ヤマハのスポーツツアラー・トレーサー9シリーズのビッグチェンジが発表された。最大のトピックスはMT-09シリーズ、MT-07シリーズに続き電子制御シフト機構のY-AMTを「トレーサー9Y-AMT」と「トレーサー9GT+」に導入したこと。ただシリーズ通してもスマートキーや世界最先端のオートバイ用ヘッドライトシステム「アダプティブ マトリックス LED ヘッドライト テクノロジー」を搭載。セミアクティブサスペンションを装備したトレーサー9GT&トレーサー9GT+系は電動調整式ウインドスクリーンも搭載することになった。
目次
2023のACC仕様追加に続き、2024はY-AMT仕様が登場
2021年にビッグチェンジを行い、2023年はヤマハ初のアダプティブクルーズコントロールを搭載したトレーサー9GT+が登場したばかりのトレーサー9シリーズの2025モデルが10月30日に発表され、一部の仕様にY-AMTを搭載することが発表された。
トレーサー9シリーズは、MT-09の890㏄並列3気筒エンジン&アルミフレームをベースにスイングアームを延長し、よりツアラーらしい走行性能と大型スクリーンなどの快適性能を備えたスポーツツアラー。
日本国内では、2015年に登場したトレーサーシリーズ(MT-09トレーサー)。2018年には現在と同じ1500㎜のホイールベースを手に入れ、2021年にはセミアクティブタイプの電子制御サスペンションや6軸IMUを搭載するビックチェンジを実施。2023年はヤマハ初のアダプティブクルーズコントロールを搭載したトレーサー9GT+も登場している。
なお、日本国内ではトレーサー9GTとトレーサー9GT+のみの発売だが、欧州では、これらに加え電子制御サスペンションを装備しないトレーサー9もあり、こちらにもY-AMTを搭載するモデルが登場。「トレーサー9」、「トレーサー9Y-AMT」、「トレーサー9GT」、「トレーサー9GT+」の4機種にラインナップを増やすことになる。なお本稿では、主に日本国内で発売が見込まれるトレーサー9GTとトレーサー9GT+についてみていくことにする。
世界最先端のオートバイ用ヘッドライトシステムに加え、シートフレーム延長でよりボリューミーに!
まず、スタイリングに関しては既存モデルのイメージを引き継ぎながらも、かなり全体的なボリューム感がアップしている。これはまずヘッドライト下部に世界最先端のオートバイ用ヘッドライトシステムのためのカメラや4つの光源が追加されことが大きいだろう。次に燃料タンク右側には、USBソケットを備えた小物入れを追加。
このほか、ハンドルバー、フットレスト、座席配置も変更され、よりライダーとパッセンジャーの快適性がアップしているという。とくにパッセンジャーシートに関しては、サブフレームは50㎜延長されたことで座面面積が増加。ライダーシートもより平らになり、パッドを増やし快適性をアップ。シート高が845㎜に増えているものの、シート前部をよりスリムに形状変更したことで、ほとんどのライダーが従来モデル(シート高:820㎜)より乗りやすく感じるようになっているという。
従来モデルは足着き性に関してMT-09ほど気軽でなかっただけに、このシート高変更は気になるところ。ただヤマハによれば、シート高は25㎜もアップしているが従来モデルより足着き性がよくなっており、“特に身長の低いライダーにとっては、より安心感と自信を抱かせます”と言及しているところがとても気になるところだ。
また2025モデルはフロントフォークブラケットを作り変えることでディメンションも見直されており、キャスター&トレールが24°25′&106㎜となり(従来モデルは25°&108㎜)へ。またハンドル切れ角が増えたことで最小回転半径が3.1mから2.9mに。車体のボリューム感は増したり、シート高がアップしていたりするものの、2025トレーサー9シリーズはより扱いやすく進化していそうだ。
新採用の“アダプティブ マトリックス LED ヘッドライト テクノロジー”とは?
気になるのは、トレーサー9GT および トレーサー9GT+ に採用されることになった世界最先端のオートバイ用ヘッドライトシステム「アダプティブ マトリックス LED ヘッドライト テクノロジー」である。なんとヘッドライト部分にカメラを備え、周囲の交通、自然光源、気象条件を自動的に検出。複数のロービームおよびハイビームのLED光源の明るさと光の分布を動的に調整することで、常に最適な照明を提供するという。すごいのはカメラで対向車などを把握し、眩惑を起こさないように光を分散させながら、照明領域を調整するところ。
もちろん従来からのコーナリングライトは、シリーズ全てに搭載されており、7度以上の傾斜角が検出されると自動的にコーナーのイン側を照らし出すようになっている。
また、ACC機能を備える最上級モデルのトレーサー9GT+には、ミリ波レーダーを前方に加えさらに後方にも装備し、ブラインドスポットディテクション(死角検知)機能が追加された。この機能は後方のミリ波レーダーが後続車を検知し、バイクの「死角」に車両が存在する場合、バックミラーに内蔵されたインジケーターが点滅してライダーに通知する機能。すでにドゥカティやカワサキ、トライアンフのモデルも採用している機能であるが、ヤマハとしては今回初採用となる。
エンジンはそのままにY-AMT仕様を追加
最高出力や最大トルクの主要諸元を見る限り、890ccの並列3気筒エンジンは従来モデルとの変更はないが、やはり気になるのはトレーサー9 Y-AMTとトレーサー9GT+に搭載される電子制御シフト機構Y-AMTだろう。
クラッチレバー操作とシフトチェンジペダル操作が必要なく、完全なオートマチック変速が可能なほか、左スイッチボックスのシーソーボタンによるマニュアル変速が可能な機能で、MT-09シリーズ、MT-07シリーズに続く3機種目の採用となる。
モードに関しては、ベースを同じくするMT-09 Y-AMT同様、電子制御シフトに関してはマニュアル操作のMTモードと自動変速のATモードがある。またATモードには「D」と、「D+」の2つのモードがあるのも一緒。ただより快適性や疲労軽減が求められるスポーツツアラーの分野だけに、トレーサー9GT+への搭載は順当と言えよう。
ちなみに各モードのフィーリングに関しては、「D」モードが“通勤や、ライダーがよりリラックスした乗り心地を楽しみたい旅行に最適で、よりソフトで自信を高める完全自動化されたギアシフトを提供し、低速および市街地走行に役立つ”。「D+」モードは、“各ギアをより長く保持し、必要に応じてエンジンブレーキを強化して、より強力な加速とより爽快なライディング体験を提供する”、とのこと。またミリ波レーダーを備えるトレーサー9GT+の場合、アダプティブクルーズコントロール(ACC)やレーダー連動UBSとY-AMTの協調具合もとても気になるところだ。
トレーサー9GT[2025 欧州仕様]主要諸元
・全長×全幅×全高:2175×900×1530mm
・ホイールベース:1500mm
・シート高:845-860mm
・車重:227kg【232kg】
・エンジン:水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ 890cc
・最高出力:119PS(87.5kW)/10000rpm
・最大トルク:9.5kg-m(93Nm)/7000rpm
・燃料タンク容量:19L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=Wディスク R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17 R=180/55ZR17
※【 】内はY-AMT搭載のトレーサー9GT+の仕様
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