文/Webikeスタッフ:アキヒト
目次
【ホンダ PCX ELECTRIC】
ディテール&試乗インプレッション
ついに情報公開された電動バイク「PCX ELECTRIC(エレクトリック)」。
PCXシリーズは2018年だけでも新型PCX125&150、PCXハイブリッドと立て続けに登場しましたが、今回は完全なる電動バイクとして登場しました!
見かけは今年登場したPCXシリーズと大きな違いはありませんが、肝心のEVシステムはどのように組み込まれているのでしょうか?
一足先に試乗する機会がありましたので、気になる電動PCXのインプレをお届けします!!
マフラーが無くなった以外はPCXのスタイルを維持
デザインはEVシステムを搭載することでマフラーを装着する必要がなくなった以外はほぼ変わらず。
よりEVシステムの象徴となるモーターを強調するため、リアフェンダーを専用のハガータイプに変更しています。
フェンダーとマフラーがすっきりしたことで、特に右側からのアングルは違和感があるかもしれませんね。
カラーはEVとしての特別感を演出する:パールグレアホワイト1色の設定となります。
マフラーが無くなったことや燃料タンクが無くなったことで、重量は軽くなったのかなと思っていましたが、重量はPCX125から14kg増となっていました。
ただ、押し引きや乗った感じでは全く重さを感じません。これはバッテリーの配置によって重さを感じさせないように工夫されているからです。
定格出力:0.98kWのEVシステムを搭載するPCX ELECTRICは、現在の日本の免許制度だと原付二種相当とされています。
ピンクのナンバープレートとフロントフェンダーのステッカーは健在です!
【全長/全幅/全高】
・PCX ELECTRIC:1,960mm/740mm/1,095mm
・PCX125・ハイブリッド:1,925mm/745mm/1,105mm
【車両重量】
・PCX ELECTRIC:144kg
・PCXハイブリッド:135kg
・PCX125:130kg
PCX ELECTRICのEVシステムの仕組み
PCXのデザインに納まるように設計されたEVシステムの動力源には2個のモバイルパワーパックが搭載されています。
このモバイルパワーパックを直列接続させた96V系EVシステムによって、PCX ELECTRICの高い走行性能が実現しました。
モーター出力は最大4.2kW(定格出力:0.98kW)で、一充電当たりの航続距離は60km/hの定置走行テストで41km(使用環境により異なります)となります。
一見すると航続距離が少なく感じるかもしれませんが、1日の実用的な航続距離の範囲であればこの走行距離でも十分カバーできるとみられています。
また、モーターは従来のエンジン機構よりもエネルギー変換効率が良く、ストップ&ゴーなど出力の加減差により燃費に差が出るエンジン機構と異なり、出力による航続距離の加減差が少ないのも特徴です。
モーターにはIPM(磁石埋め込み型)構造を採用することで高い出力を実現すると共に、モーターの温度保護制御、通電制御を行うことでモーターの冷却機構を不要としました。
これによりコンパクトなパワーユニットを実現しています。
EVシステムはPCU(パワーコントロールユニット)により車両全体の電源システムを制御しています。
PCUが搭載されているメインコンタクターとリレーを車両状態に合わせてそれぞれ最適に駆動させることで、モバイルパワーパックの電流を最適にしています。
走行時にはPCUがメインコンタクターを駆動させ、2個のモバイルパワーパックを直列接続し、システム電圧を96V系にします。
直列接続により電流の損失を抑え、より走りにパワーを伝えられるようシステム全体の効率を高めています。
充電時にはPCUがリレーを駆動させ、2個のモバイルパワーパックを並列に接続し、システム電圧を48V系にします。
並列接続により放電状態の異なる2個のモバイルパワーパックを均等に充電する事が可能となりました。
よりパワーが必要な走行時には直列、パワーを必要としない充電時には並列、と接続を使い分ける働きをするのがPCUです。
モバイルパワーパック
PCX ELECTRICには着脱式のモバイルパワーパックを2個搭載しています。
新開発のモバイルパワーパックにはリチウムイオンバッテリーを採用し、1個当たりの電圧を48V(重量:約10kg)にすることで、PCXの車体に納まるサイズとなりました。
PCX ELECTRICの充電方法
PCX ELECTRICの充電方法は2つあります。
1つめは、モバイルパワーパックを車体から取り外して充電します。
取り外したモバイルパワーパックは専用の充電器を使用することで充電が可能です。
専用の充電器を使った際の1個の充電時間は、ゼロから満充電まで約4時間で完了します。
2つめは、車体に内蔵されたプラグを使って2個のモバイルパワーパックを車体に搭載したまま充電します。
元々PCXの給油口であった部分には、約2mの車体側プラグコードが収納されており、外部電源(AC100V)と接続することで充電が可能です。
2個のモバイルパワーパックをゼロから満充電まで約6時間で完了します。
PCX ELECTRICのシート高、足つきをチェック
【シート高】
760mm
【足つき】
シート下にはモバイルパワーパックを搭載していますが、特にシートが高くなっているということはありませんでした。
身長173cmのスタッフが跨ってみると、足つきは両足ともベタ足でした。
PCX ELECTRICの灯火類をチェック
【ヘッドライト】
PCX同様に灯火類は全てLEDを採用しています。
ヘッドライト上部にはアクセントとしてキャンディブルーのカバーが装着されています。
【テールライト】
テールライトも同様にLEDを採用しています。
テールライト点灯部のインナーレンズをブルーにすることで、消灯時にテールがブルーに見えるようになっています。
PCX ELECTRICのメーターをチェック
メーターはEVシステムの情報をわかりやすく表示されるように専用設計のメーターを装備。
スピードメーターや時計をはじめ、バッテリーの残量や出力制限モード、充電中を知らせるインジケーターなど、独自の情報を一目でわかるように設定されています。
メーター起動を動画でどうぞ!
PCX ELECTRICの足回りをチェック
【タイヤサイズ】
・フロント:100/80-14M/C 48P
・リア:120/70-14M/C 55P
タイヤサイズはこれまでのPCXシリーズから変更はありません。
【ブレーキ】
フロントは220mmディスクローターと2ポッドキャリパー、そしてABSを表示装備。リアはドラムブレーキ式。
【サスペンション】
ホイールベースの延長により、リアサスペンションの全長も伸びています。
これまでのPCXと同様に、3段階の異なるスプリングレートを組み合わせたスプリングを搭載。
【フレーム】
フレームの基本形状はPCXと共通ですが、新たに専用設計のパワーユニットハンガーをリアサスペンション下の懸架に搭載しました。
このハンガーはラバーブッシュを片側2個ずつ装備し、振動の少ないEVシステムのパワーユニットと合わせて乗り心地の向上に寄与しています。
PCX ELECTRICのスイッチ類をチェック
右側のスイッチボックスは、キルスイッチとプッシュスタートが一体となりました。
ちなみにスロットルにもセンサーが搭載されているため、ワイヤーではなく電気信号でスロットル開度の情報を伝えています。
左側には従来のPCXから引き続き、アクセサリーソケット付きグローブボックスを装備。
右側にはスマートキーシステム採用のメインスイッチがあります。
スイッチ右側のボタンで充電用プラグのカバーとシートを開く事ができます。
PCX ELECTRICのシートをチェック
シート形状はPCX125と同じデザインとなり、段差がちょっとした背もたれになって座り心地も良いです。
シート下スペースはモバイルパワーパックを2個搭載しているため、ヘルメットを入れるスペースはありません。
ラゲッジボックスには、グローブなどちょっとした小物を入れるぐらいしかできなさそうですね。
モバイルパワーパックの脱着は、簡易的かつ確実に行えるように、新開発された着脱方式が採用されました
着脱機構はとてもシンプルで、取っ手のようなロックプレートを前に倒してロック解除、後ろに引っ張ってロックの2アクションだけです。
ちなみにモバイルパワーパックは1個10kgあるため、2個同時に着脱すると腕が結構疲れます…
モバイルパワーパックの脱着を動画でどうぞ!
気になる走行性能は!?
PCX ELECTRICに乗ってみて、1番違いを感じたのは発進の時でした。
とにかく走り出しが力強く、そのまま加速までの流れがスムーズです。
EVシステムはエネルギーの変換効率が良いということもあり、開けた瞬間からスーッと引っ張られるような発進・加速は、エンジンの回転数を上げながら発進、加速するこれまでのバイクとは別物でした。
発進だけで見ると、EVシステムの方が出だしは速い印象です。
しばらく加速すると、途中からは「思ったほどスピードが出ていないな」といった感じでした。
それでも日常生活の常用速度域内であれば、他車の流れにも気を遣わずにのることができます。
スラロームやUターンなども行いましたが、ハンドリングなどの取り回しに大きな違いや違和感は感じられませんでした。
PCX125からの増量もハンドリングには影響ありません。
あえて違和感を挙げるのであれば、排気音やエンジン音が全くしないことぐらいでしょうか。
モーター音は本当に静かで、周りで試乗している車両が通り過ぎたことに気が付かないこともしばしば。
乗っているときも意識したり、慣れてくるまではモーターの音だと感じないくらい静かでした。
当然のことですがアイドリングもないので、プッシュスタートした後も直観では発進できるのかわかりませんでした。
ちなみにPCX ELECTRICは今のところ一般販売の予定は無く、首都圏や観光地などを中心に商業目的でのリース販売を計画しています。
個人的には新聞配達など、早朝にバイクをつかっている場面で普及すると、走行音が無くなって良いのではと思いました。
ただ、本当に静かなので、住宅街など道路と歩道が分けられていない道を走るときには注意が必要ですね。
近年、サイクルショーやレースシーンでも電動バイクが取り上げられるようになり、電動バイクはますます注目されるカテゴリーとなるでしょう。
今回のPCX ELECTRICは、近い未来に電動バイクが普及することをイメージさせるには十分な1台でした!
モーター音が駆け抜ける様子を動画でどうぞ!
モーター音だけだとこんな感じです!
撮影協力:株式会社ホンダモーターサイクルジャパン
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