ドゥカティは現在モトGPでも活躍しているが、1980〜1990年台における主戦場はスーパーバイクであった。851系から始まるドゥカティのスーパーバイクの歴史は、そのままドゥカティのフラッグシップ歴史であり、916系、999系、1098系、パニガーレーV2系、パニガーレV4系と進化してきた。元々いわゆるLツインでスーパーバイクを戦ってきたドゥカティであったが、排気量によるメリットも少なくなったことでパニガーレV4系で伝統の2気筒に別れを告げた。そのドゥカティのフラッグシップたるスーパーバイクの第7世代として、パニガーレV4/V4Sが公開された。
目次
916にインスパイアされた最新デザイン
916にインスパイアされたというデザインは一新され、新型のカウルは先代モデルよりも4%空気抵抗を軽減。フロントのデザインに組み込まれたダブルプロファイルウイングは、先代モデルと変わらぬダウンフォースを発生するという。最新のエアロダイナミクスを導入しつつ、ドゥカティらしい美しさを忘れていない
ライディングポジションはライダーをバイクの空力特性に最大限に融合させることと、サーキット走行時の車両制御性の向上を目的として開発。シートとタンクのデザインは縦方向により広いスペースを生み出すことでカウル内での位置決めが容易となり、上面の窪みがヘルメットとの干渉を防いでいる。タンク、サイドカバー、シートの形状も最適化され、さまざまなライディングシーンにおいて自由度の高いフォームを生み出している。また、ステップ位置は先代モデルよりも10mm内側に移動しており、地上高が増加するとともに、ライダーが足と脚をより内側に配置できるようになったため空力性能が向上している。
モトGPテクノロジー満載の、デスモセディチ ストラダーレ エンジン
パワーユニットはモトGPマシンからのフィードバックを大きく受けたもので、デスモドロミック機構や逆回転クランクシャフト、ツインパルス点火を備えたV4エンジンはデスモセディチ GPと同じサウンドを奏でるという。
この新しいデスモセディチ ストラダーレ エンジンはボア×ストロークは81.0mm×53.5mmで総排気量は1103cc、圧縮比は14:1に設定されている。バルブ系はインテークは34.0mm、エキゾーストが27.5mmで、カムプロファイルの変更によってリフト量が増えている。このエンジンはユーロ 5+の認証を受けた上で、216hp/13500rpmの最高出力と、12.3kgm/11250rpmの最大トルクを発生。さらに、サーキットではアクラポビッチ製のドゥカティ パフォーマンス レーシング エキゾーストを装着することで、最大出力が 228 hp まで向上させることができる。
吸気は当然インジェクションによって行なわれ、各スロットルボディには2つのインジェクターが装備されている。各バンクのスロットルボディは専用の電動モーターによって動かされまており、フルライドバイワイヤシステムのおかげで複雑な電子制御戦略が可能になり、ライダーが選択したライディングモードに応じてエンジンの特性を調整してくれるのだ。
新しいスイングアームが目を引くシャーシ
新型シャーシで先代と最も異なっているのは、と両持ちタイプとなったスイングアームだろう。「 Ducati Hollow Symmetrical Swingarm」と呼ばれる新しいスイングアームは、横から見た中央部分に大きな穴があいた新しいデザインを採用。先代の片持ちタイプのスイングアームと比べて横方向の剛性を37%ダウンさせるとともに、重量を2.7kg軽量化。炉面により効果的にパワーを伝え、コーナー出口でのトラクションと加速時のフィーリングを向上させている。さらにV4Sに装備される鍛造ホイールは、フロント2.95kg、リア4.15kgと非常に軽量で、さらにバネ下の重量を軽減している。
フロントフレームも大きく変更されており、単体での重量は4.2kgから3.75kgへと軽量化されている。また、スイングアーム同様に剛性が再調整され、横方向の剛性を40%落としたことでバンク時やコーナー脱出時の信頼性を向上させた。
V4のフロントにはフルアジャスタブルタイプのショウワ製ビッグ・ピストン・フォーク(BPF)を装備し、リアにはザックス製のフルアジャスタブルショックがセットされる。V4SにはオーリンズのNPX-30フォークとTTX36 リアショックアブソーバー、そしてステアリングダンパーをベースにしたDucati Electronic Suspension (DES) 3.0 システムを搭載し、ストリートからサーキットまで、最適なサスペンションセッティングで走行することが可能になっている。
フロントブレーキには、世界で初めてブレンボのハイピュアモノブロックブレーキキャリパーを採用。この新しいキャリパーは左右非対称のデザインを採用し、ペアで60g軽量化するとともにレーキングによって発生する熱をより効果的に分散することで安定した性能を持続させることができる。また、ボッシュと共同で開発した Race eCBS システムを搭載。このシステムはバンク角とリア荷重を基にフロントブレーキと連動してリアブレーキを作動させ、最もスポーティな設定の場合にはライダーがフロントブレーキを離した後も介入を続け、狙ったラインを正確にトレースすることに寄与する。
最新の電子制御が、次世代の走りを実現する
新型パニガーレV4には、ドゥカティ・コルセが開発した「ドゥカティ・ビークル・オブザーバー(DVO)」が搭載されている。このシステムは70 を超えるセンサーの入力をシミュレートすることで電子制御を進化させ、極めて高い精度でコントロールに予測的に介入することで、ライダーの要求に応えて最大限のパフォーマンスを実現する。このDVOはトラクションコントロール、ウイリーコントロール、ローンチコントロールなどをより正確に制御している。また、それ以外にもスライドコントロールやエンジンブレーキコントロール、クイックシフトなど様々な電子制御が組み込まれている。
パワーモードはフル、ハイ、ミディアム、ローという4つが用意されている。さらにライディングモードもレース:A、レース:B、スポーツ、ロード、レインの5種類があり、それぞれに最適なパワーやスロットルレスポンス、サスペンションセッティングなどが提供されるようになっている。高度な電子制御技術によって、様々なシーンに最適なセッティングをバイク自体が行なってくれる。
メーターのデザインは一新され、6.9インチのカラー液晶には新しいパラメーターを画面の片側に表示できるようになっている。斜時の横方向の加速度と加速およびブレーキ時の縦方向の加速度の値をリアルタイムで表示する「g-Meter」や、ギアが噛み合っている場合の最大値と比較して、その瞬間に供給されるパワーとトルクのパーセンテージを表示する「Power&Torque」、スロットル開度とブレーキにかかる圧力を伴う瞬間的な傾斜角を表示する「Lean angle」などライディング中に表示される様々な情報は、より正確なライディングの手助けとなるはずだ。また、GPSを利用してラップタイムやスプリットタイムなどを表示する「 Info ModeTrack」や、ナビケーションやスマートフォンなどとリンクできる「 Info Mode Road」などシーンに合わせて表示が変更できるようになっている。
最新のモトGP技術が各部に最大限に盛り込まれ、最新の電子制御を満載した新しいパニガーレV4/V4Sは量産車としては最もレーサーに近いと言って良いだろう。レース用のソフトウェアや専用のデータロガーをはじめとして、様々なオプションパーツも用意されており、すぐにでもサーキットを走行できるのはさすがドゥカティ。WSBでの活躍はもちろん、全日本にも参戦し、今年の鈴鹿8耐でも4位に入賞したドゥカティが、ニューパニガーレを得ることで来年に向けてさらなる飛躍が期待できそうだ。
パニガーレV4/V4S主要諸元(2025)
・ホイールベース:1485mm
・シート高:850mm
・装備重量(燃料を除く):191kg[V4]/187kg[V4S]
・エジンン:水冷4ストローク4バルブV型4気筒 1103cc
・最高出力:158.9kW(216PS)/13500rpm
・最大トルク:120.9N・m(12.3kgm)/112500rpm
・燃料タンク容量:17L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-17、R=200/60-17
・価格:323万9000円[V4](税込)/414万1000円[V4S](税込)
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