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3月の開幕から8カ月弱。ついに最終戦を迎えた全日本ロードレース選手権。10月26~27日に、三重県・鈴鹿サーキットで行なわれたMFJグランプリは、天候が心配されたものの、木曜からの走行スタートで、ほぼ日中に雨が降ることもなく曇り空の続く中、決勝レースもすべてドライコンディションで行なわれた。

今シーズンを象徴するような中須賀vs岡本の壮絶な戦い! 予選は岡本がポールポジションを獲得

JSB1000クラスは2レース制での開催。チャンピオン争いは、V12チャンピオン中須賀克行と、そのチームメイトである岡本裕生という、ヤマハファクトリーレーシングのライダー同士の戦い。数字の上では、ランキング3位の水野涼(DUCATIチームカガヤマ)にも可能性が残されていたが、事実上はヤマハのふたりの一騎打ち。今シーズンを象徴するような中須賀vs岡本の壮絶な戦いが繰り広げられた。

決勝レースを前に行なわれた2日間の事前走行は、木曜の走行で水野がトップタイムをマーク。2番手は中須賀、3番手は岡本で、やはりチャンピオン争いの3人が2分06秒台でトップ3を占めるスタート。
金曜の走行ではさらにタイム出し合戦が激化し、水野がただひとり2分04秒台に入れて2日連続のトップタイム。2番手には岡本、3番手に野左根航汰(AstemoホンダドリームSIR)が入り、中須賀が4番手。

そして土曜の公式予選では、岡本がポールポジションを獲得。タイムはとうとう2分03秒台に入って2分03秒856。雲り空で湿度が高い、決していいコンディションでの走行ではなかったが、鈴鹿のコースレコード2分03秒592まで、あと0秒264まで迫った。
予選2番手は水野、3番手は野左根で、岩田悟(チームATJ)をはさんで中須賀が5番手からのスタート、6番手に世界耐久チャンピオンチーム、ヨシムラSERT_MOTULからスポット参戦の渥美心が入り、ここまでが予選2列目に収まった。

レース1はドゥカティパワーを見せつけた水野が制する!

土曜に行なわれたレース1では、やはりチャンピオン争いの3人がレースをリード。ホールショットは岡本が獲り、2番手にフロントローからスタートの野左根と水野、岩田をはさんで、中須賀が5番手あたりからオープニングラップをスタートする。
1周目のシケインでは、早くも野左根が仕掛けてトップに浮上。しかし、すぐに岡本がトップを奪い返して岡本→野左根→水野→中須賀→岩田の順で、この5人が6番手以下を引き離していくが、順位は毎周のように変動。中須賀が岡本とトップ争いをしたかと思えば、水野がトップに立つ局面も。いつのまにかこの3人が4番手以下を引き離して終盤へ。
ラスト2周、水野がドゥカティパワーを見せつけてトップに立つと、ラストラップで中須賀がトップに浮上。しかし、最後のバックストレートで水野が中須賀をかわすと、その背後に岡本がピタリとつけて水野→岡本→中須賀の順でフィニッシュ。水野が今シーズン2勝目を挙げ、岡本は4連勝ならずに2位、中須賀は6戦連続優勝なしの3位という結果となった。
これでチャンピオン争いは、岡本が中須賀にポイントで追いついて、192ポイント同士で、日曜の決勝レース2で雌雄を決することとなった。

最終決戦レース2では中須賀痛恨の転倒 水野ダブルウィンに岡本チャンピオンへ

日曜に行なわれたレース2がいよいよ最終決戦。中須賀克行と岡本裕生という、ここまで7戦10レース、優勝回数が4回、2位が3回、3位が3回と、表彰台登壇の回数も同じというふたりで、先にゴールラインを切った方がチャンピオンだ。
レースで先手を取ったのは岡本。ホールショットを奪うと、中須賀、野左根、水野を従えて、土曜のレース1のような集団というよりは、岡本が逃げたい、2番手以下は岡本を逃がしたくない、という縦長の展開。この4人と5番手の高橋巧(日本郵便ホンダドリームTP)の差は開き、4人によるトップ争いとなって行く。

5周目には2番手の中須賀を1秒ほど引き離し、水野が野左根をかわして3番手に浮上。6周目には水野が中須賀をかわし、岡本→水野→中須賀→野左根の順で周回が進んでいく。
しかし、レースが折り返しを過ぎたころ、多重転倒が出てコースにセーフティカーが介入。これでコース上の10数台の感覚がほぼなくなり、転倒者撤去に3周くらいを消化。残り3周で、セーフティカーが撤去し、最後の最後は3周での超スプリントなトップ争い、つまりはそれがチャンピオン争いだ。
セーフティカー介入でスロー走行を強いられたライダーたちは、一度暖まったタイヤを冷やすまいと、ホームストレートやバックストレートで大胆にマシンをローリング。
そしてセーフティカーがシケイン部で退出すると、岡本→水野→中須賀→野左根の順で全開加速! 最初の勝負所、1コーナーへのブレーキング争いで、水野が岡本をかわし、その後方に中須賀が続くものの、中須賀は止まり切れずにフロントを切れ込ませて転倒。1コーナーに盛大な砂煙をあげて転がり、この時点で中須賀の13回目のチャンピオンの夢が消えてしまった。

レースはその後、岡本と野左根が水野をかわし、一時はついに野左根がトップに浮上! しかしそれを水野も岡本も許さず、水野が岡本と野左根を2台抜き! 野左根が賢明に食らいつくものの前に出るには至らず、水野がMFJグランプリをダブルウィン。2位に今シーズン初表彰台の野左根、岡本が3位で2024年シーズンのチャンピオンを決めたレースとなった。

4位には後方集団のポジション争いを勝ち上がった高橋、5-6位にスポット参戦の日浦大治朗(ホンダドリームRT桜井ホンダ)と渥美心(ヨシムラSERT MOTUL)が続き、7-8位に名越哲平(SDGホンダレーシング)、関口太郎(SANMEIチームTAROプラスワン)が入り、9位にはスポット参戦の亀井雄大(チームAGRAS with NOJIMA)、10位は佐野優人(KRP三陽工業RS-ITOH)が入賞。

ペースカー介入中に冷えたタイヤを、冷静に熱入れしながら勝負に出た中須賀のファイトは素晴らしかったし、最終戦で初表彰台に登壇した野左根は、今シーズンから日本に帰国、マシンもヤマハからホンダにスイッチしてついに結果を残した。今シーズン計3勝を挙げた水野は、長年乗り慣れたホンダからマシンをスイッチ。チームとともに開幕から半年強で、よくぞ未知のドゥカティ・パニガーレV4Rを「勝てるマシン」に仕立て上げた。
そしてついに、先輩でありライバルであるグレートチャンピオンを超えた、岡本の今シーズンの成長は目を見張るものがあった。

長く続く中須賀+ヤマハの一強時代から岡本が加わり、ヤマハの黄金期が続いくかと思われたなかで「黒船襲来」を実現させてDUCATIチームカガヤマが日本のロードレースを盛り上げた2024年。来シーズンはここに、ホンダやカワサキ、スズキが絡んできてほしい。

各選手のコメント

岡本裕生 2024 JSBチャンピオン

「今年でファクトリチーム3年目、頑張るのはもちろん、結果が求められる環境の中でのレースで、楽しいこともあったし、苦しいこともあった。ケガもあったし、いろんな経験をさせてもらった。もちろん、中須賀さんにチームメイトとして、先輩としてたくさんのことを教わったおかげで、ここまで走ることができるようになった。楽しい一年でした。マシンに慣れたこと、チームとのコミュニケーションも高まって、事前テストや予選からしっかり走れるようになったのが大きかったです。シーズン終わって、安心しました。最後、中須賀さんとチェッカー受けたかった。中須賀さんがいる時代に一緒にJSBクラスを走れて本当によかったです」

中須賀克行 ランキング2位

「レース2の最後は、フロントのグリップを失って行き場所がなくなって、避けられない転倒でした。今年は(岡本)ユウキが本当に速くて、その成長を間近に見ることになりました。ユウキは僕を倒すことを目標にしてきて、その速くなった彼を見て僕もレベルアップできたと思います。ユウキのチャンピオンは本当に嬉しいし、ヤマハのタイトルを続けてくれた。僕自身もまだ進化できることが分かったので、今後も常に前進していきます」

水野涼 ランキング3位

「ウィークのスタートから調子が良く、レースは序盤から離されなければ有利な展開に持ち込めると確信していたので、無理に前に出ず、落ち着いてついていきました。チャンピオンを獲れなかったのは心残りですが、自信をもって最終戦をダブルウィンできたことは、自分をほめてあげたいです。初めてのドゥカティでのシーズンは、初コースでデータを積み重ねていくことから始めなければならなかった。転倒した1戦以外は表彰台を落とさず、ドゥカティのポテンシャルをアピールできました。ドゥカティを選んで本当に良かったし、ずっと僕を応援してくれているファンの方に加え、新しくドゥカティでの活動を応援してくれるファンの方が増えて、あらためてドゥカティの影響力を実感しています。来年はさらにいい結果でお返ししたい」

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