ダート1083キロのワーバートン・ロード
シンプソン砂漠を横断してアリススプリングスに戻ると、キングスキャニオン周遊ルートの677キロを走ったが、その約半分の330キロがダートだった。再度、アリススプリングスを出発し、スチュワートハイウエー(国道87号)を南へ。
アリススプリングスから205キロ南のエルダンダから、エアーズロックへの道に入っていく。前回につづいて2度目のエアーズロックだ。エアーズロックに到着するとキャンプ場に泊まり、翌日、エアーズロックを一周したあと登頂。登り50分、下り25分のエアーズロック登山だ。
エアーズロックからマウント・オルガへ。
そこからオーストラリア最長ダートのひとつ、ダート1000キロ超の「ワーバートンロード」に入っていく。気温40度を超える猛烈な暑さの中、エンジン全開で突っ走る。DJEBEL250XCのオイルクーラーの効果は抜群で、この暑さをものともしない。
ワーバートンロードのノーザンテリトリー側は平坦な一直線に延びる道。道幅は広いが、交通量はほとんどない。赤土の道を疾走する。ところどころにブルダストの砂溜まり。コルゲーションはそれほどきつくない。マウント・オルガから182キロで、アボリジニのコミュニティーのあるドッカーリバーに着く。ここで給油。そのあと倉庫風建物のスーパーマーケットでポテトチップスを買い、コカコーラを飲んだ。
そしてウエスタン・オーストラリア州に入っていく。90キロ前後の速度で走っているときのことだった。路面にころがっている大きめな石を避けきれずに、フロントでヒットした。その瞬間、バーンという破裂音とともにふっ飛ばされた。ハンドルはまったくきかない。ラッキーだったのは、路肩を突き破ったが転倒もしないでブッシュの中で止まれたことだ。もうひとつラッキーだったのは、タイヤのバーストではなく、チューブがやられただけだった。
炎天下のパンク修理。石にヒットしたときの衝動の大きさを示すかのように、引っ張り出したチューブはザックリと裂けていた。新しいチューブに交換して走り出す。パンク修理に手間どったこともあって、ダート・ナイトランになった。おまけに天気が崩れ、強風、黒雲、稲妻と最悪だ。
アボリジニのコミュニティーのあるワーバントンに到着したときは心底ホッとした。ワーバートンではロードハウスに泊まり、翌日はさらにダートを走りつづけ、マウント・オルガから1083キロのダートを走りきってラバートの町の手前で舗装路に入った。
ロングダートのあとの舗装路ほどありがたいものはない。
熱風吹き荒れるナラボー平原
ラバートンから舗装路を400キロほど走り、カルグーリーの町に到着。ここは昔も今も、世界でも最大級の金鉱山。
そんなカルグーリーでは、気分はけっこう緊張状態。というのは、ここからナラボー平原横断の通称「レイルウエー」に入っていくからだ。「レイルウエー」は大陸横断鉄道に沿ったロングダート。以前はカルグーリーから400キロのローリナがちょっとした町になっていて、そこで給油できた。しかし今はゴーストタウン。そのためカルグーリーから900キロ先のクックまで給油できないのだ。
BPのガソリンスタンドでDJEBELの17リッタータンクを満タンにし、10リッター、3リッター、2リッターのポリタンクにガソリンを入れ、さらに5リッターの容器を買ってガソリンを入れる。合計37リッターのガソリンを用意しての出発だ。カルグーリーから20キロ地点でダートに入り、88キロ地点で左手に大陸横断鉄道の線路が見えてくる。そのあとはただひたすらにこの線路を目印にして走る。
275キロ地点を過ぎたあたりで急速に樹木が消え、草原の風景に変わる。一望千里のナラボー平原に入った。路面にころがる石が多くなったところでフロントがパンク。北からの熱風が吹きまくる中でのパンク修理はきつい。夕暮れが迫るころ、2度目のパンク。空気をパンパンに入れ、耳もとで穴を確認し、パンク修理用のパッチを貼る。
ダート・ナイトランでローリナに着いたのは22時過ぎで、誰もいないゴーストタウンの旧駅舎前でゴロ寝した。ローリナを過ぎると、一気に道が悪くなる。際限なく石原がつづく。ここの尖った石にやられ、またしてもパンク。熱風が吹きすさぶ猛烈な暑さの中でのパンク修理が終わると、暑さで湯に変わった水をガブ飲みした。
つづいて2度目のパンク。パンク恐怖症にかかり、それからというものは速度を落とし、2速か3速のスタンディング。石をひとつひとつ避け、フロントを浮かせるようにして走る。その日は1日、目いっぱい走って277キロ。フォレスト駅で泊まった。
カルグーリーを出てから3日目、ついにサウスオーストラリア州に入った。クックまであと、もうひと息と喜んだのもつかの間、またしてもフロントのパンク。なんと5度目のパンクだ。もうヒーヒー状態でパンク修理を終え、フォレストから232キロのクックに夕暮れ時に着いた。まずは「ナラボー平原横断」の前半戦終了。
クックからのナラボー平原横断の後半戦はパンクゼロで走りきり、スチュワートハイウエーのグレンダンボに出た。ダート1499キロのナラボー平原横断だ。グレンダンボのロードハウスでは、前回のロード編「オーストラリア一周」で出会ったCT110の「王様」こと植松幸史さんと、カブの「ベンジー」こと古川源三さんとの劇的な再会。
2人はなんとCT110とカブに荷物を満載にし、ナラボー平原を横断した。そんな2人とポートオーガスタまで一緒に走り、「ポインセティア」というモーテルに泊まった。その夜はお互いのナラボー平原横断の成功を祝ってビール&ワインで乾杯。夜中まで飲み会はつづいた。翌日、2人は東のアデレードヘ、カソリは西のパースへと向かった。
再びアリススプリングスへ!
国道1号で再度、ナラボー平原を横断し、パースから国道95号でポートヘッドランドへ。ポートヘッドランドからは国道1号でダービーまで行く。ダービーからはダート592キロの「ギブリバーロード」を走る。最初のうちこそ走りやすいダートだったが、キングレオポルド山脈の峠を越え、中間点のマウントバーネットを過ぎると、ガクッと悪路に変身。交通量のほとんどない赤土の道をただひたすらに走る。ところどころ、砂が深い。
このギブリバーロードでは、何人もの日本人ライダーが転倒し骨折している。ブルダストにハンドルをとられての転倒だ。荷物を満載にしているので、気をつけていても転倒してしまうようなダートなのだ。それときついのは、腹わたがよじれるくらいのコルゲージョン。ダダダダッと、まるで機関銃で連射されているかのような猛烈な振動。
DJEBEL250XCがバラバラになってしまうのではないかと、本気で心配してしまう。
ギブリバーロードの後半戦では、何本もの川渡りをしなくてはならない。この地方ではすでに雨期に入り、川には水が流れていた。深いところでは膝ぐらいまであった。川に橋はかかっていないのだ。夕暮れ時の雷雨はすさまじかった。稲妻が大空を駆けめぐる。ゴロゴロドカーンとすぐ近くに雷が落ちたときは「ヤラレタ!」と、肝を冷やした。そのあとは、たたきつけるような雨が降り出す。川の水量はあっというまに増え、渡るのが怖いくらいの激流。無事に激流を渡り切り、ナイトランでカナナラの町に着いた時は心底、ホッとした。
カナナラからは、ダート440キロの「ダンカンハイウェー」を走り、ホールスクリークへ。路面は大雨にやられ、トラックの通った跡は深くえぐれている。路面のあちこちに大きな水溜まりができている。それをひとつづつ避けながら走る。下手してその中に突っ込むと、グチャグチャの泥沼地獄にはまり込み、抜け出せなくなってしまうのだ。
北風が強くなる。ものすごい熱風。あまりの暑さに水を飲みつくす。「水、水、水!」と、「水」を連発する。
熱帯圏のオーストラリア北部地方の自然は厳しい。あまりの暑さに頭がクラクラしてくる。ホールスクリークの町に着くと、腹がダッボンダッボンになるくらいに水を飲み、ひと息ついたところで、ロードハウスでTボーンステーキを食べた。
ホールスクリークからは第17本目のダートの「タナミロード」に入る。アリススプリングスまでは1040キロ。幅広のダート。途中の牧場ではラクダを見た。このあたりでは野生化したラクダもよく見かける。
ウエスタンオーストラリア州とノーザンテリトリーのボーダー(州境)を越え、ラビットフラットのロードハウスで給油。タナミロードのダート897キロを走り切り、舗装路に変わる地点でDJEBEL250XC止め、思いっきり「万歳!」を叫んでやった。そして舗装路でアリススプリングスに向かっていく。舗装路がありがたい!
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