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レジャーバイクの金字塔とも言えるホンダ モンキーは、その長い生産年数の中で様々なバリエーションを生み出した。そのバリエーションの中でも最も尖っており、今でも高い人気を誇っているのが今回ご紹介する「モンキーR」だろう。
ミニバイクレースの礎を築いた1台
モンキーRが登場した1987年はバイクブームの絶頂期とも言え、売れ続けるレーサーレプリカは毎年モデルチェンジを行ない、各メーカーは次々に新しいコンセプトのバイクを発売し続けていた。モンキーRもそんな自由なチャレンジができた、バイクブームの中で生まれた1台であると言えるだろう。
モンキーRは1980年代のバイクブームが生んだ、4ストロークエンジンを搭載したレーサーベースとも言えるバイクだ。
モンキーは1967年に初期型が登場したレジャーバイクの代名詞的存在で、現在は125ccが販売されている。
ゴリラはモンキーのバリエーションの中で最も有名な存在。9Lの大きなタンクや、大きめのシートなどを装備する。
モンキーRはいわゆる3/4サイズのミニレーサーレプリカと言われるジャンルに属していて、その元祖と言えるのはスズキが1986年に発売したGAG(ギャグ)であろう。このGAGはツインチューブタイプのフレームにバーディなどに搭載されていた空冷4ストロークエンジンを搭載し、フルカウルを備えた完全なレーサースタイルを持っていた。続けてヤマハからYSR50/80が登場、翌年にホンダからモンキーRとNSR50/80が発売される。
RGγやGSX-Rを生み出したスズキが作った3/4レーサーレプリカGAG。4ストロークの空冷エンジンを搭載していた。
ヤマハのYSRは50ccと80ccの二本立て。空冷の2ストロークエンジンを搭載し、12インチサイズのホイールを装着していた。
ホンダから登場したNSR50/80は、12インチホイールの車体と水冷の2ストロークエンジンを搭載した最強モデルだった。
各社からこの3/4サイズのレーサーレプリカが出揃ったことで、ミニバイクレースも盛んに行なわれるようになり、実際にここから世界GPへと参戦するライダーを生み出す土壌ともなった。モンキーRもそのベースとして使われたが、人気はよりパワフルな2ストロークエンジンを搭載したNSRの方が高かった。その結果としてモンキーRは短命に終わってしまったが、後にその価値が認められて現在はプレミアが付く車種となっている。
4.5PSの12Vカブ系エンジンを搭載
モンキーRのデザインは低く構えたスワロータイプのハンドルバーを装着し、ツインチューブフレームの部分でカットされたレーサー風のタンクデザインを持つ。シートはレーサー風に後ろ側が盛り上がったデザインで、右側にはシートに沿うようにアップタイプのサイレンサーが装着される。フロント周りにカウルの類は装着されず、シンプルな丸目のヘッドライトが取り付けられている。今で言えばストリートファイターと呼ぶべき構成だが、この時代にはその呼び名はまだ無かった。
モンキーRの低く構えたデザインは、今見てもスポーティでまとまりが良い。
赤くペイントされたスワロータイプハンドルは、かなり前傾したレーシーなポジションを生み出している。
シンプルな一眼タイプのメーター内にインジケーター類を収め、右横にキーシリンダーを配置する。
フレームのラインでスッパリとカットされた、レーサー風デザインのフューエルタンクは容量7L。
後端が大きく盛り上がったレーシーなデザインのシートは、シャープなリア周りのデザインを生み出している。
メッキカバー付きのサイレンサーはアップされたデザインで、シートに沿うように配置されている。
ベーシックな丸型の一灯タイプヘッドライトだが、肉抜きされたヘッドライトステーを採用するなどレーシーな仕立てだ。
テールライトはシートに埋め込まれたようなデザイン。「R」が大きく入ったリアフェンダーもいい雰囲気だ。
搭載されるエンジンは12VのCDI仕様となったカブ系ベースで、4ストローク空冷SOHC2バルブ49ccだ。同時期のモンキーには3.1PS仕様のエンジンが搭載されていたが、専用のバルブやカムシャフト、キャブレターやエキゾーストシステムを備えたモンキーRのエンジンは4.5PS仕様であった。ミッションはモンキーと同じ4速ながら専用設定となっており、モンキーの1速 2.692/2速 1.823/3速 1.300/4速 0.958に対して、1速 3.272/2速 1.937/3速 1.350/4速 1.090という変速比を採用。モンキーは1992年に12VのCDI仕様へとモデルチェンジされ、3速までの変速比もこの時にモンキーRと同じ設定に変更されている。
エンジンは4.5PSと、カブ系の50ccエンジンの中ではハイパワーなチューニングが施されている。
ベアリング付きのカムシャフトや専用のポート形状などを採用し、レースを意識したバッテリーレス仕様となっている。
エンジンのベースは実はモンキーでは無く、12V電装でCDI化されていたスーパーカブだ。
モンキーRの特徴のひとつに、基本的にバッテリーレスの電装系がある。「基本的に」と書いたのは、キーをONにした時にニュートラルランプなどを点灯させるためだけに、2Vのカードバッテリーを搭載しているためだ。こうした部分は、「R」という名前を冠する以上妥協のない作りを目指した、当時のホンダ技術陣の気概を感じる部分である。
各部にはホンダのレーシングスピリッツが宿る
モンキーRのフレームや足回りは排気量アップや大径キャブレターの装着なども考えられた作りになっており、言ってみればモンキーのメーカー純正レーサーと言えるものであった。
フレームはスチール製のツインチューブタイプで、NSR50/80のフレームをこれをにしている。スイングアームもスチールながら角形を採用し、リアサスペンションはリンクを介さない直付けのモノショックタイプタイプとされている。フロントフォークはインナーチューブ径30mmの正立タイプで、油圧ダンパータイプとなる。
フレームはスチール製だが、剛性の高いツインチューブタイプ。NSR50/80もこのフレームの発展型を使用している。
ホイール径はモンキーの8インチに対して10インチを採用してチューブレス化、ブレーキはリアはドラム式だがフロントにはディスクブレーキを採用している。その他、アルミ製のステップ周りやインナータイプのリアフェンダーなど、スポーツバイクをアピールするには充分な装備が与えられていた。
30mm径のフロントフォークに10インチホテイール、そしてディスクブレーキと、50ccとしては豪華なフロント周り。
スチール製の角形スイングアームと、モノショックを組み合わせるリアサスペンション。リアブレーキはドラム式だ。
1988年にはこのモンキーRをベースにし、アップハンドルやアップフェンダーなどを装備し、オンオフタイヤを履いたモンキーRTもラインナップ。このモンキーRTは、楽なポジション+リアキャリアを装備するなどツーリング志向のモデルであった。しかし、このニ車種とも1990年までには生産が終了しており、モデルとしては共に短命に終わってしまった。ただ、モンキーRのミニバイクの域を超えた各部の作りには、ホンダのレーシングスピリッツが宿っているのである。
モンキーRのスポーティなデザインはどこか未来的でもあり、今の時代に125cc仕様で出せば意外とヒットするかもしれない。
アップハンドルを装着して登場したモンキーRTは、モンキーRをベースにしたレジャーバイクだ。
モンキーR主要諸元(1987)
・全長×全幅×全高:1510×610×800mm
・ホイールベース:1055mm
・シート高:650mm
・乾燥重量:67kg
・エジンン:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒49cc
・最高出力:4.5PS/8500rpm
・最大トルク:0.42kgm/6500rpm
・燃料タンク容量:7L
・変速機:4段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=3.50-10、R=3.50-10
・価格:15万9000円(当時価格)
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