2013年、「スーパーカブ110」のアドベンチャーテイストとして登場した「CrossCub 110(クロスカブ110)」。排気量、コンセプトともに「CT125ハンターカブ」と比較されがちな本機だが、乗ってみると全然違う個性に驚き! 今回はその現行モデルの足つきやディテールをチェックしてみた。クロスとハンター、どっちにしようかな? と悩んでいるライダーには是非とも読んでもらいたい!
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7年間で唯一の「オフロードカブ」重機っぽいハードテイストは初代から継続
2009年、インジェクション化と大排気量化を果たし、それまでのビッグカブ・スーパーカブ90が進化。スーパーカブ110として生まれ変わった。このスーパーカブ110の装備に、アウトドアテイストの装備を追加したのが「クロスカブ110」だ。エンジンやフレームはほぼカブ110と共通だが、別体メーターやヘッドライトガード、スプリングが剥き出しのリアショックに、フォークブーツを備えたフロントフォークなど、カワイイシルエットのカブとは一線を画するゴツさ。ホイールが前後17インチというサイズは同じだが、2.75インチ幅というワイドなタイヤを履き、まるで重機のごとく悪路走破性の高そうな雰囲気に仕上がった。
その後2020年まで、クロスカブは灯火類のLED化などアップデートを重ねつつ、ラインナップ唯一の「オフロードスタイルのカブ」として、兄弟機クロスカブ50と共に人気を博した。ところが2020年、ホンダから最大のライバルである「CT125 ハンターカブ」が登場。往年の名機の名を冠し、アップマフラーやエアインテークなど本格的な冒険装備が充実しているうえ、排気量も大(つまりパワーも大)。ハンターカブは一気にクラス最高の人気モデルに躍り出る。しかしクロスカブがお役御免になったわけではなく、その後もラインナップは継続中。カブ110の進化に合わせ、ディスクブレーキやキャストホイールの装備など、ディテールを進化させながら現在に至っている。
この装備はオフロードというより……ツーリング装備だ!
ディテールを見てみよう。今回試乗したクロスカブ110は2024年の最新型で、2022年以来新たにABSをフロントブレーキに装備、エンジンをロングストロークに改良した仕様だ。パワーはスーパーカブ110同様で、8PS/7500rpmを発揮。タイヤサイズも前後80/90-17と、これもカブと同じサイズを採用している。しかしアップハンドルなどの影響で車体サイズは僅かに大柄で、全長は1935mmとカブよりも約75mmロング。ホイールベースも長めに取られており、シート高も784mmと、738mmのカブから46mmも高くなった。
ディテールは初代を踏襲する部分も多く、フレームやシート周りはカブと同様ながら、ハンドルはアップライトなバーハンドル。メーターは別体のアナログ/デジタルメーターで、速度のほか燃料計やシフトインジケータを備える。マフラーの形状はシンプルなストレートだが、細かな放熱穴が多いデザインはカブとは異なるポイントだ。さらにミニマムなヘッドライトには、初代ゆずりのパイプガードを装着。初代ではただのガードだったこのパーツ、現在では小型の荷物を積載できるフロントキャリアの役割も持っている。
サスペンションも差別化されており、リアショックはスプリングが剥き出しの野趣あるスタイルをとり、フロントフォークにはブーツを標準装備。前後フェンダーにはマッドフラップも備える。フロントブレーキはABS付きの油圧ディスクだが、リアはカブ共通のドラムブレーキだ。ドラムブレーキとなると、ABSの装着が難しいため現行機ではあまり採用されていない機構だが、本機の107kgという軽量なボディには十分な制動力を発揮。それなりの急制動もこなすことができいる。
これらの装備は全体的にオンロード指向であり、オフロードのガチンコ走行は難しいかもしれないが、それでも独特の存在感を放つのは間違いない。
足つきとハンドリングはハンターカブより素直!オンロードならコッチで決まりだ
ディテールを見るとわかる通り、クロスカブ110はガッツリとオフテイストのハンターカブとは違い、マイルドなスーパーカブの雰囲気を残したマシンといえるだろう。それは足つき性にも言え、実際に跨ってみるとかなり低いシート高で安心感抜群。スーパーカブからは46mmも高い設定のハズだが、165cmの身長では違和感なく両足とも接地は余裕だ(ただしカカトは浮く)。ちなみにハンターカブはシート高800mmで、その辺のロードスポーツより高く、さらにアップマフラーで足が開かれてしまうため、両足をつけるととても不安定になった。小柄なライダーにはクロスカブの方が、立ちごけや取り回しの怖さは少ないだろう。
実際に乗ってみると、これも面白いことにハンターカブよりもクロスカブのほうが「乗りやすい」と感じたから不思議だ。スペックだけ見れば、ハンターカブのほうが排気量もありパワフルで、フレームの剛性もあるハズだ。なぜだろうと思ったところ、その答えはハンドルにあった。クロスカブはヘッドライトをフレームマウントしており(スーパーカブ プロと同じだ)、ハンドルの重さ、抵抗が全然ないのである。ハンターカブは一般的なネイキッドよろしく、ハンドルにメーターやヘッドライトが据え付けられており、ハンドリングはやや重い。もちろん重量差でみればわずかなものだろうが、「素直で自然なハンドルの感覚」はクロスカブの方が大きく、コーナリングをスイスイと楽しむことができた。むしろ排気量が小さいからこそ、こういう細かな設計の違いを感じられるのかもしれない。
さらにクロスカブ特有の装備、フロントキャリアを使うとなるとなおさら。これがハンドルに付属していたら、荷物を積むほど重くなり操作性が悪化しただろうが、フレームマウントであることで、どれだけ積んでも違和感のないハンドリングが得られるのだ。新聞配達で活躍するスーパーカブ プロの血脈といえようか、タフユースに耐えるカブらしい武骨さを感じる設計といえるだろう。
ツーリングライダーである私にとって、クロスカブは非常に「しっくりくる」カブであることは間違いなかった。普段は通勤&通学で軽い乗り心地とラクなカブのフィーリングを楽しみ、週末は荷物満載して遠くへ繰り出したいツーリスト……そんな生活にきっとよく似合うのがクロスカブなのだ!
クロスカブ110[2024]主要諸元
・全長×全幅×全高:1935×795×1110mm
・ホイールベース:1230mm
・シート高:784mm
・車重:107kg
・エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 109cc
・最高出力:8.0PS/7500rpm
・最大トルク:0.9kg-m/5500rpm
・燃料タンク容量:4.1L
・変速機:4段リターン(停止時はロータリー)
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=80/90-17、R=80/90-17
・価格:30万8000円
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