半世紀以上の歴史を誇るホンダ最古のスポーツモデルシリーズ「CB」。そこにスーパースポーツ譲りのフレームとエンジンを持ち込み、その後のシリーズの行方を変えたのが1989年登場の「CB-1」だった。ホンダ本社に展示されていた車体でディテールを紹介したい。

名機ゼファーとほぼ同時に登場したネイキッドスポーツ

1989年当時、日本のライダーに大きなインパクトを与えたモデルが登場していた。カワサキから発売された「ゼファー」だ。このゼファーが人気沸騰したことで、それまでライダー人気の本流だったレーサーレプリカブームは勢いを落とし、ネイキッドブームが到来したと言われる。しかし、この年に登場したのはゼファーだけではない。ゼファーよりも1か月早く発売された、ホンダの斬新な新型ネイキッドモデル「CB-1」も、後の400ccクラスに大きな影響を与えたモデルだった。

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ゼファーとCB-1は、タイミング、排気量こそほとんど同じだったが、そのコンセプトは全く違っている。CB-1が搭載しているエンジンは「CBR400RR」に採用された直列4気筒DOHCをベースとし、クラス最高レベルの57PS/11,500rpmのパワーを発揮。カムギアトレインによるなめらかな高回転で、エンジン性能はフルカウルスポーツに引けをとらない。直線基調の42.7mmの太い炭素鋼管製ツインダイヤモンドフレームにこのエンジンを積み、剛性の高さも十分。エキゾーストは4into1の集合排気を採用している。

サスペンションやブレーキといった足回りはCBR400RRとは違い、ややカジュアルに見直されているが、大径310mmのフローティング式シングルディスクブレーキや、バルブ制御システムCIVS-II(カルボン・インプルーブド・バルブ・システム)を内蔵するモノショックなど、贅沢なもの。ホイールは前後ともに17インチに見直されており、3本スポークのアルミ製で軽量さを追求した。

そんな性能と装備を見てもわかるとおり、CB-1はスポーツライディングを楽しむためのネイキッドモデルとして設計されている。ゼファーが古典的な空冷エンジンを搭載し、復古調の楽しみを目指したのとは正反対だと言っていいだろう。シンプルで高性能、かつ余計なものを備えず、メカニカルな魅力を主張するネイキッドで速く走る、そんなコンセプトのモデルだったのだ。ただ、現代の視点でCB-1のディテールを見ると、シンプルといいつつ非常に細やかで高級感あふれる仕上げに驚いてしまう。サイドカバーやトップブリッジに採用されているアルミパーツには、随所にヘアライン仕上げが施されるほか、シリンダーヘッドやエキゾーストパイプ、サイレンサーはバフ仕上げで輝く。単色に見える燃料タンクも、実は3層もの多重ペイントにより、深みのある光沢を放つよう製作されているのだ。

CB400SFのために道を拓いたCB-1

そんな高品質&高性能を誇るCB-1だったが、当時の400cc市場はゼファーに軍配を上げた。ゼファーよりも10万円以上高い価格で、CBRほどレーシーな装備ではないCB-1は、残念ながら人気が出ずに燻ぶった。そこでホンダは1990年、別体式タンクのリアショックや作動性が向上したフロントフォークを備えるマイナーチェンジを加え、さらに91年にはアップタイプのバーハンドルを装備し、ギアレシオを中低速に振ったCB-1 TypeIIを発売しテコ入れを図っている。しかしそれらの改良の甲斐なく、CB-1は92年には後継機に席を譲ることとなった。

この後継機というのが、400ccネイキッドの代表と言える人気を誇ることとなった「CB400 SuperFour」だった。CB-1と同じデザイナーが手掛けたシルエットは、CBシリーズの新機軸を狙う「PROJECT BIG-1」として結実し、スポーツ走行からツーリング、ストリート、そして教習所でも活躍する万能機として愛された。CB-1が果たせなかった次世代CBの勇躍は、CB400SFに受け継がれたのである。モデルチェンジを繰り返しながら、CB400SFは2020年までラインナップを継続する大人気モデルとなったのだ。

現代、400ccラインナップが各社カタログ落ちしていく中、直列4気筒モデルの人気は高まり続けている。しかしゼファー、CB400SFといった名機は往年の人気で今なお入手するのは難しくないが、CB-1は絶対数が少ないために希少な車両だ。今こそ注目したい名機のひとつとして、オーナーは大切にしていただきたい。

CB-1[1989]主要諸元

・全長×全幅×全高:2035×705×1025mm
・ホイールベース:1375mm
・シート高:775mm
・車重:183kg
・エンジン:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 399cc
・最高出力:57PS/11500rpm
・最大トルク:4.0㎏-m/9500rpm
・燃料タンク容量:11L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=110/70R17、R=140/70R17
・当時価格:64万6000円

スーパースポーツを脱がせた本物の「ネイキッド」だったCB-1 ギャラリーへ (20枚)

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コメント一覧
  1. スズメ より:

    はじめまして。
    先月、親父の親友さんの形見として受け継いで眠ってたcb-1を復活させたものです。

    バイク好きな方々には不人気車など色々言われましたが
    僕が生まれた年に登場し、登録月と誕生日が一緒
    ということもあり何か運命を感じ、
    親父と復活させてまた乗り出しました。

    そんな矢先にこんな記事を書いて頂き同じバイクを所有している身として大変感激です。

    これから壊れるところもあるかもしれませんが
    大事に、乗り続けたいと思います。
    励みになる記事、ありがとうございます。

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