画像は編集部が制作したCG

2023年にデビューが予想されるZX-4Rは、久しぶりの400ccマルチシリンダーモデルとして注目されている。そして、過去のカワサキの400ccマルチにはどんな歴史があるのか改めて振り返ってみたい。

CG/SRD

カワサキの並列4気筒400ccに対するこだわりは強い!

日本の並列4気筒モデルの歴史は1960年代末から始まっており、黎明期から競い合うホンダとカワサキはメーカーとして4気筒に強いこだわりを持っている。カワサキが2020年のZX-25Rに続いてZX-4Rを出すと予想されているのも、このこだわりが現在まで続いているからだ。

この10月に唯一の並列4気筒400ccモデルだったCB400スーパーフォア(SF)が生産終了したタイミングでカワサキがZX-4Rをリリースすると予想されるのは、「4気筒のカワサキ」というブランドイメージをホンダより強固なものにする狙いがあるだろう。

そして、原点を探ると現在と状況が一致するのが面白い。カワサキ初の400cc並列4気筒モデルは1979年のZ400FX。先行していたホンダは1974年にCB400フォアを発売していたが、免許制度改正の端境期で1977年には2気筒のホークIIに移行してしまった。

この流れで1970年代末にホンダの4気筒400ccモデルがなくなり、間隙を突いてカワサキがDOHC4気筒エンジンを搭載したZ400FXを発売。まさにCB400SFが生産終了し、2023年にZX-4Rの発売が予想される現在の構図と一致しているのだ。

CB400フォア [HONDA] 1974年12月にCB350フォアを408ccに拡大して、当時流行していたカフェレーサースタイルで発売されたヨンフォア。1976年には中型免許に対応した398cc仕様も追加。

Z400FX [KAWASAKI] 1979年に400ccクラス初の並列4気筒DOHCエンジンで発売。ライバル各社もこれに倣って4気筒DOHCモデルをリリースし、当時全盛だった並列2気筒エンジンのモデルを駆逐した。

アンチレプリカだったカワサキが最強と言われたZXR400を出すまで

Z400FXの大ヒットを受けて、4メーカーが次々と並列4気筒400ccモデルをリリースし、1980年代には400ccマルチは一大ムーブメントになっていった。こうなると強かったのはホンダで、DOHC4バルブエンジンを装備したCBX400Fがライバルを圧倒した。

そのまま時代はレーサーレプリカブームになだれ込んでいき、1980年代後半にはCBR400RやVFR400Rなど、他社にはマネできない2つのエンジンを擁する体制でホンダがリードを広げる局面に。一方で一時的にレースから撤退していたカワサキは”アンチレプリカ”を方針としていた。

当時カワサキは公道を重視したツアラーに重点を置いており、他社がレプリカに注力する中でGPZ400Rを1985年に発売。4気筒400ccでは珍しいこのツアラーモデルが大ヒットを記録し、1990年のZZ-Rシリーズへと連なるカワサキの人気ブランドに定着していった。

カワサキはこの成功に満足せず最後発の4気筒400ccレプリカ・ZXR400を1989年に発売。ただし、いきなり振り切った訳ではなく、その前年に出したツアラー風で中身がレプリカのZX-4が不発に終わったことで、外観や装備まで徹底的にレーシーに磨き上げたのだ。

CBX400F [HONDA] 400ccは2気筒で十分というスタンスでスーパーホークIIIまで出したホンダが一転4気筒で攻勢に転じ1981年に発売。DOHC4バルブエンジンはZ400FXを5PS上回る48PSを発揮。

GPZ400R [KAWASAKI] カワサキ初の400cc水冷直4モデルでフルカウルを纏っていたが、アップライトなハンドルポジションのツアラーコンセプトだった。それでいて最高出力は59PSを発揮。

ZX-4 [KAWASAKI] 1988年、カワサキはレーサーレプリカに近いZX-4をリリース。アルミツインチューブフレームに新開発4気筒エンジンを搭載。乾燥重量はわずか152kgという過激スペックだった。

ZXR400 [KAWASAKI] 1989年のZXR400/Rでカワサキもレプリカを解禁。ZX-4譲りのスペックに加えて徹底的にサーキットを狙ったスタイルと装備を獲得し、最強の400レプリカとして君臨した。

ZZ-R400 [KAWASAKI] ZZ-R1100と同じ1990年のデビューで初代はシリンダーヘッドまわりを冷やすK-CASのみ採用していた。最高出力は58PSとGPZ400Rよりも出力は低い。写真は1991年モデル。

カワサキの400ccレプリカはレースで大活躍! しかしブームはネイキッドに移行

1988年に発売されたZX-4は、若手ライダーの甲子園と言われていた鈴鹿4耐で見事優勝。これがフルモデルチェンジして1989年に発売されたZXR400Rは1990年の全日本選手権TT-F3クラスでタイトルを獲得し、カワサキがサーキットで逆襲に転じた形だ。

しかし、すでにレプリカブームはピークを過ぎており、ZXR400は同門のゼファーよりもセールスで劣勢に立たされてしまった。また、1990年にデビューした同門のZZ-R400もZXRを上回る堅調なセールスを記録しており、販売面では決して成功とは言えなかった。

そして、ホンダがゼファーの独走に黙っているはずがなく、1992年にはCBR400RRの並列4気筒エンジンを使用したネイキッド・CB400スーパーフォア(SF)を発売。1993年には3年連続ベストセラーに輝いたゼファーを抑えてトップに躍進。以降、ネイキッドブームの主役に躍り出たのだ。

そして現在。30年のロングセラーを記録したCB400SFもついに生産終了となり、今度はカワサキがZX-4Rで4気筒400ccモデルの主役になろうとしている。レプリカでもなくツアラーでもないスーパースポーツの400ccで勝負を仕掛けると思われるカワサキの戦略は吉と出るか!?

ゼファー [KAWASAKI] 1989年に発売。ZEPHYR=西風を意味する英語を車名としつつ頭文字にZを置いてその血統を表している。Z400FXをルーツとした空冷並列4気筒エンジンを搭載した。

CB400SF [HONDA] 1991年の東京モーターショーに出品された「プロジェクトBIG-1(後のCB1000SF)」コンセプトに基づいて開発された。CB1000SFの400cc版だが、1000より先に1992年4月に発売された。

Ninja ZX-4R [KAWASAKI] 編集部の予想CG。ZX-25Rをベースとしエンジンの排気量が異なる仕様で2023年の発売が予想される。Ninja250とNinja400の関係に近いだろう。

【おまけ】1984~1991年国内400cc販売台数ランキング

1984年
1位CBR400F 24775
2位GSX-R 13238
3位GPz400F 11657
4位FZ400R 11388
5位CBX400F 5403
※単位は台数(以下同)

1985年
1位GPZ400R 18709
2位FZ400R 17977
3位CBR400F 15491
4位GSX-R 9358
5位SRX400 6219

1986年
1位GPZ400R 13409
2位VFR400R 11228
3位FZR400 10545
4位FZ400R 8631
5位CBR400 8159

1987年
1位VFR400R 16103
2位FZR400 11368
3位GPZ400R 8724
4位SRX400 8309
5位GSX-R 5473

1988年
1位CBR400R/RR 17664
2位FZR400 9757
3位ブロス 7825
4位GSX-R400 6509
5位ZX-4 6138
6位VFR400R 6066

1989年
1位VFR400R 10769
2位ゼファー 7300
3位CB-1 7138
4位CBR400RR 4975
5位FZR400 5354
6位ZXR400 4904

1990年
1位ゼファー 13499
2位VFR400R 6692
3位ZZ-R400 5128
4位CBR400RR 4975
5位CB-1 4250
6位スティード 4198

1991年
1位ゼファー 16261
2位スティード 7635
3位ZZ-R400 6024
4位VFR400R 5488
5位バンディット 5188
6位CBR400RR 4132

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