【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】
8月末、トライアンフから突如公開された新型アドベンチャーモデル「TIGER SPORT 660」(タイガースポーツ660)。最終プロトタイプではあるが、鮮明なオフィシャル画像とともに公開されたティーザー動画の中でも鋭い走りを披露するなど、完成度の高さを印象付けるものだった。10月正式発表を前に話題のニューモデルの実像に迫るとともに、その背景に隠された狙いを読み解いていきたい。
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◆トライアンフ、新型タイガーのティザームービーを公開
よく見るとトライデント660とはだいぶ違う
詳細は明らかにされていないが、ネーミングや画像からも今年発売された新型ロードスター「トライデント660」がベースになっていることは明らかだ。となると、エンジンは水冷直列3気筒DOHC4バルブ。
ミッションの変速比やECUのマッピングなどにより、おそらく出力特性はより低中速寄りにアレンジされると思うが、最高出力はトライデント660の81psに近い値となるはずだ。
フレームについても画像ではほぼ同じに見えるが、スイングアーム形状はやや異なり長くなっているようだ。また、サスペンションも倒立フォーク&モノショックの組み合わせは同様だが、フォークのインナーパイプ長や後輪とシートレールの隙間の広さからは、前後サスのストローク量を増やして「足長タイプ」としていることがうかがえる。
最も大きな違いはフロントまわりの造形で、ヘッドライトは丸型1灯からツリ目2灯に。エアロタイプの大型スクリーンとハーフカウルが装着され、盛り上がったタンク形状からは容量アップも期待できる。これらの装備は長距離ツーリング性能を高めるために他ならない。
ハンドル形状もよりアップ&ワイドタイプとなり、シート形状もえぐりを大きくして車高が上がった分の足着き性を確保するなど、よりアドベンチャーモデルらしい仕様に作り変えられていることが分かる。
オンロード仕様のオールラウンダー!?
一方でホイールサイズは前後17インチにタイヤはミシュラン・ロード5を履くなど、オンロード設定になっている。マフラーもトライデント同様のダウンタイプだ。
通常、アドベンチャーモデルには走破性を高めるため、大径ホイールやアップマフラーが採用されることが多いが、こうした仕様からもタイガースポーツ660は未舗装路での走行はほぼ想定していないと考えられる。
その意味では兄貴分の「タイガー850スポーツ」に近いともいえるが、こちらは元々がタイガー900の派生モデルということで車体構成的にもずっとオフ寄りの仕様になっている。むしろ、かつて前後17インチに長い脚が与えられたスポーツツアラー「タイガー1050」シリーズに近い立ち位置と思われる。
ティーザー動画でも走行シーンはオンロードのみで、しかも一部女性ライダーをモデルに起用するなど、軽量で扱いやすく足着き性にも優れるオールラウンダーとしての魅力を強調しているようだ。
タイガー660シリーズのもうひとつの可能性
ただ、そこでひとつの疑問が生まれる。タイガーと名が付くのであれば、兄貴分の1200や900シリーズのようなオフロード仕様があってもいいのでは……。
最近はアドベンチャーツアラーのセグメントにおいても中間排気量が台頭してきているが、たとえば「タイガー900」や他ブランドでそのレンジを担う「KTM・890アドベンチャー/R」、「BMW・F750/850GS」などに比べても、タイガースポーツ660はさらに軽量コンパクトである。
全域フラットトルクかつパワーを稼げる3気筒のメリットを生かした上手いパッケージングでまとめれば、きっと相当なパフォーマンスを発揮できるはずだ。
そうなると、将来的には大径ワイヤースポークホイールにアップマフラーなど、より本格的なオフロード性能を備えた「タイガー660ラリー」(仮称)のような派生モデルが出てきても不思議ではない。否それを求めているファンも多いはずだ。
話が先走ってしまったが、そんな期待さえ抱かせてくれる新型タイガースポーツ660の正式発表が楽しみで仕方ないのである。
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