2022年に登場したホンダ「ダックス125」は、かつて人気だったDaxシリーズが大きくなって復活したレトロスタイルが特徴。小さいタイヤに低いフレーム、小柄なライダーにも優しそうなスタイルが気になる人も多いハズ。実際に乗ってみて、足つきやディテールをチェックしてみた。
ダックスフントみたいなシルエットを太いタイヤと低いフレームで実現!
ダックスの名前が初登場するのは1959年のことだが、当時からそのイメージはほとんど変わらない。何より特徴的なのが、プレス成型された独特の細長いフレームだ。一般的なバイクの燃料タンクをなくしたようなシルエットに加え、ファットサイズなタイヤを前後に装着。それでいてホイールサイズも小さいので、胴長~な印象だ。それが「ダックスフント」に似ていることから、名前の由来にもなった。
そんなダックス、当初は50ccのファンバイクとして人気を博しつつ、1979年に一度生産を終了。当時はミニサイズのバイク人気がとても高く、ダックスに似たバイクも多く各社から発売されていた。ところがダックスには根強いファンが長く残り、1955年にはかつてのスタイルをもとに、性能や仕様を強化して復活。つまり、今回紹介する現役のダックス125は、2度目の復活を遂げた姿なのだ。
そんな現在のダックス125だが、特徴的なスタイルはそのまま。プレスフレームや分厚いロングシート、アップマフラー、そしてワイドサイズのタイヤで、往年のファンも納得のレトロかわいいスタイルを実現している。しかし排気量は、当時の50ccから大きくアップした123ccの原付2種となった。これは「モンキー125」に先行して採用されている空冷単気筒エンジンをベースにした、最高出力9.38PS(6.9kW)を発揮するパワフルなもの。このためスタイルこそ昔のままながら、車体は全体的にひとまわり大きくなり迫力が出た。高速道路にこそ乗れないが、最高速度は60km/h、二人乗りもできるようになったので、大きくタフになったのは当然だ。
ロータリーシフトで初心者のハードルもぐっと下がった
ディテールを見てみよう。エンジンはモンキー125譲りのものとはいえ、大きく異なる点がひとつある。それはシフトパターンが、モンキーの5速リターンから遠心クラッチ式の4速ロータリーに変更されていること。つまりダックス125にはクラッチがなく、スーパーカブでおなじみの、踏み込んだらシフトアップ、踏み続けるとニュートラル、というパターンになっている。このためシフトペダルもカブ同様、カカトで踏み込んでシフトダウンができるシーソータイプが採用されている。クラッチがないことでエンストの心配はほとんどなく、シフトチェンジも簡単なため、初めてマニュアルバイクに乗るぞ! というライダーにも安心できる要素だろう。また、オートマ限定免許でも運転が可能なのも嬉しい。
フレームに目を移すと、スチール製のプレスフレームは美しく塗装され、ウィングマークのエンブレムが輝く。もしもバイクに乗ったことがないビギナーなら、「あれ、燃料タンクはどこだろう?」となるレイアウトだが、こちらもスーパーカブのように、シートを持ちあげると燃料キャップが出現。シート下が燃料タンクになっているのだ。このためスクーターのような収納スペースはなく、車載工具や書類はサイドカバーの中にしまう。スッキリしたスタイルの実現のため、タンクはやや小さめの3.8Lとなっている。
マフラーはアップタイプで、オフロードバイクのような雰囲気を見せているが、タイヤは一般的なオンロードタイヤなので、オフロードへ突っ込むのは難しそう。ホイールサイズは前後ともに12インチ、タイヤ幅はフロント120、リア130で、これはモンキー125と同サイズとなる。サスペンションはフロントに倒立フォークを採用。リアショックはプリロードの調整が可能なツインショックで、荷物やタンデムの有無に合わせることができる。ブレーキは前後ともに油圧ディスクで、もちろんABS付きだ。
灯火類はフルLEDとなり、小ぶりだが光量は十分。メーターはデジタル1眼で、スピードと燃料計のみがわかるシンプルなデザインだ。このスタイルはモンキー125、ハンターカブなども同様となっている。スイッチは非常にシンプルで、右手側にはセルスターターボタンのみ。左手側にハイビーム、ウィンカー、ホーンの3つのボタンが並ぶだけで、直感的な操作が可能となっている。また、遠心クラッチのためクラッチレバーがなく、ますますスッキリした印象だ。
重心が低く、軽くてラクラクな足つき! 接地感覚も強くてコーナリングが怖くない
跨ってみると、最初はその分厚いロングシートのせいで、わずかに腰高な印象だ。ハンドルはアップで近く、自転車のような腕の高さ。しかし車体を起こすと、その軽さにちょっとびっくり。フレームといいエンジンといい、重いパーツ
が車体の下の方に集まっているため、重心が低く起こしやすい。12インチのホイールの小ささもその印象に一役かっているようだ。
シート高は775mmと、「とても低い!」というほどではない。スーパーカブ110が738mmだから、むしろちょっと高いくらいだ。モンキー125とは同数値となっている。しかし、足つきはその数値ほど高くは感じない。細いフレームと高いハンドル位置で、無理な姿勢をとらなくてもいいためだろう。両足を下ろすとカカトは浮くが、不安定感はゼロ。もちろん片足を上げれば、立ちごけするという気は全然しない。そして重量感がないため、ふらふらしないのもポイントだ。
こりゃきっと楽しいぞ! という印象通り、運転してみるとコーナリングがスイスイできる楽しいハンドリング。遠心クラッチの「ガチャン! ガチャン!」という感覚は慣れるのに少し時間がかかるが、慣れてしまえば半クラッチのコントロールもラクラクだ。トルクフルなエンジンとワイドなギアで、多少高いギアで低速に落としてしまっても、エンストすることはなく粘ってくれるのも、オートマになれた人でも安心できる要素だろう。さらにタンデムを見越したロングシートの座り心地は抜群。体重に合わせて沈み込んでくれ、路面のギャップもやさしく吸収してくれる。シングルシートのスーパーカブとは違い、お尻の位置を自由に前後できるのも、体格に合わせたポジション選びに役立つ。
個性的なカタチを街で見かけて、「乗ってみたいなー」と思う人も多いだろうダックス125。それがもし初心者だったとしても、なんの心配もいらないと太鼓判を押せる乗り心地だった。通勤&通学のお供に、可愛いダックスを連れて行くのも楽しいだろう!
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