毎年5月(皐月の陣)と11月(神楽月の陣)に開催されるテイストオブツクバは、日本一の旧車草レース。ハーキュリーズやモンスターを始めクラス設定は12を数え、2017年からは土日の2days開催になるほど規模が拡大している。そんなテイストで新車や外国車などの新興勢力が存在感を増している。ここではそんな進化型レーサーに迫る!

テイストには鉄フレームであれば新車でも参戦できるクラスがある

ロケットカウルがインパクト大のCB1000Rは、テイストオブツクバのDOBAR Fゼロクラスに参戦。Fゼロは、テイストにあって年式やエンジンの冷却方式に縛りがない間口の広いクラスで、かつてはCB1000SF vs GPZ900Rの新旧名車勝負が繰り広げられたこともある。

このCB1000Rカフェ仕様で参戦するライダーはWebike代表の信濃孝喜。2018年に国内で発売されたCB1000Rが鉄フレームであると知り構想がスタート。信濃は当初からロケットカウルを装着することをイメージしており、2020年神楽月の陣ではノンカウルだったものの、今年の皐月の陣で完成に至った。

2018年に国内デビューしたCB1000Rレーサー。ネオクラシックモデルをベースにすることでテイストの参戦車両に溶け込みつつ、個性も際立っている

往年のモデルでレースを楽しむテイストオブツクバでは、年式に縛りのある一部のクラス以外では鉄フレームオンリーという鉄則がある。現代の高性能バイクは高剛性と軽量化が両立できるアルミフレームの装備が常識なので、そういったモデルの参戦を制限して全体の均衡を保つためのルールだ。

一方、近年はニューモデルでもアルミフレーム一辺倒ではなくなり、コンセプトに応じて鉄フレームを採用するようになっている。理由は様々あるが、鉄フレームの方がコスト面で優れていることが大きい。CB1000Rも2017年型まではアルミフレームだったものが鉄に変更されたことによって、テイストに参戦可能になるという思わぬ副産物を生み出しているのだ。


ロケットカウルはKDCサービスのバンディット400LTD用レースアッパーカウル。CB1000スーパーフォアをオマージュした赤×白カラーが目立つ


シートカウルは、クレバーウルフのCBR1000RR/2011年型(SC59)用を装着。CB1000Rのスタイルへのマッチングは良好


タンクはノーマルと思いきやなんとアルミ製に換装。スーパービルドマキシマムのアルミワンオフタンクを装備し軽量化。塗装は西村コートグリズリーだ

エンジン本体はノーマルのままでも、足回りを強化すれば戦闘力は高い

信濃のCB1000Rは、パワーユニットにはあまり手が加えられていない。エンジン本体はノーマルのままでコンピューターの制御にラピッドバイクEVO、排気系にチタンエキゾーストパイプとレース用サイレンサーを装着しているのみとなる。CB1000Rのエンジンはノーマルでも145PSを発揮しており、1980年代のモデルなどと比べると優位。ベースは2004年型CBR1000RRで172PSを発揮していたパワーユニットだけに耐久性も十分見込めるのだ。

サスやブレーキはレースに対応させるべくパーツを吟味し、一見ノーマルながらフロントはブレーキのマスターシリンダーをブレンボのレーシングに変更しブレンボのレーシングパッド、サンスターのディスクを装備。さらにSHOWAのフロントフォークも中身にはワンオフ製作のG senseカートリッジを仕込んでいる。リアはCB1000Rのプロアームがカスタム感満点だが、これはノーマル。オーリンズのリアサスペンションはG senseでモディファイしている。

かつてGPZ900Rで参戦していた信濃にとって20年ぶりのFゼロクラス。ベストは1分2秒5を記録しており、今後は1秒台を目指す。スチール製バックボーンフレームはサーキットでも全く問題ないとのこと。

異形のレーサーではあるがストリート改から大幅に飛び抜けた変更はなく、それでも信濃は「乗り手次第で筑波1分0秒台は狙える」と語る。テイストオブツクバに参戦したくても今や往年のベース車の価格はうなぎ上り。さらにそれをレースで戦えるレベルにするにはエンジンだけでなく足回りもフルチューンすることになり、かなりの出費になることは想像に難くない。そんな中で、信濃氏のCB1000Rレーサーはコストパフォーマンスに優れた例とも言えるだろう。


ラピッドバイクEVOを用いたECUのセットアップはリアライズで実施。SCプロジェクトのチタンエキゾーストパイプにサイレンサーはトリックスターのIKAZUCHIを使っている。


ブレーキマスターシリンダーはブレンボレーシングにレバーガードはKファクトリー製となる。


ホイールとキャリパーはノーマルのまま。ブレンボ製レーシングパッドにホースはSWAGE-LINE、ディスクはサンスターのプレミアムディスクローターだ。


SHOWAのビッグピストンフロントフォークに中身はG senseのオリジナルカートリッジ for SHOWAを投入しセッティング。


低めのアクティブ製アルミハンドルバーを採用。カウルステーはNSF250R用のメーターステーを加工している。


ステップはベビーフェイス製を採用。エンジンカバーはモリワキ製にスライダーはベビーフェイス製を併用する。

CB1000R "Tasty RCB style"
ECU - RAPID BIKE:EVO(国内非売品)
マフラー - SC PROJECT:フルエキゾーストパイプキット 4-2-1
サイレンサー - TRICKSTAR: IKAZUCHIサイレンサー ブラックエディション
燃料タンク - スーパービルドマキシマム:アルミワンオフタンク
ニーグリップパッド - Eazi-Grip:イージーグリップ ニーグリップサポート TANK GRIP PERFOMANCE
シートカウル - クレバーウルフ:CBR1000RR/2011 SC59用シートカウル
シートレール - HRC:CBR1000RR用シートレール加工
アッパーカウル - KDCサービス:BANDIT400LTD用レースアッパーカウル
カウルステー - HRC:NSF250R用メーターステー加工
ハンドル - ACTIVE:Φ28.6 アルミテーパーハンドル スーパーロータイプ
グリップ(右) - Honda:CBR250RR純正(53140-K64-N01)
レバーガード - K-Factory:レバーガード
マスターシリンダー - Brembo:レーシング ラジアルブレーキマスターシリンダー【19×18】
リザーバタンク - Brembo:オイルタンク S50 スモークグレー
リザーバタンクマウント - KOHKEN:マスタータンクステー
ブレーキパッド : Brembo:レーシングパッド
ブレーキホース - SWAGE-LINE:ブレーキホース(オーダーブレーキホース ABSキャンセル)
フロントディスク - SUNSTAR:プレミアムレーシングローター
フロントフォーク - G-Sense:オリジナルカートリッジ for SHOWA
リアサスペンション - OHLINS:シングルショック HO828(G Senseモディファイ)
エンジンカバー - MORIWAKI:クランクケースガード
スライダー - Babyface:フレームスライダー、アクスルスライダー
ステップ - Babyface:バックステップキット
ボディーワーク - マジカルレーシング:カーボンフェンダー、アンダーカウル、ラジエターカバー、リアフェンダー
バッテリー - ELLYPOWER:リチウムイオン
スプロケット - ISA 特注
チェーン - DID 525ZVM-X ゴールド
リアスタンド - スーパービルドマキシマム:ワンオフ

外装ペイント - 西村コートグリズリー
ECUセットアップ - リアライズ(マイテック)
各種製作・フィッティング - EPSモータースポーツ
サスペンションサービス - G sense

鉄フレームといえばドゥカティ、KTMなど海外勢が強いがテイストでは?

テイストにおいてもうひとつの進化型は、新車に加え「外国車」のレーサーだ。鉄フレームではドゥカティのLツイン用スチールトレリスフレームの活躍がSBKで有名。また、近年ではKTMがロードスポーツに本格進出しており、MotoGPでも頑なに鉄フレームの採用を貫いている。またKTMは鉄フレームのスーパーデュークRが筑波サーキットのバトルオブザツインを制したこともある。

ただし、テイストオブツクバは4ストマルチや2ストロークのレーサーの闘いの場。意外にも鉄フレーム&マルチエンジンの外国車は少なく、唯一MVアグスタがこれに当たる。ここにMVアグスタのブルターレ1090RRで参戦するのが、Webikeの神拓也(じん たくや)だ。

神のブルターレ1090RRも信濃氏のCB1000R同様エンジンはノーマルでコンピューターと排気系のみのモディファイ。それでも後輪で160PSを発揮しベストタイムは1分00秒4を記録する。

神は、10年ほど前からMVアグスタでFゼロクラスに参戦しており、優勝経験もあるライダー。元々カワサキ好きでもあったのでZ1000での参戦を考えたが、「普通すぎる」という理由でブルターレ990Rをレーサー化することにした。現在の1090RRは2015年式の2代目レーサーで、一過性のものとせずMVを継続して使い続けることで受け入れられるようになったという。


今年の皐月の陣では、公式パンフレットで神の写真が使われており、テイストでMVアグスタが認知されるようになった表れと言えそう。

究極の進化型はスーパーチャージャーのあいつ、ついにハーキュリーズ優勝!

テイストのおける進化型レーサーの究極はカワサキH2およびH2Rで異論はないだろう。2015年にデビューした世界初のスーパーチャージャー搭載の2輪車で、310PSを発揮するレーサー仕様のRも同時発売されたが参戦できるロードレースはほとんどなく、そこに門戸を開いていたのがテイストオブツクバの最高峰・ハーキュリーズクラスだった。

しかし、いくらパワーがあってもテクニカルな筑波サーキットでスーパーチャージャーが本領を発揮するのは難しかった。名門チームの挑戦を経てもH2/Rはこれまで勝ったことはなく、ついに今年の皐月の陣でガレージ414の光元康次郎選手が初優勝を果たした。光元選手は、2016~2019年までH2で参戦し、2020年からH2Rにスイッチし苦節6年目での快挙となった。


400km/hに迫る速さのスーパーチャージドエンジンも筑波では決して有利ではない。

もはやチューニングの余地はないと言えるH2Rでは、すぐにウイリーしてしまうパワーを調整することがマシン作りのキモとなり、電子制御と車体のセットアップにノウハウが詰まっている。結果フロントフォークは延長され、さらにリアも低めの姿勢としているが、これで「意外にも曲がる」という。トップを争った加賀山選手も「今回はコーナーも速かった」とその完成度を認めていた。

H2Rが優勝したハーキュリーズは2009年に新設されたクラスで、ルールはほとんどなく鉄フレームとテイストらしいフォルムを守ること。自由を重んじるテイストならではの精神が最も具現化されており、こういった姿勢がテイストが長年参加者や観客から支持されている理由だろう。旧車を大事にしつつたとえ新車でも外国車でもH2Rでも受け入れる、自由なレースなのだ。


広島を拠点とするガレージ414のH2R。500万円以上するH2Rだがハーキュリーズのレーサーとしては低コストでもあるという。決勝では58秒004とコースレコードにあと一歩まで迫った。


岡山のモトレヴォリューションでは優勝経験があった光元選手が、ついに本丸である関東のテイストで優勝。今後、テイストの主役の一人になるはずだ。

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