術できるため、人件費を削減できる。助手が2人と仮定した場合、4―5年程度で導入費用を回収できると試算する。
手術支援ロボはダヴィンチが国内外で普及。国内メーカーでは川崎重工業とシスメックスの共同出資会社メディカロイド(神戸市中央区)が「ヒノトリ」の製造販売承認を8月に取得している。
ダヴィンチやヒノトリは医師が操作するコンソールを備える「マスター」と、アームを備える「スレイブ」で構成。医師はマスターから指示を出し、患者近くに設置したスレイブで手術器具を扱う。
エートラクションのロボは、手元のセンサーやフットペダルでアームを動かしつつ医師自身が患者の側で手術する違いがある。
エートラクションの安藤社長は「当社の製品は手術支援ロボの王道ではないが、確実に医療現場で求められる」と説明する。将来は欧州や中国、東南アジアでの展開も目指す。