KTMがセミオートマ新機構「KTM AMT」を発表! シフト操作が一切不要な完全自動のオートモードと、左ハンドルのパドルシフトなどで任意のギアが選べるマニュアルモードを設定。また、自動停止機能を持つ最新のクルコン「ACCストップ&ゴー」との連携も可能とするなど、多用な機能を持つことが特徴だ。アドベンチャーツアラーの「1290スーパーアドベンチャー」の最新型に搭載され、2024年11月イタリア・ミラノ開催の2輪車見本市「EICMA 2024」に登場することが予想される。

KTM AMTとは

ヤマハY-AMTやホンダのE-クラッチやDCT、BMWのASAなど、世界中でスポーツバイクのセミオートマ化が進む中、KTMでもかねてから開発中との噂があり、ついに正式発表されたのが「KTM AMT」だ。

AMTとは、Automated Manual Transmission(オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)の略。いわば「自動化したマニュアルミッション」という意味で、クラッチ操作が不要なマニュアルモードと、アクセルとブレーキ操作のみで、シフト操作を一切不要にしたオートモードが選択できる。

マニュアル操作は指か足かを選べる

主な特徴は、まず、マニュアルモードでは、クラッチレバーの操作を不要としていること。そのため、左ハンドルにクラッチレバーはなく、代わりに変速操作が可能なパドルシフトを装備する。

このあたりは、ヤマハY-AMTやホンダのDCTと同じなのだが、違うのが車体左側のシフトペダル。Y-AMTやDCTではシフトペダル未装備だが、KTM AMTは従来からのオーソドックスなシフトペダルもそのまま残す。そのため、いわゆるクイックシフター的な操作も可能で、この点は、ホンダE-クラッチに近いといえる。

つまり、KTM AMTでは、マニュアルのシフト操作について、パドルシフトを使って左手の指で行うか、シフトペダルを使い左足で行うかを選べるのだ。この点から、この新機構が、より幅広いライダーの好みにマッチさせていることがうかがえる。

ちなみに、KTM-AMTは、シフトパターンもユニークだ。一般的な「1-N-2-3-4-5-6」といったタイプではなく、「P-N-1-2-3–4–5–6」という形式を採用する。

この方式では、「P」が追加されていることが分かるが、これは「パーキング」の略。坂道などの駐車時に、バイクが動かないようにするための装備だという。なお、PとN(ニュートラル)の切り替えは、これも左ハンドルにあるパドルシフトを使って行う。

オートモード時はアクセルとブレーキ操作だけ

一方、完全にシフト操作を自動化するオートモード。こちらは、ギア位置、エンジン速度、エンジントルク、傾斜角、加速度、車両速度、ピッチ角など、さまざまな車両情報を基に、バイクが適切なギアを自動で選択するという。

また、ライダーは、「COMFORT(コンフォート)」「STREET(ストリート」「SPORT(スポーツ)」といった3つのモードを選択可能。各モードでは、走行状況などに応じて、バイクが最適なシフトチェンジを自動で行う。

ちなみに、オートモードの作動中に、左ハンドルのパドルシフトを使えば、マニュアルモードに切り替えることも可能だ。この場合、完全自動のオートモードは約4秒間抑制され、その後アクティブなオートモードに戻る設定となっている。

ほかにも、オートモード作動中にスロットルをワイドオープンすると、システムがキックダウン機能をアクティブにし、より低いギアへ自動変更する機能なども採用する。高速道路などで追い越しをする場合などに、さらに鋭い加速力を発揮することができる機能だ。

ACCストップ&ゴーとの連動で安全性も向上

KTM AMTは、ボッシュが開発した新しい安全支援装備「ACCストップ&ゴー」と連携することもトピックだ。

ACCは、Adaptive cruise control(アダプティブ・クルーズコントロール)の略。高速道路などで設定速度を維持し、車間距離を自動で保持しながら先行車を追従する先進安全装備だ。2輪車では採用例がまだ少ないものの、KTMでは、他メーカーより比較的早く導入。2021年型の1290スーパーアドベンチャーにボッシュ製システムを導入している。

ただし、ボッシュ製をはじめとする従来のバイク用ACCでは、渋滞などで先行車が停止した場合、操作はライダーが自ら行う必要があった。30km/h以下の速度域では機能が解除されるからで、4輪車でいうところの渋滞追従機能または全車速追従機能は付いていなかった。

一方、2024年9月にボッシュが発表したACCストップ&ゴーでは、先行車が停止すると、システムが自動で減速しバイクも停止。先行車が3秒未満で再び発進すると、バイクも自動的に加速し発進を開始する。また、先行車の停止時間が3秒を超える場合は、ボタンを押すかスロットルを短く操作するだけで、バイクが追従走行を再開するという機能も持つ。

そして、KTM AMT搭載車であれば、こうしたACC作動中の自動停止でも、クラッチやシフト操作が不要。走行中から停止まで、ライダーはバランスを取ることに集中できるため、より安全性が向上するのだ。

こうした点から、ACCストップ&ゴーは、セミオートマ機構や(スクーターなどの)オートマ機構を搭載したバイクを前提とした機能だといえる。逆にいえば、KTM AMTは、最新の先進機能との連携も視野に入れて開発された新機能なのだろう。そして、これらが相互に関連し合うことで、ライダーの操作や疲労をより低減してくれる効果を期待できる。

ハードな悪路でのスポーティな走りにも貢献

KTMによれば、新しいAMTは、一般的なツーリングでの快適性アップだけでなく、レースなどスポーティな走りにもかなり貢献するという。

そして、それをアピールするために、KTMの公式Youtubeチャンネルでは、フランスの有名エンデューロライダーであるジョニー・オーベール選手が、KTM AMTを搭載するプロトバイクの走行シーンも公開している。

動画に登場するKTM AMT搭載マシンは、車体をカモフラージュしているが、おそらく1290スーパーアドベンチャーだろう。オーベール選手は、このマシンを駆り、KTMの本拠地であるオーストリアのワインディングなどを快走。また、ハードエンデューロで有名なエルツベルクロデオのコースで、迫力の走行シーンを披露している。

この動画を見る限り、アップダウンや激しい凹凸などのある悪路走行でも、KTM AMT搭載車であれば、アクセルやブレーキ、車体バランスなどの操作に集中でき、バイクをスポーティに走らせることができることが分かるのだ。

普通のツーリングからハードなスポーツ走行まで、幅広いシーンで役立ちそうなのがKTM AMT。搭載車は、この動画を見る限り、まずは、新型の1290スーパーアドベンチャーになることは濃厚。2024年11月にイタリア・ミラノで開催される2輪車見本市「EICMA 2024」で正式発表されることが予想できる。

また、KTMでは、ほかにも、さまざまなモデルにKTM AMTを搭載することを公表しているので、今後の展開にも注目だ。

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