取材協力:レッドバロン

セルフスターター付きの水冷DOHCエンジンを搭載し、高性能と扱いやすさを両立されたオフロードバイクであるホンダXLディグリー。このバイクはライバルであるヤマハ セローと共にオフロードバイクの間口を広げたと言える存在だ。

オフロードバイクの可能性を広げたマルチパーパスモデル

林道などの未舗装路をを走るために作られたオフロードバイクは、「ハード」で「マニアック」な乗り物だった。そのイメージを覆したのはヤマハ セローであり、扱いやすさや足つき性の良さで多くの女性ライダーに愛用された。もちろんその扱いやすさは本来のステージであるオフロードでも遺憾なく発揮され、ベテランのオフロード乗りたちの間でも長く愛された。このセローの人気に拍車をかけたのは、1989年のモデルチェンジで装備されたセルフスターターで、このモデルは当時「セルオ」などという呼び方もされていた。そんなセローの独壇場であったマルチパーパスオフローダーカテゴリーに、ホンダが投入したのがXLディグリーだ。

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XLディグリーの特徴と言えるのが、その「扱いやすさと高性能の両立」だ。セルフスーターの装備や足付き性の良さは女性ライダーはもちろん、ベテランからの支持も得るに至った。エンジンは最高出力25PSと4ストロークのオフロードバイクとしてはハイパフォーマンスと言えるもので、高速道路での走行にもライバル車よりも余裕があった。

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自由度が高く、足付き性の良いポジション

ほぼ直立となるオフロードバイクらい上半身のポジションは、自由度の高さからあらゆるシーンに合わせたライディングポジションを取れる。モデルは170cm/65kgの体格だが、フロント21インチ、リア18インチのホイールサイズながら、790mmという低シート高によって足つきは非常に良好。角が落とされた形状のシートや、よく動くサスペンションも足付き性を良くしている要因だ。

AX-1譲りの水冷DOHCエンジン

1991年に登場したXLディグリーは、マルチパーパスバイクAX-1譲りの水冷DOHCエンジンを採用していた。排気量はセローよりも余裕のある250ccで、25ps/8,000rpm、2.5kg-m/6,500rpmという高性能を発揮し、セルフスターターも装備されていた。さらにこのエンジンのトピックとして、ワークスレーサーNS500譲りのNSメッキシリンダーが採用されたことであり、当時のホンダの本気度が感じられる。AX-1のエンジンをベースにしているとはいえ、バルブ周りの設定変更やCVキャブレターの採用などで、実用域でより扱いやすい特性を持たせている。

乗り手に優しく、走行性能の高い車体

シート高は79mmとオフロードバイクとしては良好な足つき性を確保、燃料タンクは9.3Lとロングツーリングもこなせる航続距離を確保した。ホイールサイズはフロント21、リア18インチの本格オフロード仕様であり、車重も129kgと装備を考えれば充分に軽量に仕上げられていたと言えるだろう。フレームは丸鋼管と鋼板を組み合わせたセミダブルクレードル形式で、スキッドパイプとしての機能を持たせたボルトオンタイプのアンダーフレームが組み合わされる。ブレーキはフロントに240mm径のディスクブレーキ、リアには100mm径のドラム式を採用。1995年にはマイナーチェンジが行なわれ、リアブレーキのディスク化を中心とした装備の充実が図られている。

オフロードバイクの可能性を広げたマルチパーパスモデル

オフロードバイクではあるが、足付き性の向上やセルスターターの採用などで実用性を高めたXLディグリーは、オフロードから市街地まで走りを楽しめるマルチパーパスバイクとして愛された。後継モデルとして登場したXl230も生産中止となった今、1台のバイクに幅広い用途を求めるユーザーに乗って欲しい1台だ。

XLディグリー(1991)主要諸元

・全長×全幅×全高:2,100×815×1,155mm

・ホイールベース:1,360mm

・シート高:790mm

・車重:129kg

・エンジン:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 249cc

・最高出力:25PS/8,000rpm

・最大トルク:2.5kg-m/6,500rpm

・燃料タンク容量:9.3L

・変速機:6段リターン

・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム

・タイヤ:F=2.75-21 45P、R=4.60-18 63P
・価格:37万9,000円(1991年)

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