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1980年台に登場した「3/4サイズ」などと呼ばれた原付/原付二種のスポーツバイクは、1970年代のレジャーバイクブームとはまた違った発展を見せた。カワサキZ125 PROは、そんなミニスポーツバイクの流れを受け継ぐ数少ない現行モデルである。
ミニスポーツバイクブーム
1986年にスズキから発売されたGAGとヤマハから発売されたYSR50/80は、10〜12インチの小径ホイールを履く、いわゆる「3/4サイズ」の原付/原付二種スポーツバイクブームを引き起こした。続いてホンダからは1987年にNSR50/80が登場し、本格的なミニスポーツバイクブームが巻き起こった。サーキットを走行するユーザーも増え、当時既に始まっていたレーサーレプリカブームを加速させることになった。1988年にはカワサキからはKS-I/II、ヤマハからはTDR50/80というデュアルパーパススタイルのモデルも発売されてミさらにニスポーツバイク市場を拡大した。
ホンダはNSR50/80を年次改良で進化させ続け、ヤマハは新たに水冷エンジンを搭載したTZM50Rを1993年に投入している。カワサキはKS-I/IIをフルモデルチェンジし、水冷エンジンや12インチホイールを装備したKSRI/IIを1990年に発売した。ただ、これらのバイクのほとんどは2ストロークエンジンを搭載していたため、排出ガス規制のために2000年頃までに生産中止となってしまった。
スズキのGAGは空冷4ストロークエンジンを、10インチホイールの車体に搭載。フルカウルを装着し、フロントにディスクブレーキを装着するなど装備は本格的だった。
ヤマハYZR50/80は12インチホイールを採用した車体に、空冷2ストロークのエンジンを搭載。ワークスレーサーYZR気分を、気軽に楽しめるバイクだった。
ホンダNSR50/80は、水冷の2ストロークエンジンを12インチホイールの車体に搭載。スペック的にはライバルを凌駕し、ミニバイクレースの主役となった。
デュアルパーパスモデルのTSRにも50/80を設定。RZ50系の水冷2ストロークエンジンを搭載し、スポーティなライディングが可能だった。
ライバルNSRと対等に勝負するために、水冷の2ストロークエンジンを新型のフレームに搭載。アルミ中空ホイールや、前後ディスクブレーキなどを装備したTZM50R。
KSR-I/IIは倒立フロントフォークや水冷2ストロークエンジン、12インチホイールなどを装備。街乗りやジムカーナなどで活躍した。
ミニスポーツバイクを未来に繋いだKSR110
カワサキは新たに4ストロークの空冷エンジンを搭載したKSR110を2003年に発売し、他メーカーがミニスポーツバイク市場から撤退する中孤軍奮闘を続けた。ホンダはNSR系の車体に4ストロークエンジンを搭載したNSF100を2005年に発売しているが、これはレース専用車であり公道仕様はラインナップされなかった。
ただ、このKSR100は遠心クラッチ仕様であり、実用車の色が強められていた。このKSR110もさらなる排出ガス規制の強化によって2009年で国内販売は終了したが、タイ工場での生産は続けられていた。2014年モデルでは、4速リターン式ミッションを与えられたクラッチ付きのKSR PROがラインナップに加えられた。
2015年KSR110/PROの実質的な後継モデルとなる、ストリートファイタースタイルを採用したZ125/PROが登場した。このZ125/PROはKSR110/PROのエンジンを3mmボアアップして124cc化して搭載、Z125は遠心クラッチ、Z125PROはマニュアルクラッチ仕様で搭載。デザインは完全に新しくなったが、車体周りの基本はKSR110/PROから受け継いでいた。
排出ガス規制に対応した空冷4ストロークエンジンを、KSRベースの車体に搭載。遠新クラッチを採用し、クラッチレスだった。
ミニスポーツバイクの最新形Z125
小型バイクの主戦場であるタイではホンダが2013年にグロムを発売し、日本にも同年から導入されていた。KSR110の生産中止後、日本のミニスポーツバイクラインナップは枯渇しており、そこに投入されたグロムは大きな注目を集めることとなった。このグロムのヒットは、日本のミニスポーツバイク市場で孤軍奮闘を続けてきたカワサキにとって見過ごすことはできなかったはずだ。2016年カワサキはZ125を国内に導入、日本仕様はマニュアルクラッチのZ125 PROのみとされた。
ホンダのグロムは、ミニスポーツバイク市場に新しい風を吹かせた。空冷4ストロークの123ccエンジンを搭載し、2人乗りが可能だ。
Z1000系のデザインを受けついたストリートファイタースタイルはコンパクトな車体に精悍さを与え、ツインスパーフレーム風のカバーがスポーティさを際立てる。メーターはアナログ式のタコメーターとデジタル式のスピードメーターを組み合わせたコンパクトにまとめられており、コクピットは今時のスポーツバイク仕立てになっている。
Z125PROのデザインは、兄弟車となるZシリーズの流れを汲むもの。KSRをベースとしながら、ストリートファイターへと転身した。
二人乗りをするためにリアセクションが延長され、結果としてKSRよりも一回り大きな印象を受けるリアビュー。
124ccに排気量アップされ、マニュアルクラッチとなったことでスポーティなライディングが可能。軽快さもあり、街中や峠道などでその実力を発揮する。
Z125 PROに搭載されるエンジンは元々はミニモトクロッサーKX110に搭載されていたものがベースになっており、先にも触れた通り3mmのボアアップによって124ccまで排気量アップされている。フューエルインジェクション化することで排出ガス規制に対応し、最高出力はKSR110の6.3kW(8.6PS)から7.1kW(9.7PS)に、最大トルクも8.6N・mから9.6N・mへとアップしている。ミッションは4速のマニュアルで、スポーティなライディングが可能だ。ただ、装備の充実によって、車両重量はKSR PROの95kgから102kgへと増加している。車体はスチール製バックボーンフレームをベースに、フロントには倒立フロントフォーク、リアにはオフセットレイダウンシングルショックを組み合わせる。ホイールサイズは12インチで、前後のディスクブレーキにはペータルディスクが奢られている。Z125 PROになってKSR110と最も大きく変わった点は、それまで1人であった乗車定員が2人になり、タンデムライドが可能になったことだ。シートは後ろ方向に延長されたデザインになっており、折りたたみ式のしっかりとしたタンデムステップが装備されている。
ライバルのグロムが既に3回のモデルチェンジを行なっているのに対して、登場から大きなモデルチェンジが行なわれていないZ125 PROだが、それだけ完成度が高いということができるのかもしれない。Z125 PROはビギナーからベテランまで楽しめるバイクの魅力が詰まったモデルであり、今後はパワーを4.0kW以下に抑えた原付免許仕様の登場にも期待したいところだ。
ライバルグロムの現行モデル。ホンダが50ccの生産中止を発表したため、2025年から始まる新しい原付免許用のモデルが用意される可能性が高い。
Z125 PRO主要諸元(2021)
・全長×全幅×全高:1700×750×1005mm
・ホイールベース:1175mm
・シート高:780mm
・車重重量:102kg
・エンジン:空冷単気筒OHC 2バルプ 124cc
・最高出力:7.1kW(9.7PS)/8000rpm
・最大トルク:9.6N・m/6000rpm
・燃料タンク容量:7.4L
・変速機:4段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=100/90-12、R=120/70-12
・価格:35万2000円(税込)
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