バイクを語るうえでタイヤの空気圧は超重要です。
バイクに乗るのが大好きな方なら季節を問わず空気圧をマメにチェックしているはず。
しかーし!
マメにチェックした結果、冬は空気圧を低めにセットしている方が多いのでは?
冬になったらタイヤの空気圧を少し下げるのが極意!みたいな意見も良く目にします。
皆様にささやかな幸せとバイクの知識をお送りするWebiQ(ウェビキュー)。
今回は寒くなったらどのように空気圧を変えるべきなのか?という話です。
目次
タイヤの「空気圧」は超重要、正しくないとバイクはまともに走らない
最初に書きましたが、タイヤの空気圧は物凄く重要です。
タイヤの空気圧が適正でない場合はサスペンションセッティングなんて無意味と言っても過言ではありません。
そのくらい重要。
特にバイクの場合は空気圧の影響が顕著で、ちょっと空気圧を上下させるだけでかなりの変化が現れます。
これはサーキット走行やレースだけの話ではありません。
普通の街乗りでも空気圧の変化は「乗りにくい気がする」とか「何だか怖い」として誰でも容易に体感できるはずです。
バイクのタイヤは4輪車のタイヤと比較して詰め込んでいる空気の量そのものが少なく、僅かな空気量変化でも空気圧に影響が出やすいという宿命があります。
同じ理由でリヤタイヤより細い(= 空気量の少ない)フロントタイヤの方が空気圧変化にシビアです。
最低でも月に1度は空気圧チェックするように心掛けましょう。
できれば毎週チェックしたいし、極端に言えば乗る度にチェックするのが最良です。
タイヤの空気圧は自然に減る
タイヤはゴム製なので基本的に空気を通しません。
だから一度空気圧を調整すればずっと正しい空気圧……のはずなのですが、残念ながらそうは行きません。
何もしていなくても僅かづつ空気圧が減ってしまいます。
その理由はゴムを通過して空気が漏れるから……ではなく、様々な隙間から空気が漏れてしまうからです。
「様々な隙間って何?!」という感じでしょうけれど、実はタイヤ周辺にはけっこう隙間があります。
例えばチューブレスタイヤならホイールとタイヤはリムの部分で密着しているだけなので、ものすごく拡大してみると隙間があります。
ホイールに装着してあるエアバルブも通常ゴム製でリムに嵌っているだけなので、ものすごく拡大してみると隙間があります。
隙間は非常に微細なので普段の使用中に空気圧が低下する事はありませんが、時間と共に僅かずつ空気が漏れて空気圧が低下します。
タイヤチューブなら全てが一体化した構造なので隙間が無いように見えますが、エアバルブ(空気注入口)に中にあるバルブコアはゴムで密閉しているだけなので、どうしても隙間から僅かづつ漏れてしまいます。
ですから、チューブ式でもチューブレス式でも何もしないと徐々に空気が抜けるのは変わりません。
空気圧はできるだけ短い間隔でチェックするようにしましょう。
1ヶ月で〇%低下する……といったわかりやすい公式はありませんが、想像以上に減っている事に気付くはずです。
なお、たった数日で空気圧が変化する場合は単なる故障です。
「スローパンクチャー」と呼ばれる現象でなので修理の必要があります。
修理と言っても「ホイールにヒビが入っている」などという重大な故障を起こしている事は稀で、エアバルブ内のバルブコアに付いているゴム(通称:虫ゴム)が経年劣化で硬化している、エアバルブの基部に亀裂が入っている、リムにキズが入っている、リムとタイヤの間に異物を噛み込んでいる、タイヤのビード部が荒れている、チューブに極小のピンホールが開いている……、だいたいこの辺りに原因があります。
「空気圧ははどんなにチェックしてもチェックしすぎるということはない」を合言葉にチェックしまくりましょう。
寒いと更に空気圧が自然に減る
仮に隙間から一切空気が漏れなかったとしても、タイヤに入っているのが空気(気体)である以上、外気温度変化で圧力に変化が生じます。
空気は熱いと膨張して寒いと収縮します。
だから暑いと圧力が上がり寒いと圧力が下がります。
春先に空気圧調整した後、秋のバイクシーズンまで空気圧チェックしていなくても大した問題にならないのは、自然減少する空気圧より気温上昇に伴なう圧力上昇が大きいからです。
偶然好条件が重なって減っていないように見えるだけ。
夏場は気温のおかげで空気圧が減らなかった(下がらなかった)としても、タイヤ内の空気量が減っているのは事実。
秋~冬にかけて外気温が下がると突然空気圧低下しだしたように感じられるのはこのためです。
レース用タイヤの空気圧は超特殊
レースの世界でも空気圧管理は重要なので、当然のように「走行毎に」空気圧をチェックします。
走行開始前に空気圧チェックをしていないタイヤで全力走行するなんて考えられません。
そして、レース用タイヤの指定空気圧は公道用のタイヤと比較して極端に低いです。
おおよそ公道用の2/3、場合によっては1/3程度しかありません。
これは連続高速走行や激しいコーナリングでタイヤが熱くなり、中の空気が膨張して圧力が上がるから……ではありません。
サーキット用のタイヤはタイヤの構造が公道用とは全然違うからです。
具体的にはタイヤ自体の剛性が非常に高く、あまり空気圧に頼らずに形状を保つ設計になっています。
空気圧はダンピング調整などの「味付け」の意味合いが強く、車体を支える意味合いは低くなっています。
サーキット走行時の空気圧を具体的に書いてあるブログなども多数存在しますが、そこで書いてある低空気圧こそが速く走るための秘訣だとカン違いしてはいけません。
ましてや、峠を速く走りたいから、もっとグリップが欲しいからといった理由で公道用タイヤの空気圧を下げるのは愚かな事です。
絶対に参考にしてはいけません。
レース用オフロードタイヤの空気圧も超特殊
レース用オフロードタイヤは更に特殊で、路面の凸凹に合わせてタイヤが変形できるように強烈な低圧に設定します。
エンデューロレースだと1.0kgf/cm2以下が普通です。
オフロードの場合もレース用タイヤは構造が公道用タイヤと異なっており、あまり空気圧に頼らず剛性を確保する構造になっています。
ですので、公道走行用のオフロードタイヤでレース用タイヤの空気圧を参考にしてはいけません。
林道走行時に一時的に空気圧を下げるのは公道用タイヤでも有効ですが、そのままの低い空気圧で帰路に就くのはかなり危険です。
公道用タイヤは空気圧に優しい
レース用の特殊なタイヤに対して、公道用タイヤはずんぶんマトモです。
レース用タイヤとは逆に、公道用タイヤはタイヤ自体の剛性が低めになっており、パンクして空気が抜けると完全にペタンコになるくらい柔軟な構造です。
そこに比較的高めの空気圧を与える事でタイヤの形状を保つ設計になっています。
要求している空気圧が高いという事はタイヤ内に多量の空気を持つようにしているという事。
だから時間と共に少し空気が漏れたとしてもタイヤ内にある空気の全体量に与える影響が少なくて済みますし、走行毎に空気圧チェックしなくても大問題が発生しないのです。
また、要求している空気圧に対する許容範囲が広く、空気圧がちょっと下がったとしても「とても走れない」なんて事にはなりません。
レース用タイヤで空気圧が0.2kgf/cm2違ったら話になりませんが、公道用タイヤなら0.2kgf/cm2違っても問題無く走れてしまうくらいには寛容です。
優しい……。
しかし「走る事ができる」のと「気持ち良く走れる」は別の話です。
どうせ乗るなら一番気持ちの良い状態で乗りたいですよね?
空気圧はどのタイミングで測定する?
ところで、空気圧チェックには「冷間」と「温間」という言い方があります。
字面のとおり、冷間は「タイヤが冷えている状態」、温間は「走行時に熱くなっている状態」を指します。
タイヤで重要なのは温間時、つまり走行中の空気圧です。
レース用タイヤでは冷間と温間で全然違う空気圧を明記している場合がありますが、何しろレース用なので使用中、つまり温間時に最適ならば冷間時の空気圧なんか知った事ではありません。
ですので、冷間空気圧はあくまでも参考として最初にセットするための空気圧であり、走行して熱くなったあとで再度空気圧を測り直して温間空気圧に合わせます。
レース用タイヤでは。
では公道用タイヤはどうでしょう?
これは冷間時を基準にします。
極一部のハイグリップ系タイヤでは温間時の空気圧が書いてあるものもありますが、基本は冷間!
でも使用中の空気圧、つまり温間時の空気圧が大事なのは公道でも同じはずなのに何故でしょう?
その答えは「公道走行はサーキット走行のように条件を一定に保てないから」です。
サーキットのように決まった場所を短時間走るだけならその条件(温間時)に合わせた最適な空気圧にすべきですが、公道では刻々と変化する道路を走るのでタイヤの温度はどんどん変化してしまいます。
どんどん変化するシチュエーションに合わせてその都度空気圧を調整する事なんて出来ません。
住宅街から高速道路まで無調整で行く、だから冷間時に空気圧を適正な値に調整しておきます。
もちろんシチュエーションによってタイヤの温度が大きく変化するので温間空気圧も大きく変化してしまいます。
でも大丈夫!
その空気圧変化を許容するために公道用タイヤはレース用タイヤと違う構造になっているというワケです。
冷間で空気圧を合わせておけば、シチュエーションによって空気圧が上昇しても設計時の許容範囲に収まる……公道用のタイヤはそういう設計になっています。
もしレース用のタイヤを公道で使うとこれができません。
空気圧を温間で調整しようと冷間で調整しようとダメで、刻々と変化するシチュエーション(路面温度や気温)によって変化する空気圧がタイヤが要求する空気圧許容範囲を容易に超えてしまいます。
レース用タイヤを公道で使えば最強のグリップが得られるほど単純ではありません。
では冬はどうするのか?
夏も冬も公道用タイヤは冷間時に空気圧を調整します。
ここまではOK。
しかし冬になると「冷えたタイヤでもしっかり変形して接地面積を確保できるようにしたい」とか「タイヤを変形させて発熱しやすくして適正な温間空気圧になるようにしたい」といった理由で敢えて空気圧を下げる人が続出します。
残念ながらこれは大間違いです。
上で記したように公道用タイヤは空気圧でタイヤの形状を保つように設計されているので、空気圧を下げると『正しいタイヤ形状』が維持できません。
グリップ力が上がるとか暖まりやすくなるとか以前の問題で、空気圧の足りないタイヤではタイヤが設計時の形状になっていません。
結果、最悪のハンドリング、強く掛けられないブレーキ、グニグニした感触、燃費の悪化などなど……、ホントに最悪な事になります。
公道は『全てのシチュエーションで状況や気温変化に関わらず乗って楽しい』が絶対に正義です。
だから、絶対に冷間時にメーカー指定の空気圧に合わせるべきです。
そうしないと設計通りの『気持ちいいタイヤ形状』が確保できないのですから悩むまでもありません。
公道用タイヤは夏も冬も冷間時にメーカーの指定した空気圧にする。
これ以上でもこれ以下でもありません。
冬だから空気圧を上げるとか、寒いから空気圧を下げるとか、そもそもそういう話ではないのです。
オマケ:昔流行った空気圧のチョイ下げについて
ひと昔前、空気圧を低めにするのが流行った事があります。
その時に得た知識で未だに空気圧を低めにセットする人が居ますが、ハッキリ言って古い!
確かにひと昔前のタイヤで空気圧を低めに設定するのは有効でした。
当時(もしかしたら今でも)、コーナーでは荷重を掛けてタイヤの端を潰すのが極意!みたいな説が流行っていた事もあり、ツウなライダーはこぞって空気圧を低めにセットしていたものです。
グリップ感が向上したのもホントです。
しかしそれはレース用タイヤと公道用タイヤの境界線が曖昧だった時代の話。
同じトレッドパターンでもレース用と公道用でタイヤの構造から異なる物が用意されている現代では完全に時代遅れです。
現代では空気圧を低くする意味は全くありません。
もうそんな事が通用する時代ではないのです。
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空気圧下げるぞおじさんが発狂しそうな記事だ
だがわかりやすいゾ
空気圧下げるぞおじさん卒業します。
体重40kgの女性、80kgのオッサン、150kgのアメリカ人がタンデム。
みんな同じ空気圧でいいんですかね?
公道用のハイグリップタイヤをジムカーナと公道で使っているのはどうすれば良いか悩むな?ハイグリップタイヤは特に冬場は滑りやすいので。