125cc原付二種のファンモデル、ギヤ付きモデルというと、これまでホンダが孤軍奮闘してきた印象があるが、ここに来てヤマハも125ccファンモデルのジャンルに参戦! 海外ではすでに展開している125cc&155ccモデルの4機種を国内導入することになった。2023年11月には千葉のモバラツインサーキットにて、YZF-R125&15、MT-125、XSR125の試乗会を開催。今回の記事では、エンジン、フレーム、スイングアームを共用するMT-125とXSR125の二台について比較試乗をメインに詳細をお伝えしていこう!
【XSR125 vs MT-125】ヤマハ125cc徹底乗り比べ比較インプレッション!
https://www.youtube.com/watch?v=RA3VJVdonPE
目次
XSR125とMT-125は車体のベースが一緒ながら、こんなにも乗り味が違う!
エンジン、フレーム、スイングアームを共用する兄弟モデル
XSR125
【全長/全幅/全高】 2030×805×1075mm
【ホイールベース】1325mm 【シート高】810mm
【車両重量】 137kg 【エンジン】水冷4ストローク単気筒124cc
【最高出力】15PS/10000rpm
【最大トルク】1.2kg-m/8000rpm
【燃料タンク容量】10L
【変速機】6段リターン
【ブレーキ】F=ディスク、R=ディスク
【タイヤ】F=110/70-17、R=140/70-17
【販売価格】506,000円(税込)
MT-125
【全長/全幅/全高】 2000×800×1070mm
【ホイールベース】1325mm 【シート高】810mm
【車両重量】 138kg 【エンジン】水冷4ストローク単気筒
124cc
【最高出力】15PS/10000rpm
【最大トルク】1.2kg-m/8000rpm
【燃料タンク容量】10L
【変速機】6段リターン
【ブレーキ】F=ディスク、R=ディスク
【タイヤ】F=100/80-17、R=140/70-17
【販売価格】495,000円(税込)
XSR125とMT-125のポジション比較
(ライダー:身長172cm/体重75kg)
XSR125
【シート高】810mm
両足をつこうとすると踵が3.5cmぐらい浮くが、車体がコンパクトなので支えるのは苦にならない。上半身のポジションは、ほんの少しだけ体が前傾するアップライトなポジションでとてもラク。ツーリングなどで1日走っていても疲れにくそうだ。MT-125と比べると随分とヒップポジションが後にきている感じで、膝の曲がりにも余裕がある。
MT-125
【シート高】810mm
シート高は810mmで数値はXSR125と全く一緒なのだが、MT-125の方がより跨り部分が絞られているようで、体感で1cmほど足つきがいい。両足をつこうとすると2.5~3cmほど踵が浮いた。上半身のポジションに関してもハンドルが近く、コンパクトで低め。これがMTシリーズらしいキャラクターの秘密のようで、サーキットを周回しているうちに、“もっと速く!”とどんどん目が吊り上がっていく。
XSR125は、本来はゆったり走行が似合いそう -実走インプレッション-
今回の試乗会場は、茂原ツインサーキットの西コース。全長700mほどで、タイトなコーナーが連続する目まぐるしいコースだ。“125ccモデルでサーキット走行かぁ......。非力な125ccクラスで走ると物足りないんだよね。一般道でじっくり走りたいなぁ......”なんてちょっと後ろ向きな気持ちでXSR125とコースインしたのだが、ものの数秒で考えが変わってしまった。
なんだかエンジンが妙にパワフルなのだ。125ccクラスにありがちな非力感がなく、発進加速も気持ちいい。特に驚いたのはコーナー出口での加速感で、低回転域からしっかりトルクが出ており、きっちり加速。思いの外スポーティなのだ。すごいのは、そんな低速トルクがきっちりと出ていながらも高回転側がしっかり回ること。15馬力のピークパワー発生回転域は1万回転で、レッドゾーンはなんと1万1000回転から。低速トルクがしっかりありがなら、高回転までしっかり伸びる。これこそがこのXSR125のエンジンが搭載する可変バルブ機構バリアブル・バルブ・アクチュエーション(以下:VVA)最大の恩恵というわけである。
このVVAは、低回転用のカムプロフィールと高回転用のカムプロフィールが切り替わるシステムで、XSR125の場合は7000~7400回転がその境で、中低回転重視のエンジンと高回転型のエンジンのいいとこ取りをしているというわけ。ネオクラシックスタイルでレトロなXSR125ではあるが、中身は最新。サーキットを走らせてみれば意外とスポーツできてしまうというわけだ。
今回の試乗はサーキットだけで一般公道では走れていないが、信号待ちからシグナルダッシュや、幹線道路などの巡航走行で、VVAは存分に効果を発揮しそうだ。特に通勤などでは他の車と一緒に走行するような場合が多く、長い坂道などではエンジンが非力だと失速してしまいちょっと怖い思いをすることもあるが、VVAを搭載したXSR125ならそんな場面もしっかり走ってくれそうだ。
しかも、このXSR125が相棒なら、バイク用のライディングウエアだけでなく、もっとカジュアルなウエアで乗ってもしっかり様になりそうなのがいい。オーセンティックなデザインのおかげで着る服も選ばないというわけだ。
ライディングポジションの自由度の高いMT-125 -実走インプレッション-
続いてMT-125でコースインすべくまたがってみたのだが、その瞬間にXSR125との大きな違いに気づいた。MT-125はXSR125のポジションに対して随分と前目に座る感じで、ハンドルがものすごく近い。ハンドルの高さ自体も低めで上から押さえ込むような感じ。
ハンドルが近いというのもあるが、ヒップポジションからステップのポジションまで全てが全体的に前方に寄せられている、そんなポジション設定なのだ。正直、あまりのポジションの違いに最初は、イン側に体を落とし込むハングオンがいいのか? それともモタードよろしくアウト側からマシンを押さえ込んだ方がいいのか? どう乗っていいか迷ったくらいだ(笑)。
エンジンのフィーリングに関しては、予想通りXSR125と変わらない印象だ。XSR125同様、コーナーからの脱出ではスロットルをワイドオープンすれば気持ちよくエンジン回転数が付いてくる。
当然ホームストレートでもXSR125同様伸びが良く、VVAの恩恵をしっかり感じられる。......と、1コーナー目掛けてブレーキングしたところで驚いた。MT-125は、XSR125に比べてかなりしっかりブレーキを握り込めるのだ。XSR125よりもかなりポジションが前目なこともあり、フロント荷重もよりかかりやすい。
タイヤの違いも大きいと思うが、リヤホイールが浮くんじゃないかってくらいのフルブレーキングが可能なのだ。そこから寝かし込んでいく工程もXSR125に比べるとかなりスムーズ。
モタードよろしくリーンアウトポジションで旋回すれば、安易にステップを擦るくらいの鋭いコーナリングも可能。リーンインにリーンアウトと、状況に合わせて様々なポジションで遊べるのがMT-125の取り柄らしい。
XSR125とMT-125、どちらがスポーティかと言われれば、当然ながらしっかりブレーキがかけられて、タイヤのグリップも掴みやすいMT-125の方である。同じエンジンに同じフレームであるはずなのだが、ここまで違いが出るとはびっくりである。
ディティール比較
両車ともVVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーター)を装備し7000~7400回転あたりで高回転型のカムシャフトに切り替わる。メインフレームは共通。ステムシャフト部分のフレーム幅広なのがデルタボックスの特徴であり、スポーティで高い負荷なスポーツ走行にもしっかり耐える。
両車とも前後17インチホイールだが、XSR125がF=110/70-17、R=140/70-17なのに対し、MT-125がF=100/80-17、R=140/70-17と、XSR125の方がフロントに幅広サイズのタイヤを履いている。ブレーキの仕様はリヤに関しては両車とも一緒。ブレーキの仕様はリヤに関しては両車とも一緒。ただしフロントのディスクブレーキは、XSR125のφ267mmに対して、MT-125はφ282mmとローターが大径化されている。
両車ともエンジンは水冷4ストローク単気筒124ccで、最高出力:15PS/10000rpmも最大トルク:1.2kg-m/8000rpmも同数値。VVAのカムが切り替わりタイミングも7000~7400回転と一緒になっている。
XSR125のオーセンティックな丸目ヘッドライトに対し、MT-125は他のMTシリーズにも通じるロボットフェイスで、末弟の125ccとは思えないほど作り込まれている。
車体の中で一番違う部分がハンドルポジション。幅はXSR125の805mmに対してMT-125が800mmとほぼ変わらないのだが、セットポジションがMT-125の方が手前で低め。
XSR125の丸目デジタルメーターに対して、MT-125は大きめの角形デジタルメーターを採用。MT-125はスリップダウン防止のためのトラクションコントロールシステムを備えているが、XSR125にはトラクションコントロールは搭載していない。
形状こそ違えど燃料タンク容量は10lで一緒。燃料はレギュラー指定で、WMTCモード値による燃費は両車とも49.4km/l。ただ、2名乗車による定地走行燃費は60.3km/lと、XSR125の方が1.7km/lほどいい。
両車とも前後一体型のシートだが、XSR125はタックロールパターンを採用したクラシカルなデザインを採用し、その分MT-125より跨り部に幅がある印象だ。エンジン&車体を共有するこの二台だがシート下のレイアウトは意外と違う。
スイングアームはスポーティな形状のアルミ鋳造製で両車共通。エンジンの減速比、ギヤ比も一緒で、スプロケットの丁数も同一仕様となっている。
リヤの足回りの仕様は両車共通。ただしホイールのスポークデザインは異なり、タイヤもMT-125がIRCのロードウイナーなのに対し、XSR125はIRCのトレールウイナーとなっている。
両車ともイグニッションには防犯対策のためのキーシャターを採用しており、キー形状も一緒となっている。
ステップはきっちり作り分けられており、MT-125が前目のフットポジションなのに対し、XSR125はやや後ろ目にセット。シートのヒップポイントも同じぐらいオフセットされている。
ハンドルグリップ&スイッチ、クラッチレバーなどはグリップパターンやハンドルエンドまで含めて両車共通。ただし、スロットルワイヤーハウジング形状に若干の違いがある。
タンデムステップステーはXSR125がパイプなのに対し、MT-125は鋳物。またXSR125はサイレンサーの固定ステーをタンデムステップが兼ねるのに対し、MT-125はライダーステップにサイレンサーが固定されている。
両車とも灯火類の光源はヘッドライト&尾灯がLEDでウインカーはバルブで、ハザード機能は装備していない。二人乗りに関してはXSR125の方がシートが広く快適そうだ。また、サイドカバー形状や穴の空いたアルミプレートは兄貴分たちの意匠に通じる部分となっている。
【画像】XSR125とMT-125をサーキットで比較試乗! (63枚)この記事にいいねする
各社の「250」も、やや高価格になりつつあるから、
YZFだけじゃなく、XSRとMTにも「155」を追加して欲しいと切に思う。
「帰り道だけ高速使いたい」時も多いからね。