バイクのフェアリング(=カウル)には、空力特性を高めて最高速や加速性能にプラスの影響を与えるということに加えて、走行風からライダーを守るという役割もあります。現代には、大きなカウルを装備しないという選択をしながら、超ハイパワーのエンジンを搭載したモデルも……。風圧に耐えながらハイパワーを操るのは、もしかして硬派でカッコいい!?

現在はSS由来の200馬力超ネイキッドも!

市販車初のフルカウルモデルが1976年に登場したBMW・R100RS。R100RSは純粋にスピードを求めたわけではなく高速巡航の快適性を重視した結果、カウルを装備。バイクが高性能化したひとつの証左となった。

 

100年以上にわたるモーターサイクルの歴史は、“速さ”の追求とも密接に結びついています。その中で生まれた装備のひとつがカウリング。ライダーが受ける走行風による抵抗を減らすため、レーサーにはかなり古くから導入されていました。ちなみに市販車の世界では、1976年にBMWが発売したR100RSが初のフルカウルモデル。ただしそれ以前から、カフェレーサー的なロケットカウルを装備したモデルはありました。

しかし現在、新車のラインアップにはハイスペックなエンジンを搭載しながら、敢えてカウルレスとした車種が多数あります。例えばBMWが2023年型として発表したM1000Rや、2023年型で熟成されたドゥカティのストリートファイターV4シリーズは、いずれも200馬力を超えています。サーキットなら余裕で300km/hに到達するような馬力のバイクが、バーハンドルでカウルレス。

「それ、トバしたらライダー飛んでいっちゃうんじゃ……」なんて感じですが、このようなストリートファイター的なネイキッドは、世界各国で一定の支持を集めています。

他メーカーを圧倒するカワサキのスーパーチャージャー

では、国内4メーカーが日本で正規販売するネイキッドで、現在もっともハイパワーなバイクはというと……。これは、圧倒的な馬力差でカワサキのZ H2/SEに軍配が上がります。搭載されるスーパーチャージドエンジンは、200馬力に到達。2位のヤマハ・MT-10/SPに対して34馬力もの大差をつけています。

ちなみにZ H2の車重は240kgで、それほど軽いわけではありませんが、あまりに馬力があるためパワーウエイトレシオでも国内メーカーのネイキッドでトップ。サーキットでスロットルをワイドオープンすれば、超強烈な加速を味わえます。では、国内メーカー製ネイキッドの馬力ランキングトップ5を紹介しましょう!

 

国内メーカー製ネイキッド馬力ランキング(2022年10月現行モデル)

メーカー名 車名 最高出力(PS) 車重(kg)
カワサキ Z H2/SE 200 240
ヤマハ MT-10/SP 166 212
スズキ GSX-S1000 150 214
ホンダ CB1000R 145 213
カワサキ Z1000 141 220
※グラフは2022年10月現在のメーカー情報をもとに編集部で作成。車重は軽いほうの仕様を掲載

 

第1位 カワサキ・Z H2/SE

200馬力を叩き出すスーパーチャージドエンジン

カワサキの尖ったイメージを具現化したようなモデルがZ H2/SE。モーターサイクル&エンジンカンパニーだけでなく、航空宇宙システムカンパニーやエネルギー・環境プラントカンパニーなど、川崎重工業の各部署と綿密な共同研究により設計された、998cc水冷並列4気筒のバランス型スーパーチャージドエンジンを搭載しています。

過給機まで自社製としたエンジンは、最新排ガス規制に適合しながらも最高出力は200馬力。スーパーチャージャーの作動音と吸気音のチューニングも施されていて、性能も音も迫力いっぱいです。

本来なら宙に浮くような加速力を発揮する200馬力スーパーチャージドエンジンですが、Z H2には高度な電子制御システムが搭載されていて、IMU(慣性計測装置)のデータも用いながらトラクションコントロールなどを制御。3種類のパワーモードもあり、ミドルならフルパワーの約75%、ローなら約50%に制限されるのでだいぶ安心です。なおSE仕様は、ショーワ製の電子制御サスも搭載しています。

第2位 ヤマハ・MT-10/SP

エンジンも車体もスーパースポーツ由来

エンジン……というよりも車体全体がスーパースポーツのYZF-R1ベースで設計されているのがMT-10/SP。クロスプレーン型クランクシャフトを採用した「CP4」と呼ばれるエンジンは、ストリートでの操縦性などを追求してコンロッドをチタン素材ではなくスチール素材に変更するなど、細かい部分にまで手が加えられていますが、それでも997cc水冷並列4気筒で最高出力166馬力を発揮します。ちなみに2022年型からは、スロットルケーブルを廃した電子制御スロットルも採用されています。

またこの2022年型からは、新たにIMU(慣性計測装置)も搭載し、これをトラクションコントロールやスライドコントロール、リフトコントロールなどに活用。166馬力を効率的に使えるバイクに仕上げられています。

なお上級版のSPは、前後サスがオーリンズ製のセミアクティブタイプです。

第3位 スズキ・GSX-S1000

レジェンドスーパースポーツのエンジンを搭載

かつて名機とうたわれた、2005~2006年型のGSX-R1000(K5/K6)に搭載されていたエンジンを、低中回転域重視に仕様変更して、シリーズ専用のアルミ製フレームに搭載したのがGSX-S1000。その998cc水冷並列4気筒エンジンの最高出力は、GSX-Rの178馬力に対して28馬力ダウンですが、それでも150馬力を発揮します。

2021年型で初のモデルチェンジを受けてシャープなルックスとなった際に、それまで省かれていたドライブモードセレクターを新採用。エンジン制御マップを3種類から選べるようになりました。トラクションコントロールは5段階+オフに調整可能。双方向クイックシフターも搭載しています。

なおこのモデルは、KATANAの開発ベース車両であり、そのためKATANAも150馬力を叩き出しますが、バーハンドルとはいえKATANAはネイキッドとは少し違うので、今回はランキングから外しました。

第4位 ホンダ・CB1000R

こちらもエンジンのルーツはSS

ホンダ・ネオスポーツカフェコンセプトの頂点に立つモデルとして開発された、現行モデルのCB1000R。高張力鋼モノバックボーンフレームに搭載されるエンジンは、2007年型のCBR1000RR(SC57)用をベースに、圧縮比低下など独自のモディファイを加えたもの。まるでカタチが異なる初代のCB1000Rから、2018年型で刷新されたときに、スロットルバイワイヤや鍛造ピストンの採用、圧縮比のアップなどが図られ、2007年型のエンジンとはさらに相違点が増えたものの、ルーツはやっぱりスーパースポーツです。

998cc水冷並列4気筒エンジンは、最高出力145馬力を発揮。それぞれ3段階のパワーセレクターとトラクションコントロールとエンジンブレーキコントロールを備え、上下双方向対応のクイックシフターも標準装備するなど、ベースは15年前のエンジンでも電子制御は現代的です。

第5位 カワサキ・Z1000

過保護な電子制御ナシで味わう141馬力

ハイパワーネイキッドのほとんどは、スーパースポーツ用をルーツとするエンジンを搭載しています。しかし、Z1000は初代の2003年型がニンジャZX-9R譲りのエンジンだったとはいえ、ZX-9Rはまだスーパースポーツというジャンルが確立される以前のバイクで、なおかつZ1000のエンジンは2010年型で排気量が拡大されているため、スーパースポーツとの結びつきがほとんどないエンジンと解釈できます。

2022年現在の現行モデルは、2017年型でマイナーチェンジが施されたものの基本設計が2014年型から踏襲されていて、ライディングモードやトラクションコントロールといった現代の高性能モデルでは当然となりつつある電子制御を備えていません。1043cc水冷並列4気筒エンジンの最高出力は141馬力とライバルに一歩譲りますが、そのポテンシャルをピュアに感じられるバイクです。

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    カウルはないけど超ハイパワー
    といえば
    B-KING
    かな

  2. 考え方古いのかな? より:

    う~ん・・・?
    個人的には、この中だとCB1000R以外は、ネイキッド(裸)と言うには違和感が・・・。
    (ビキニカウルとネイキッドも線引きするタチなもので)
    カワサキなら、Z900RSとかW800辺り、
    ホンダの他ではCB1300SFとかが、
    ネイキッドにカテゴライズされるのでは。。

    ま、フルカウルじゃなく、風を受けるって意味では間違いじゃないし、
    記事は楽しく読ませて頂きました♪

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