1980年代の後半、ワークスモトクロッサーや世界グランプリロードレーサーに装備されるようになり、市販車の世界では1989年あたりから標準装備されるモデルが増えている、通称、アップサイドダウンこと倒立式フロントフォーク。読んで字の如く正立式フロントフォークに対して、逆さまに部品レイアウトされているのが倒立式フロントフォークである。ここでは、ホンダRVF400のフロントフォーク・オイルシールの交換にチャレンジしてみよう。

フロントスタンドがあれば作業性良好

作業日当日、フロントスタンドが手元に無かったため、ガレージ天井の梁から、玉掛けワイヤーとタイダウンベルトを介してメインフレーム前方を吊り上げて作業進行した。フロントフォークを抜き取る作業時には、周辺機能部分の確認点検もできるので、積極的に各部を点検してみよう。ホイールやフロントフォークが無いと、ステアリングの作動性をダイレクトに感じることができ、普段なら気がつかないことに、気がつくことも多い。

ついでに確認できること、いろいろ





せっかくホイールを取り外したのだから、ハブベアリングの作動性を指先で確認してみよう。ゴロゴロ感や引っ掛かりなどの違和感が無いか、指先で感じ取れるはず。このような「ついでメンテナンス」がマシンコンディションを維持する上でとても重要だ。しばらく分解していなかったのか?ステムブラケットのクランプ部分の内側がサビ、アルミ製アウターチューブにその痕跡が……。

特殊工具があると作業性が良くなる



機種によっては特殊工具が無くても比較的容易にトップボルトを取り外すことができる。RVF400はトップボルトにインナーカートリッジダンパーのロッドエンドが固定されているため、トップボルトをスムーズに外せないとその先の作業へ移行できないのだ。ガレージではスズキ純正特殊工具を常備しているが、他社製特殊工具にも似たような製品はある。

フォークオイルを抜き取りパーツ分解





トップボルトを取り外すと、スプリングのアッパーカラー、フォークスプリング、機種によってはアンダーカラーなどが組み込まれている。それらパーツを抜き取りつつ、フォークオイルも抜き取ろう。アンダーブラケットの真下から締め付けているボルトを抜き取ることでカートリッジダンパーが外れ、インナーチューブを抜き取ることができる。インナーチューブの抜き取り前には、フォークシールの抜け留めリングを取り外そう。

注目!!インナーチューブコンディション!!



ボトムブラケット下側のボルトを取り外し、オイルシールの抜け止めクリップを取り外したら、ボトムブラケットを万力に固定して、スコン、スコンッとスライドさせながらオイルシールを抜き取る。部品構成はご覧の通り。今回交換する部品は、フロントフォークのオイルシールとダストシールのみだ。

オイルシールリップを痛めない裏ワザ



オイルシールを組み込む際に、無理にインナーチューブへ押し込んだことで、シールリップにダメージを与え、せっかく新品部品に交換したのに、またまたオイル漏れが発生……、といったトラブルは意外と多い。オイルシールリップにラバーグリスを塗り、インナーチューブ端末にはビニール袋を被せてオイルシールガイドとすることで、シールリップを痛める可能性は確実に減る。

カートリッジダンパーの締付けに要注意



フロントフォークのアンダーブラケットを万力で固定したら、アウターチューブを差込み、カートリッジダンパーを挿入する。ボトムボルトを締め付けてダンパーボディをブラケットに固定する際は、アウターチューブをフルボトムにして、さらにアウターチューブを回転させながら、ダンパーボディをセンターリングしつつボトムボルトを締め付ける。正立式フロントフォークの場合も、インナーチューブをフルボトムにした状態でインナーチューブを回転させながらボトムボルトを締め付けよう。これがフロントフォークを組み立てる際のセオリーだ。

機種毎にオイル量や油面を確認





フォークオイルの量は「規定注入量で明記」しているモデルと「オイル油面の高さを明記」しているモデルがあるので、作業実践の際には、メーカー純正サービスマニュアルで正しいデータを把握しておこう。今回は、オイル油面の高さで合せた。オイルを一定量注入したら、カートリッジダンパーのシャフトを小刻みに上下に作動させ、ジューコ、ジューコと、カートリッジダンパー内のエアー抜きを積極的に行う。その後、油面調整シリンジを使い、左右フォークの油面高さを一致させよう。オイル注入を終えたら、トップボルトにダンパーロッドをしっかり締め付け、アウターケースに締め付けよう。

アクスルを通してフェンダー取り付け

フロントフェンダーを固定するときやフロントホイールを復元する前には、アクスルシャフトを差し込み、スムーズに締め付け固定できるか確認してみよう。何か間違いがあると高さがズレてしまい、アクスルシャフトを水平に差し込めないこともある。そうなったら組み立て状況を再確認しよう。

POINT

  • ポイント1・オイルシール交換だけの作業でも、周辺の関連部品は積極的に点検しよう
  • ポイント2・オイルシールリップを痛めないように、ラバーグリスとビニール袋を併用する裏ワザを知ろう
  • ポイント3・アクスルシャフトの締結時には、突っ張り感、違和感が無いかしっかり確認。締め付け後は、ホイールのスムーズ回転を必ず確認しよう

実践作業するモデルによって特殊工具の有無に違いはあるが、所有していれば何かと便利なのが、フォークスプリングを圧縮してトップボルトを取り外す「フロントフォークスプリングコンプレッションツール」だろう。DIYの完全なる一人作業の場合は、スプリングを圧縮した状態で安定保持できるツール(自作のスタンド型ツールを利用しているユーザーが意外と多い)があると便利だが、我がガレージには、スズキGSX-R750/1100の油令倒立フォークモデル用に購入した、両手でカラーを押し込むツールしかないので、それを使って作業進行した。カラーとスプリングを同時に押込み、トップボルトを締め付けるナットにカラーエンドを引っ掛けることで、ロックナットにスパナが入るので、トップボルトは容易に脱着できる。こんな工具があると便利なので、倒立式フロントフォークを分解メンテナンスする機会があるときには、持っていると大変便利だ。

ちなみに、旧車の正立フォークの中には、フロントフォークシールホルダーをボトムケースへネジ込むタイプがあるが、そんなタイプのシールホルダー用ロックツールとしても流用できるのが、この工具でもある。

倒立フォークに限らず、ステアリングブラケット(三つ叉)からフロントフォークを抜き取る際には、フロント用のメンテナンススタンドがあると作業性は良いが、今回は手元に無かったため、カレージの梁からワイヤーとタイダウンを下げ、フレームで前周り全体を吊り上げて作業進行することにした。

今回のメイン作業は、フロントフォークシールの交換である。フロントスタンドを使っても、車体を吊り下げたとしても、このような作業手順なら様々な箇所の「ついでメンテナンス」を実践することができる。例えば、取り外したフロントホイールのハブベアリング点検や、ステアリングヘッドパイプのベアリング点検だ。フル装備状態でタイヤが接地していると気がつかないことでも、前輪が浮くことで気がつく違和感もある。また、ホイール&タイヤを組み込んだ状態では気がつかなくても、前輪を取り外すことで気がつく違和感もある。ステアリングヘッドパイプの作動性が、まさにそうだろう。

フロントフォークを抜き取り、分解作業を進行する際に、あると間違い無く便利なのが大型万力だ。ボトムケースのキャリパーマウント部分を固定すれば、インナーカートリッジのダンパーボディ締め付けボルトを容易に緩めることもできる。

内部パーツを分解したら、各パーツを脱脂洗浄しよう。特に、要注意なポイントは、アウターケースのオイルシールホルダ―の洗浄と、インナーチューブの摺動部分に「点サビ」が発生していないか、目視および指先で触れて、しっかり確認点検することである。また、スライドメタルを点検し、予想に反して摩耗痕があるときには、新品メタルへの交換をお勧めしたい。インナーチューブのオイルシール摺動部に点サビがあると、そのサビ穴が影響してフォークシールリップにダメージを与えてしまう。せっかく新品オイルシールを組み込んでも、点サビがあると早期にオイルシールはダメになってしまうのだ。そんな不良インナーチューブは、再メッキ修理もしくは新品部品に交換しなくてはいけないが、いずれもボトムブラケットを取り外さなくてはいけないため、そんなときには特殊工具および大型万力が必要不可欠である。

オイルシールを組み込む際には、オイルシールリップやダストシールリップへのダメージに要注意。鋭利な形状のインナーチューブ端末はオイルシールリップにダメージを与えやすいため、組み込む際には、ラバーグリスをリップシール周辺にしっかり塗布し、さらにインナーチューブ端末には、ビニール袋の切れ端などを被せて、リップにダメージを与えないように挿入しよう。カートリッジダンパーを組み込んだらフルボトムを維持し、指定のオイルを注入。ダンパーロッドを小刻みに何度もストロークさせ、ダンパー内部のエアー抜きをしっかり行わなくてはいけない。

組み付け完了後は、まずはメーカーのセッティングデータ通りに圧縮&リバウンドの減衰ノッチ数を合せ、スプリングのプリロードもデータ通りに調整。試運転後は、好みの動きになるように、まずはダンパー減衰量の調整で圧縮&リバウンドの好みを見つけ出すのが早道(あくまで個人的な印象)。様々なセッティングが可能なフルアジャスタブルタイプのサスペンションなので、セッティングを楽しみたいものだ。

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