備蓄米放出後の課題:輸入米には依存できないこと、そして語られないコメ不足の理由、行政改革の影響 #エキスパートトピ

備蓄米入札結果が3月14日午後に発表され、3月下旬には出回るとされる。その中でメディアでは備蓄米放出後もコメ供給が不足するという見通しとともに、安易に輸入米への依存を主張する傾向が出てきた。また輸入米が安いという誤った内容も見られる。さらにコメ不足の背景にあるコメ政策や行政改革について語られないまま農水省批判を展開する論調をよく見かける。本トピックスではそうした論調の問題点を紹介する。
ココがポイント
コメの価格高止まりが続く中、国産米より割安な輸入米の需要が拡大している。
出典:毎日新聞 2025/3/14(金)
撤廃されればアメリカ産米が安くなるが、消費者の選択変更や業務用での使用拡大など予測され、日本の農家への影響が懸念される。
出典:FNNプライムオンライン 2025/3/13(木)
麻生内閣時代、農林水産大臣に任命された石破茂氏は「農家を守る方針を謳っていた」
出典:現代ビジネス 2025/3/14(金)
エキスパートの補足・見解
世界の三大穀物の中でコメは貿易率が低く輸入に依存できない。なぜなら人口が集中するアジアの主食であるからだ。そうした背景を知らずに輸入米の安さを語ることは、食の不安定化をもたらしかねない。記事で紹介されるカリフォルニアでは恒常的に水不足が続いており、大量に水が必要なコメの安定した生産は難しい。アジアでもまず自国の供給を優先するため日本は輸入に依存すべきではない。輸入米は安いという論調も問題だ。日本はコメに関税をかける代替措置として関税なしで約77万トン輸入しているが、国際穀物価格が高騰する中で輸入(米国産)米価格が国産米価格より高くなり国会で問題になった。全ての輸入米が安い訳ではないのだ。
もう一点、最近のメディアでコメ不足の原因として統計の不確かさを指摘し農水省批判につなげることをよく目にするが、その構造的原因となったのは安倍政権時の行政改革で農林統計職員を大幅に削減したことにもある。これは農水省の責任ではなく小さな政府を目指す新自由主義的な改革がもたらした帰結と言える。今必要なのは、コメ価格高騰の背景となっている供給不足を解消するための2025年産米の増産と農家への対策と言える。