ヤングマシン連動企画ハヤブサ試乗レビュー:特集Vol.55 - ウェビック バイク選び

MASTER OF TORQUE

デビュー当初から「基本プラットフォームをベースにしたバリエーション展開」を掲げていたMT-09。国内モデルとして初展開される「MT-09 トレーサー」は、スポーツ性を軸にマルチに楽しめる1台だ!

「できそう」「やれそう」可能性と期待感が満載!

なぜだろう。MT-09 トレーサーを走らせながら、仮面ライダーのバイク「サイクロン号」を思い出していた。
共通項があるわけではないのに……。デザインが似ているわけでもないのに……。

ひとつ言えるのは、トレーサーもサイクロン号も、唯一無二の個性的なバイクだということだ。

トレーサーは、現在の国産車では唯一となる並列3気筒エンジンを、ベースのMT-09からそのまま引き継いでいる。
その独自性は、トレーサーの登場でより鮮明になったように感じる。

パッケージから判断すると、トレーサーは「万能選手」だ。アップライトなポジションでツーリングよし、大きな座面のタンデムシートとグリップでタンデムよし、大型スクリーンが付いてロングよし。何にでも使える仕様だ。

……そういうバイクなら、ほかにいくらでもある。決して珍しくない。しかしトレーサーには、並列3気筒エンジンがあるのだ。

低回転では鼓動感とパンチがあり、中回転域あたりの常用域ではスッと滑らかに。そこから高回転にかけては、一気呵成の伸び上がりを見せる。回転域によって表情が変わるので、ライダーを飽きさせないのだ。

ココ、かなり重要なポイントだと思っている。並列3気筒エンジンは、乗り手の意志ひとつでいろいろな表情を見せる。
頼もしい走り、穏やかな走り、エキサイティングな走りと、いろいろな走りのスタイルを右手ひとつで創り出すことができる。

「万能ツーリングバイク」であるトレーサーが、もし退屈なエンジンを搭載していたら、ただのツーリングバイクでしかない。しかし並列3気筒エンジンを搭載しているおかげで、街乗りトコトコバイクからツアラー、さらにはエクストリームな走りが楽しめるスポーツバイクと、幅広い楽しみ方の可能性がもたらされているのだ。

ココもかなり大事なポイントだ。実際には、ライダーによって好みの走りのスタイルがあり、使い方は限定されていくだろう。でも、「いざとなったらアレもできる、コレもできる」という可能性が残されていると、それだけで楽しい。
ライダーたるもの、チャレンジできる可能性のあるバイクにワクワクしてほしいと思う。

ハンドルにマウントされたブッシュガードやトラクションコントロールなどによるアドベンチャーイメージも、「オフロードに行けそう」という可能性を感じさせてくれる。前後17インチタイヤで、ガンガン林道を駆け巡るほどの悪路走破性はないし、実際そんな使い方をするユーザーはいないだろうが「行けそう」とワクワクさせてくれるのが大事なんだ。

子供心に、サイクロン号の可能性にはワクワクした。同じように、トレーサーにもワクワクする。そういえばサイクロン号は、左右それぞれとは言え3本出しマフラーだし、フルカウルながらオフロードも走っていたな……。やっぱりサイクロン号とトレーサー、どこか似ている…… !?

しっかりと堪能できる3気筒のイキのよさ

さて、トレーサーの具体的なインプレッションだが、まず最初に感じたのはデザインの分かりやすさだ。スマートな洗練と無骨なワイルドさがうまく混在していて、ストリートからツーリング、そして「ちょいオフ」の予感を思わせる。このバイクがめざしているキャラクターが鮮明に感じ取れるデザインだと思う。

MT-09 に比べると、カウル装着の影響でフロントまわりを中心にやや重量感がある。ヤマハの説明では「前後重量配分が50対50になった」とのことだが、取り回しやUターン時など、ややズッシリ感が。その分、ハンドリングには安定感と落ち着きがあり、扱いやすさは増している。

もっともこれは、非常に軽快なMT-09と比較しての話。一般的なツーリングバイクと比べれば、やはり3気筒エンジンのメリットは大きく、軽やかな部類だ。

そのエンジン、かなり元気がいい。先述した通り、回転数の変化によってさまざまな表情を見せるが、基本的にはアグレッシブだ。妙にツアラーっぽく調教されてしまうのではないかという危惧は、うれしい杞憂に終わった。

エンジンモードを切り換えることで特性は変化させられるが、もっともイキのいいAと、もっとも穏やかなBで、それほど極端な差は感じられない。もちろんBの方がツキは穏やかで扱いやすいが、元気の良さは同じ。どんなシーンでも楽しめるエンジンであることは間違いない。

幅広いステージで快適に、そして楽しく

トレーサー最大の特徴は、なんと言ってもカウルと大型スクリーン、そしてブッシュガードが装着されたことだ。これによって、ネイキッドMT-09に比べて、ウインドプロテクション性は非常に高くなった。

特にスクリーンは効果的。アゴ下あたりまでしっかりと風を防いでくれる。もう少し高さ調整しやすければ満点なのだが……。また、ブッシュガードも寒風から手先を守ってくれる。グリップヒーターのように発熱こそしないが、ありがたい装備だ。

今回の試乗ではそれなりの距離を走ったが、やはりラク!ロングを快適にこなせるようになったことで、ツーリングの距離も時間も大幅に増えそうだ。ライダーを飽きさせない3気筒エンジンの特性が、ますます生きる。

トレーサーにはトラクションコントロールも装備されたが、最新スーパースポーツのように「速く走るための武器」ではなく、あくまでも後輪の空回りを防ぐ安全装置といった印象だ。オフロードでテストしたところ、タイヤの空転はしっかりと抑えてくれるが、そこから前に進ませる制御までは感じられなかった。

トレーサーは、スポーツライディングが楽しい。アクションも楽しめる。ロングツーリングも楽しければ、ロングからの帰り道までも飽きずに楽しい。しかも幅広い可能性を感じさせてくれて、個性的。これぞまさに、「妥協なき万能選手」だね!

mt09tracer

ベースとなったMT-09は、慣性トルク変動が少なく、滑らかなトルク特性をもたらす「クロスプレーン・コンセプト」に基づいて開発された並列3気筒エンジンを搭載。ロードスターとモタードのハイブリッドデザインでも人気に。トレーサーも最初から構想に含まれていた。

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タンクは18Lの容量を確保し、ロングツーリングにも対応。3気筒のコンパクトな横幅を生かし、下部から後端にかけては絞り込まれ、下半身でホールドしやすい。

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フロントフォークはφ 41mm倒立式。アウターチューブは車体色により青または金。

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リヤはリンク式モノクロスサス。前後ともイニシャルと伸側減衰力が調整可能。

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MT-09と共通する並列3気筒エンジンは、FIの設定をトレーサー専用セッティングとしている。生来のイキの良さはそのままに、扱いやすさに配慮した設定だ。

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大型スクリーンは、15mmずつ3段階の高さ調整ができる。メーター下部に設けられたネジをゆるめて調整する手動式。ネジはやや手が届きにくい位置にある。

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ロー&ハイ、さらにポジションランプまで、すべてをLEDとした「フルLEDヘッドライト」を採用。

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キーをオンにするとポジションが、エンジン始動で左側ロービームが点灯する。ハイビームは両側が点灯する。

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オフロードイメージの頑健さと、都会的なスタイリッシュさを合わせ込んだデザインのブッシュガードを装備する。オフロード走行時、草木などから手を守るほか、寒冷期は多少の防寒効果も発揮する。

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タンデム性の高い前後セパレートシート。メインシートは標準の845mmからさらに運動性が高まる860mmへとアップすることが可能だ。

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グラブバー、サイドケース取り付けステー、荷掛けフック、ラゲッジストラップホルダー、ヘルメットホルダーなどがスマートにまとまっている。

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シート下にはETCが入るスペースほどの空間はアリ。工具もしっかり積載されている。

ダイナミックなデザインをベースに、各パーツのディテールの質感も高めているトレーサー。シャープさと流麗さ、タフさとスマートさなど相反する要素を融合させている。ここにダミーダクトを置いたのは吸排気の流れを視覚化するため。エンジンの機能をデザインに昇華させた。

タンクとフレームの間にカーボン調のサイドカバーを配することで、より引き締まった精悍なイメージに。ニーグリップ時のアタリにも配慮した形状。

ハンドルポスト前後を入れ換えることで、10mmのハンドルポジション調整可能。シート、スクリーンと相まって、アジャスト箇所が多く用意されている。

ハンドル周りの機能を順に追って説明しよう。

2画面が用意されている液晶メーター。左側にバーグラフのタコメーターや速度計など、右側に走行データなどを表示する。

情報ディスプレイは3つの表示パターンが用意されているほか、設定モードでは表示広告や内容を好みに応じて変更できる。

メーター右側には、ジャックを2個使う時用のホールを標準装備。

メーター左横には12V のアクセサリーを接続しメインスイッチオンで使用可能となるDCジャックが設けられている。

テストライダーは168cmの61kg。ゆったりとしたポジションはロングも快適。ハンドル幅は広めなので、体格によってはU ターンなどフルロック時に外腕がめいっぱい張るかもしれない。

アドベンチャー色が強く、シート高は845mm。両足親指の腹がかろうじて接地する。


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Webikeニュース編集長 ケニー佐川

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