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DAY2、鬼門は2箇所。これをクリアすれば無事完走だ!
何度かの転倒や遅着ペナルティを受けたりしながらも無事DAY1を終えた私。実はDAY1の中で鬼門とも言える要注意箇所がいくつかありました。その筆頭が「鉄板の橋」です。橋といっても用水路を越えるだけのわずか1〜2mくらいのものなのですが、これがいやらしい。用水路に落ちたら、復帰が相当難しいくらいの深さです。
まず、スタートからTC1までの長い距離のダートを集中して走り疲労が重なる中、終盤に用水路脇のライン1本分の土手を走らされます。左側は落ちたら厄介な谷、右は用水路。怖いし、見たら吸い込まれそうなので、ただ前だけを向いて先に進みます。そうすると、例の鉄板橋ポイントが現れます。90度右に曲がってその橋を渡るのですが、これが重量級のCRF250Lには難しい。
私のスキル不足なだけですが、なかなかフロントを橋に載せることができずアタフタ。一度反対側の谷側に降りてからの加速という手段もあり、そのようなことをしている痕跡、轍も見受けられましたが、重いCRFでスタックしたら一大事だなと思い、どうしたものか思案していたのです。すると後続のライダーが集まってしまい、プチ渋滞を引き起こしてしまいました。私を見かねて後ろのライダーがバイクを降りてフロントを引き上げていただき、ことなきを得ました。この場をお借りして感謝します。
この渋滞のせいで、よくお世話になっている田中弘行さんは「あれ、宮崎さんだったのか。おかげで1分のペナルティ受けたよ〜(笑)」と。この場をお借りしてお詫びいたします!
レース後ニュートン高橋店長に聞きに行ったら、まずはフロントを載せて(その場でサスペンションを縮めてフロントを浮かして移動)、念の為にバイクを降りて支えながら後輪を載せてクリアしたそうです(DAY2は高橋店長もフロントが上がらずヘルプでクリア)。この方法で果たしていけるかどうか。
もう一つはDAY1でも登頂できなかったXTのヒルクライム。ただしこちらはエスケープルートがあるので、不安はほぼありません。また他にもルート上に助走の勢いを殺してはいけない登坂スポットもあるので要注意です。実は最も懸念していたのが、昨年も発生していたという「ヤチ」。
いわゆる沼地でのスタックは、1人で抜け出すのは困難。一応一人でも、前後タイヤがズッポリ埋まった状態からでも脱出できる方法を鈴木健二さんに教わり取材しましたので、気になる方はダートスポーツ11月号をご覧ください。今年は天候に恵まれて川の水深も浅く、ヤチも存在しなかったので助かりました。
DAY2 いよいよ鉄板ポイントへ
DAY2は、鉄板のことだけが気がかり。また後続ライダーに迷惑をかけたら申し訳ない。そんな気持ちでルートを走る私。バイクに慣れてきてペースも上がり、いよいよ例の鉄板ポイントへ(写真を撮る暇もなく、文章だけで申し訳ないですが、想像でお願いします)。
するとヘルプ要員の方が1人立っているではありませんか!これでだいぶ気が楽になりましたが、できればノーヘルプでクリアしてみたいと思い、フロントを浮かそうとしましたが、思うようにできませんでした。これはしっかり練習しておこうと思います。
結局ヘルパーさんに前輪を引き上げていただきクリア。後続にも追いつかれずにすみました。その後も同じような滑る橋があり、初日は勢いで普通にクリアできたのですが、2日目はなぜか意識してしまい、バイクを降りてそ〜とアクセルを開けながらクリアしました。遅くても確実に前に進むのはアジアクロスカントリーラリー参戦で学んだことでした。
鬼門のXTのヒルクライム、この日は最初からエスケープライン狙いで行きましたが、なぜか初日のようにうまく行きません。エスケープとはいえ、鋭角にターン〜登坂しなくてはならず、実はハードエンデューロのようなセクション。しかし後輪が滑って谷側に落ちてしまい苦戦しました。
今回は1日目の終わりにタイヤ交換をしなかったので角に丸みがあり、出だしのグリップ力がやや落ちていたのかもしれません。結局初日に10分28秒.01だったのが、2日めは8分11秒50。タイムだけ見ると短縮できていますが、上手くこなせなかっことにドッと疲れました。
ちなみにここ、エスケープを使わずに登れればおそらく3分台で走れるコースです。同じCRF250Lの高橋店長もエスケープを使っていますし(IAの世利選手はもちろん直登で、2日めは2分34秒55で回っています 驚)、もう1回登ることになっても、自分の実力では果たして直登できるのか想像できません。
レーサーなら何度転倒しても起こしやすくダメージも少ないのでトライできますが、CRF250Lでそれをやる気にはならないのです。まあ、結局自分の腕を磨くしかないわけですが。
最後のテストCT2へ
ようやくパドックのある日高高原荘に戻り、最後のテストCT2に挑みます。ここはスタックする場所もないし、多少無理をしてでも攻めていきたい。ちなみにDAY1は相当慎重に走り、CT1:3分38秒70、CT2:3分28秒55。DAY2のCT1は3分18秒68、なんとかCT2でこれを上回りたいとプッシュしました。
コーナリングはこのバイクの良い特性が出るので非常にスムーズです。テクニクスサスペンションのおかげでブレーキング時の底付き感や不安定性がなくなっているので、スピードを上げて進入できますし、加速ではGX20のグリップ力やヨシムラフルエキゾーストによるパワー特性が助けてくれて、とても良い感じで走れます。
惜しいのは長い登りのストレート。アクセルを完全に開け切って行きますが、60km/hでているかどうかというくらい遅い。ここでおそらく5秒はロスしていたような…。ギヤ比変更(14/40T→12/42T)は全体的に成功していたと思うので、あとは体重を落とすしかないか…。結局なんとか3分17秒76で今大会自己ベストで終えることができました。
XTを終えたら再びルートに戻るのですが、大きな岩が転がる河原をしばらく走らされます。ここは経験上あまり苦にならないセクションでしたが、転倒しないために普段以上にラインに気を使いました。
左はハイドレーションバッグの中身。今年の開幕戦SUGOでの熱中症、極度の疲労からの回復を体験して以降愛用しているJUCOLAの「クエン酸パワー」と人工甘味料を使用していない「DAKARA」の組み合わせ。右は今回の日高用に新調したZETA RACING「レーシングマット(JECでは規則付けられています)」と、DRCの「HC2リフトスタンド」。こちらは高さ調節可能なのでレーサーからトレールまで使用できます。
モーターサイクルショップニュートン高橋店長のバイク紹介
さて、今回のレポートでも度々登場していただいているモーターサイクルショップニュートン高橋店長。なるべくお客様が乗るノーマルの状態で参戦したいということで、最低限のカスタムをされていましたが、なかなか面白いのでここにご紹介させていただきます。
1.サイレンサーは軽い社外品SP忠男に変更。
マフラーメーカーの信頼性と固定方法が吊り下げ式でなく破断しにくいので選択。エキパイは予算が無いので諦めました。
2.スピードテック製品ハイスロに変更。
4サイクルは長く乗るとアクセルが重くなるので、少しでもアクセルを楽に開けるようにしました。戻し側のワイヤーも抵抗になるので取り外し。今回日高の様な長いレースでは大事です。
3.ノーマルサスペンションを最適化。
フロントサスは油面を10mmアップ。サスオイルも熱に強い高性能な「スピードハートのフォークオイル」に交換。番手は秘密のブレンド。リアサスはプリロード調整強めでスプリングを締めこみ、緩慢な動きを極力抑えました。
4.キャニスターやABSセンサーなど外して害のない物を取り外し。
5.リアタイヤは「ミタスタイヤ」のFIM規定「TERRA FORCE スーパーライト(コンパウンドは真ん中、ミディアムぐらい)」。非力なのでタイヤは細め選択。フロントタイヤは剛性が高くしっかり刺さるので好印象の「EX SUPER(硬め)」。フロントが特に重いのでしっかりとした剛性のあるタイヤがよいです! 中身はシンコーのエンデューロムース(新品)。バイクが重いのでヘタったムースは反発が悪くCRF250Lには不向きです。FIMタイヤは潰してグリップさせる事が多いですが、バイクが非力なので転がりを優先して新品にしたほうがよかったです。
6.ブレーキ液は特に重要で「スピードハート・レース用ブレーキフルード」を使用。
ふにゃふにゃのブレーキが液の交換で驚きのカッチリと効くようになりました。ABSモジュールに入って対流しているのでキャンセル。本来は直接マスターシリンダーからキャリパーにホースを取り付けたほうがよいのですが、今回は時間が無かったのでそのまま。パッドはリアのみRKのメタルパッドがあったので交換。次回はベスラ製品を使う予定。
7.スプロケットを フロント12T ファイナル43Tに変更。
8.ブレーキペダルをZETA RACING可倒式に交換。
ワイヤー固定し曲がり対策。チェンジペダルは敢えての剛性のないノーマルにし、すぐに曲がっても戻せるようにしました。
9.曲がったチェンジペダルがエンジンケースに当たって割れないように、クランクケースに金属パテと樹脂板を貼って肉盛りしておきました。
10.ハンドガード・フレームガード・エンジンガードはアチェルビスの樹脂製にして軽量化。
11.ラジエーターにカラスよけネットを張り泥進入対策。
12.バッテリーは軽量のリチウムバッテリー。
13.ヘッドライトは高い!ので、ZETA RACINGのヘッドライトガードを取付け。
14.オイルは新発売の「スピードハート・リバーレRR 5W-35」。
クラッチ・エンジンを最後まで限界まで守ってくれました。※クラッチは前期型CRF250Lの方が強いらしい(※世利選手から宮崎がお聞きして、お伝えしました)ので次回は交換予定。
15.シート後ろにシリコンを入れコブを作り、泥でもお尻がずれずにグリップし踏ん張れるように加工。
16.レバー類はZETA RACINGの可倒式に交換。ハンドルも勿論ZETA RACINGのアルミバー。
以上です。
無事にゴール
車両チェックを受けてパルクフェルメにバイクを保管。無事ゴールできた喜びと安心感に浸りながらパドックへ戻り、チーム仲間と再会しました。NBの梅津さんは無事完走。これまでJECで完走したことがなかったのですが、ついに伝統の日高を完全走破です。
浜野さんはクラッチ破損を応急修理するもクラッチオイル漏れで残念ながらDNF。NA西村さんはこの日奮起して6位フィニッシュ、さすがです。surronの勝俣さんはパワーセーブしながら走るもののやはりTC1まで持たずDNF。OPEN-Bの鈴木さんはDAY1終了後に疲労に襲われていましたが、この日も完走。しかもレース中にガス欠になった方を助けたらしく、レース後に夕張メロンのお礼を受けていました!樋渡さんは万全な体できっとリベンジされることでしょう!
OPEN-Cの粂野さんは、レース後にコメントをいただいたので、ここにご紹介させていただきます。
「学生の頃からの『憧れ』であったヒダカ。52歳でデビューしました。実力も体力もなく、恥ずかしい思いをするかもしれないと躊躇しましたが『人生は一度きり』という言葉を思い出し参戦。無事完走しました。言い訳が上手くなる年頃ですが諦めずにトライしてよかったです。同じように躊躇している方が居たら『とりあえず行ってみよう!』と伝えたいです。
林道、沢、ウッズ、ロックセクション…北海道の素晴らしい大自然の中を競技で走ることができてシアワセ! 来年も必ず行きます!
川で転倒、水没しましたが、なんとか復帰。大好きなコンデンスミルク(コンビニで売られているチューブ)を飲んでもう一踏ん張り! チームサポートのお陰で3日間の休暇でヒダカを走る事ができました」
日高参戦を終えて
私も10年ぶりの日高参戦をノントラブルで終えることができてホッとすると同時に、改めて広大なスケールや走りごたえのあるコースを満喫できました。 かつて各メーカーから発売されていた国産トレールバイクは今や数少なくなり、今の時代においてホンダのCRF250Lはオフロードバイクの中でも安価で購入しやすく、貴重なモデルです。このバイクならではの魅力や可能性を確かめ、それを伝えたくて決まったこの日高参戦計画。Honda DREAM龍ヶ崎で購入したCRF250Lは、皆様の協力のおかげで無事ゴールすることができました。ここに感謝いたします。来年もぜひ走りたいと思っています。
そして、「トレールバイク」、またの名を「デュアルパーパス=2つの目的」と呼ぶジャンルのバイクですから、レース後にタイヤをiRC GP610に履き替えて、キャリアもつけて自走ツーリングに切り替えました。そのレポートはまた別途書かせていただきますが、結論からすると日高を2日間走り抜き、体の疲労が驚くほど少なくマシンもノントラブル。北海道ツーリング、そして仙台港から横浜の自宅までの一気走りを余裕でこなせたことに、デュアルパーパス車としての能力を改めて感じた次第です。
今回の日高はiRC GX20を前後履きましたが、角の取れたDAY2でも全ての路面にて最高のグリップが得られて難しい場面でもクリアできました。ちょっと硬めで剛性の高いこのタイヤは、CRF250Lにもマッチしていました!
さて、大崎さんらバス組はその日の夕方のフェリー(苫小牧〜仙台は1日おきの出航)に乗るため急いで片付けて出発。そのためタイヤチェンジャーや工具類もバスに預けるので、レース後もiRC飯塚さんにタイヤ交換をしてもらうというVIPなことをしてしまいました。
GX20から自走ツーリング用のGP610への変更です。実はレースで使用した140サイズのムースを入れようとしたのですが、流石にサイズ的に厳しく、飯塚さんの作業も難航。私もやりましたが厳しい。そこへ和泉拓さんもやってきてトライするころには、ギャラリーができました(笑)。
結局無理があるということで、チューブにしました。タイヤも素晴らしかったし、エンデューロを愛してやまない飯塚さんのような頼れる方がいるメーカーは最高です。飯塚さん、大変ありがとうございました。
さて、バス組、飛行機組のみんなと別れて私はソロツーリングを開始。その模様は次回のレポートでご紹介します。
さよなら日高、また戻って来ます。
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