2023年シーズンからFIM世界耐久選手権(EWC)に参戦するTeam Kawasaki Webike Trickstar。2024年シーズンはシリーズランキング10位(39ポイント獲得)で幕を閉じた。ライダーラインナップを大きく変更し、今年こそ勝利を勝ち取るべくして臨んだ今シーズンを振り返る。

レース振り返り

第1戦 ルマン24時間耐久ロードレース:現体制では最高順位となる4位に

ライダーラインナップを大きく変更し挑んだ2シーズン目。事前テストからチームの雰囲気も良く、すぐにマシンに順応するクリスチャン選手とロマン選手に対し大きな期待を胸に抱き初戦へと挑んだ。予選順位は6位と、表彰台をしっかり狙えるグリッドからのスタートに。

スターティングライダーは継続2年目となるチームのエースライダー、グレゴリー・ルブラン選手。順調なスタートを決め、3位でホームストレートに戻ってくる。その後クリスチャン選手、ロマン選手と順調にバトンを繋いでいき、各ライダー安定した走りで約18時間単独3位を確立し、走行を重ねていく。しかしここでトラブルが発生。マシンに違和感を感じたロマン選手が緊急ピットインし、メカニックが全力で修復にあたる。幸い大きなトラブルではなかったため、メカニックの迅速なピット作業により9分のロスタイムでレースに復帰する。このトラブルにより順位を3位から6位に落としてしまうも、グレゴリー選手はこのタイミングでレース中のベストラップを更新するというタフな走りをみせ、6位から5位に順位を引き上げる。それに続くようにクリスチャン選手も4位と45秒差まで詰める力強い走りをみせる。そして740周目、グレゴリー選手が圧巻の走りで4位を取り戻し、チェッカーフラッグを受ける。

初戦はレースを通して1度もミスすることなく走り続けてくれたライダーと素晴らしい仕事をしたクルーにより、4位というリザルトを獲得するポテンシャルの高さを発揮。表彰台まであと1歩及ばなかったものの、現体制となり最高順位で開幕戦ルマン24時間耐久の幕が閉じた。

2024 FIM EWC Kawasaki Webike Trickstar 2024 FIM ENDURANCE WORLD CAHMPIONSHIP

第2戦 スパ24時間耐久ロードレース:表彰台争いから一転、マシントラブルによりリタイヤ

第2戦のスパ戦は、走行時間が昨年から1/3となる8時間耐久へと変更になり、1回のマシントラブルが大きく順位に影響をもたらす重要なレースとなった。前戦で表彰台獲得目前の順位を獲得したTeam KWTは、予選前のフリー走行でグレゴリー選手が自己ベストタイムを記録するという良い流れをつかんだ。続く予選ではグレゴリー選手とクリスチャン選手の平均タイムにより、決勝グリッドはルマン戦に引き続き6番グリッドを獲得する。昨年のタイムと比較すると2秒近くベストラップを更新しており、チームとしての成長が確認できた予選となった。

スタートライダーを務めるのは予選でチーム最速ラップを刻んだ、グレゴリー・ルブラン選手。6番グリッドから好スタートを決めて1周目を4位で戻ってくる。Team KWTは燃費に優れているため上位陣では一番多い21Lap目でのピットインとなった。そしてクリスチャン選手、ロマン選手ともに順調なペースで追い上げていき、グレゴリー選手の第2スティントで3位まで浮上することに成功し、遂に表彰台圏内まで追い上げることに成功した。

しかしレースはそう簡単に展開しない。上位2台とのギャップは大きく、2台での3位争いへと展開していく流れとなる。レース開始から5時間15分が経過した頃、グレゴリー選手が走行中のマシンに問題を抱えてスローダウン。129Lap目にそのまま緊急ピットインとなる。すぐにチームクルー達がマシンの修復に取り掛かるが、原因を調べていくとレースを継続するには致命的なトラブルであることが判明。監督の判断によりここでレースリタイヤとなった。

表彰台争いをしていただけに、とても悔しい結果に終わってしまったものの、ライダー/クルーの素晴らしい仕事により、また1歩前進した2戦目となった。しっかりとトラブルの対策を施し次戦、鈴鹿8時間耐久へ臨むことに。

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第3戦 鈴鹿8時間耐久ロードレース:厳しい戦いになるも事前への準備が整う

チームはスパ24時間耐久でのトラブルを抜本的に解決すべく、事前走行テストを行い鈴鹿8時間耐久ロードレースに挑んだ。初めて鈴鹿8時間耐久を経験するクリスチャン選手、ロマン選手を携え挑んだ第3戦目。グレゴリー選手とロマン選手の合算タイムにより、18番グリッドより決勝を戦うこととなったこととなった。予選順位は高くないものの、決勝を見据えたセッティングを進めていたため、表彰台を目指して戦い抜こうとモチベーション高く始まった決勝前のウォームアップ走行で、グレゴリー選手が転倒を喫してしまう。転倒による負傷でドクターストップを余儀なくされ、急遽スターティングライダーをクリスチャン選手に変更し、2名のライダーで挑む過酷なレースに。

18番グリッドから飛び出したクリスチャン選手は14位につけ、燃費が強みのKWTは他チームがピットインをする中粘り強く走り続け、5位でピットインする。続くロマン選手、良いペースで周回を重ねていくも46ラップ目に急激にタイムを落としてしまい、53ラップ目に転倒を喫し、緊急ピットインするもピット内で意識を失い倒れこんでしまう。すぐにメディカルセンターに運び込み処置をしてもらうも、慣れない鈴鹿サーキットの暑さで熱中症を起こしていた。既に2名体制でレースを行っていたため、事実上走行不可能となってしまったものの、ドクターの判断とライダーの気持ちを鑑みて、チームはリタイアするのではなく今後の経験の為諦めずにゴールを目指す方向へ切り替えることに。クリスチャン選手には自身のスティント数を全うしてもらい、良いアベレージで周回を重ね来年への可能性を魅せてくれた。

レース終盤になると、幸いにも体調を崩していたロマン選手が回復し、走行したい意欲を見せてくれたためラストスティントを走り、ゴールを切ってもらうことに。体調を崩していたとは思えないほど素晴らしい走りをみせてくれた。そして周回数123回、未完走扱いで真夏の祭典鈴鹿8時間耐久ロードレースの幕を閉じた。チームにとって非常に厳しい戦いとなったが収穫も大きく、次戦のボルドール24時間耐久にむけての準備が整うレースとなった。

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第4戦ボルドール24時間耐久ロードレース:惜しくもマシントラブルによりリタイヤ

前戦、鈴鹿8時間耐久ロードレースでグレゴリー選手が転倒による負傷を負った影響により、チームはボルドールに向けてダビド・チェカ選手を起用する。事前のプレテストからマシンセッティング、フィーリング共に良い感触を得ており、今回急遽参戦となったダビド選手もすぐにチームに馴染み、良い雰囲気でレースウィークが進んでいく。予選はクリスチャン選手とロマン選手の合算タイムにより、8番グリッドからのスタートとなったものの、上位陣とのタイムは拮抗しており充分に優勝も狙える、そしてライダーとマシンの調子も良く、大きな期待を胸に決勝レースへ臨んだ。

スターティングライダーを担ったクリスチャン選手は8番グリッドからスタート、順調に周回を重ね、燃費が優れているKWTは上位陣では一番多い27Lap目に1位でピットイン。続くロマン選手、ダビド選手も順調に走行を重ね5位をキープしながらレースを繰り広げていく。レース開始から3時間が経過し、3位争いに加わろうとしていたタイミングでクリスチャン選手がマシンに違和感を感じ緊急ピットイン。メカニックが懸命に修復を試みるも、マシンに致命的なトラブルが発生していることが発覚する。チームはこのまま走行を続けることが不可能だと判断し現地時間18時25分にリタイヤすることを決断する。

Team Kawaki Webike Trickstarが結成され、2年目を迎えてチームの真価が問われる今シーズン、布陣を入れ替え何としてでも結果を残すべく挑んできた。4戦すべて表彰台圏内で戦い、あと1歩というところまで来ていただけに、とても悔やまれる結果で2024 FIM 世界耐久選手権シリーズの幕を閉じることとなった。二度と同じトラブルが起こらないよう、チームでは原因究明と抜本的な対策を施し戻ってくることを約束。#11 Kawasaki Webike Trickstarに希望を持つ沢山の人の想いを胸に、さらに強くなり来シーズンへ挑んでいく。

2024 FIM EWC Kawasaki Webike Trickstar 2024 FIM ENDURANCE WORLD CAHMPIONSHIP

Team Kawaki Webike Trickstarコメント

2シーズン目の挑戦となる2024 FIM世界耐久選手権(EWC)シリーズは10位で幕を閉じました。
多大なるご支援をいただきまして本当にありがとうございました。ライダーラインナップを大きく変更し、今年こそ勝利を勝ち取るべくして臨んだ2年目のシーズンは全戦を通して常に表彰台圏内で争うことができ、マシンの状態が万全であれば結果を残せるということが明確に見えた1年となりました。
たくさんのトライ&エラーを繰り返し、来シーズンに向けて改善できると確信しております。
2025年シーズンは必ず結果を残せるよう尽力いたしますので、変わらぬご支援をどうぞ宜しくお願い致します。

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選手・マネージャーコメント

グレゴリー・ルブラン選手

チームを立ち上げたばかりの昨年と比較するとチームワークもかなり纏まってきたし、マシンのパフォーマンスも向上して、多くのレースを表彰台圏内で戦えたことはチームが一丸となって全力を尽くし、成長したという価値ある結果だと思う。耐久レースというのは最後まで何があるか分からないので、悔しいけど割り切るしかない。来シーズンはこの悔しさを晴らすためにも転倒もトラブルもなく完璧なレースで必ず表彰台を獲得したいね。

クリスチャン・ガマリノ選手

マシントラブルによりとても早いうちにレースから離脱してしまうことが多く、本当に残念でなりません。耐久レースはこういうものだと分かってはいるのですが、自分たちのチームは絶対に完走できると信じてスタートするので、問題に直面するとやりきれない思いです。完走できていれば表彰台獲得も可能だったと思うので、早期戦線離脱は悔しさしかないです。シーズン開幕からマシンもライダーもパフォーマンスは確実に上がっていましたしチームワークも良かったのですが、残念ながら今年は運を味方につけることができなかったようです。開幕戦ルマン24時間レースの4位がベストリザルトとなりましたが、チームもライダーもまだまだ強くなれると信じています。来年はさらに強くなって戻ってきたいと思います。

ロマン・ラモス選手

今年世界耐久選手権にフル参戦したことで耐久レースのことを深く知ることができ、そして素晴らしいチームメイトやKWTのスタッフと一緒に仕事できたことは自分にとっての宝だと思っています。KWTチームとの仕事は本当に楽しかったですし、皆に心からお礼を言いたいです。この素晴らしいチームやカワサキ、ウェビック、トリックスター、そして関わっていただいた全ての皆さんのサポートに感謝しています。本当にありがとうございました。

鶴田竜二チームマネージャー

チームを結成し真価が問われる2シーズン目、ライダーは昨年のグレゴリー・ルブランに加え、新たにクリスチャン・ガマリノ、ロマン・ラモスの2名の選手を抜擢し挑みました。それぞれのライダーはポテンシャルが高く、クルー達は素早くミスのないピットワークをしてくれて常に頼もしい作業をしてくれました。素晴らしいライダー達、優秀なクルー達と一丸となって優勝を目指し取り組みましたが、悔しくて残念な結果になってしまいました。しかし我々は歩みを止めず前へ進み続けます。勝利に向けまた準備を進めて行きます。今シーズンご支援頂いた各スポンサー様、各ライダーをはじめチームクルー及び各関係者の皆様、そしていつも熱い応援を頂いているファンの皆様、本当にありがとうございました。

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