どこまでも青い空!


オーストラリアの首都キャンベラ



1996年5月25日、成田発12時00分のSQ(シンガポ-ル航空)997便で日本を出発。オーストラリアを2周するのだ。シンガポールでSQ221便に乗り換え、スタート地点シドニーには翌5月26日の5時30分に到着した。


シドニー中央駅から電車で30分のパラマタの町へ。パラマタにスズキ・オーストラリアがある。日本から送り出した2台のDJEBEL250XCとのうれしい再会。2台には「DJEBEL1号」、「DJEBEL2号」と名づけた。「DJEBEL1号」では舗装路をメインにした「ロード編オーストラリア一周」を、「DJEBEL2号」ではダートをメインにした「オフロード編オーストラリア一周」を走るのだ。


5月28日午前9時、スズキ・オーストラリアの藤照博さんや工藤隆夫さんらに見送られてシドニーを出発。抜けるような青空。まずは肩ならしで、シドニーの周辺をまわる。 国道31号のヒューハイムハイウエイを南下。片側2車線の道。オーストラリアの2大都市、シドニーとメルボルンを結ぶ幹線なので、交通量は多い。


制限速度は110キロ。ゆるやかな丘陵地帯に入ると「カンガルーに注意」の標識を見るようになるが、それがいかにもオーストラリアらしい。


「カンガルーに注意!」の標識



オーストラリアの首都キャンベラからは国道23号を南下し、クーマの町から大分水嶺山脈のスノーウィーマウンテンの山中に入っていく。気温がガクッと下がる。


オーストラリアの牧場訪問



牧場内にあるモーテルに泊まった。1泊40ドル。日本円で約3400円。モーテル内のレストランで夕食。スープ、メインディッシュのチキン、デザートのアップルパイというフルコースで14ドル。日本円で約1190円。
ここでは、オーストラリアの最高峰クシオスコ山を登りにきたシドニーのハイスクールの生徒たちと一緒になった。ワイワイガヤガヤとなんともにぎやかだ。日本もオーストライアも変わりがない。夕食のあとは暖炉の火を囲んで、ハイスクールの先生たちとビールを飲みながら話した。


恐怖のアイスバーン

翌朝は7時30分に出発。早朝の寒さは強烈。気温は氷点下5度。夜明け前には氷点下8度まで下がった。オーストラリアの冬を甘くみていたので、ジャケットもグローブも薄手のもの。DJEBELにこびりついた霜を払い落として走りだしたが、あまりの寒さにガタガタ震えてしまう。


スノーウィー山脈の中心地ジンダバインの町を過ぎ、オーストラリアの最高峰、クシオスコ山(2230m)の南側のアルパイン・ウェイを走る。
デッドホース峠へ。緑の濃い森林地帯。常緑樹が多いので、日本の冬枯れの風景とは違って冬でも青々としている。


昼食はブ厚いオージービーフ。とにかく安い!



標高1582メートルのデッドホース峠に到達。風が冷たい。峠を越え、オーストラリア最大の川、マレー川の源流地帯に下っていくとツルンツルンのアイスバーンだ。あわやマレー川源流の谷底に転落かという危機一髪のきわどさだったが、かろうじてバランスを保ち、転倒しないで走り抜けることができた。よかった!
マレー川河畔の町、オルベリーでふたたび国道31号に出ると、その夜はガニングという小さな町で泊まった。


翌朝の気温も、やはり氷点下。国道31号を走りだしたとたんにハンドルを握る指先がジンジン痛んでくる。DJEBEL250XCのフルカバーの大型ナックルカバーがなかったら、とてもではないが、走れなかっただろう。


第1弾目の「シドニー周遊」は1323キロ。つづいて第2弾目の「シドニー周遊」では、大分水嶺山脈のブルーマウンテン周辺をまわった。第2弾目は663キロ。徹底的に寒さにやられた2度の「シドニー周遊」だった。

カンガルーにあわや激突

「オーストラリア一周」の国道1号を行く



2度の「シドニー周遊」を終え、シドニーからメルボルンへ。時計回りでの「オーストラリア一周」の開始。海沿いの国道1号を行く。大分水嶺山脈を越える国道31号に比べると、気温が高くなったぶんだけ楽に走れる。オーストラリアを一周する国道1号は全長約2万キロ。世界最長のハイウェイだ。


滑走路に変身した国道1号



太平洋岸の町で昼食。歩道にイスとテーブルを並べたレストランでビッグハンバーガーの「ハンバーガー・ウイズ・ア・ロット」を食べる。文字通り、いろいろなものが入ったハンバーガーで、ベーコンやチーズ、エッグ(目玉焼き)、パイナップル、トマト、レタス、オニオン、ビートなどがはさまっている。値段は5ドル。日本円で約425円。これひとつで十分に満腹になる。

シドニーから430キロ、太平洋岸のベガの町を過ぎたところで日が暮れた。ナイトラン。DJEBEL250XCの明るいヘッドライトのおかげでナイトランは楽だ。対向車がいないときはハイビームを使ったが、はるか遠くの反射板まで光りが届いて輝いた。
国道1号は太平洋岸を離れ、森林地帯に入っていく。ゆるい左カーブを曲がると、なんと走行車線上に大きなカンガルーがチョコンと座っているではないか。

「ウワー、ヤッター!」と、カソリ、思わず絶叫。
急ブレーキ、急ハンドルでからくもカンガルーをかわすことができたが、しばらくは体の震えが止まらなかった。100キロ以上の速度で走っているので、激突していたら命取りになるところだった。


日本人ライダーの溜まり場

メルボルンに到着。ここはメルボルン港



ニューサウスウエルス州からビクトリア州に入り、メルボルンからは大陸最南端のウィルソン・プロモントリーに行く。プロモントリーというのは岬とか小半島といった意味。
そのあとタスマニア島に渡った。タスマニア島では最南の地まで行ったが、雪との格闘の連続。強烈な寒さだった。


フェリーでタスマニア島に渡る



ハンターカブで「オーストラリア一周」中の植松幸史さん



タスマニア島の道は羊優先!?



メルボルンに戻ると、サウスオーストラリア州のアデレードへ。

アデレードに到着



ここではバックパッカーズの「ラックサッカーズ」に泊まった。1泊9ドル(約800円)。日本人ライダーの溜まり場的な存在で、ぼくが泊ったときも、数人の日本人ライダーが宿泊していた。
半年あまりの長旅をまもなく終えようとしている人、バイクのエンジントラブルで旅を中断した人。小柄な女性ライダーもいた。


「ラックサッカーズ」のマーガレットおばさんは面倒みのいい人で、「クイーン・オブ・ジャパニーズ・ライダーズ(日本人ライダーの女王)」といわれていたが、クイーンというよりもマザー的な存在だ。


パースに到着

カルグーリの金鉱山の巨大ダンプ



アデレードを過ぎると、ナラボー平原に突入。360度の地平線に囲まれた大平原。州境を越えてウエスタンオーストラリア州に入った。


ナラボー平原に入っていく。空がデカい!



ナラボー平原を貫く国道1号には、「90マイルストレイト」と呼ばれる直線区間がある。90マイル(146・6キロ)の直線路。その間、1カ所もカーブはない。行けども行けども直線路。一直線の道を地平線を目指して突っ走る。


「ラクダ、カンガルー、ウーンバットに注意!」の標識



大平原でのしばしの眠り



「90マイル・ストレイト」が終わり、カーブにさしかかると、「おー、道が曲がっている!」と、ホッとした気分になるのだった。

オーストラリア最南西端リーウィン岬の灯台



ナラボー平原を越え、オーストラリア最南西端のリーウィン岬へ。
3ドル払って、岬突端の白亜の灯台に登る。ハーハー、息を切らして登った上からの眺めは絶景だ。


パースに到着。インド洋を見る!



右手の海はインド洋、左手の海はサザンオーシャンの南氷洋になる。リーウィン岬はインド洋と南氷洋という、2つの大洋を分ける岬なのだ。


太平洋からインド洋へ。大陸横断の中間地点に到達



パース到着は6月16日。シドニーを出発してから20日目のことで、10173キロを走っての到着だ。



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