【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】
ハーフカウル&セパハン装備のスポーツ仕様
先週、突如としてトライアンフ公式YouTubeチャンネルで新型「スピードトリプル1200RR」のティーザー動画が公開された。New Speed Triple 1200 RR Design Prototypeのタイトルが示すようにプロトタイプの扱いになっているが、英国の本国サイトでは9月にすべてが明らかになると予告されていることから、すでにプロダクトモデルとして完成しているとみて間違いないだろう。
情報はごく限られたものだが、わずか49秒の動画をつぶさに観察すると、その全体像に迫るヒントが隠されている。まずネーミングからは現行モデルの「スピードトリプル1200RS」をベースにさらにスポーツ性能を高めた上級バージョンということが予測できる。RS(ロードスポーツ)があくまでも公道をメインステージとしているとすれば、RR(ロードレーシング)はサーキットでも通用するレベルを狙っていると考えられる。
そして、今回のRRだが動画を見て明らかなのはフロントカウルが装着されていること。車体の下半分は見えないのだが、うっすらと浮かび上がったシルエットはハーフカウルのようにも見える。エッジが効いたシャープなラインを描いていて、センターが盛り上がったバブルタイプのスクリーンと、丸型のLEDヘッドライトが組み込まれているようだ。
あえてネオレトロな雰囲気を演出することでRSやミドルクラスのストリートトリプル系とも差別化しているようだ。動画の最後にはライダーが低く伏せている絵が出てくるが、ハンドル位置は低めで腕の角度からもおそらくはクリップオンハンドルと思われる。脱着式のシングルシートカバーが装着されるなどスポーティなスタイルだ。
また、本国サイトで紹介されている画像からはタンクに映り込んだ電子制御サスペンションのコードのようなものが見えるなど、装備も一段とグレードアップされていることが予測できる。
ベースモデルからして「カウルのないSS」の走り
RRの走りを占う意味で、参考までにベースモデルであるRSについても少し触れておこう。スピードトリプルはトライアンフが誇るスポーツネイキッドの最高峰として、2021年にフルチェンジした8代目が投入されたばかりだ。伝統の水冷3気筒エンジンは排気量を従来の1050ccから1160ccへと拡大し、最高出力も30psアップの180psへと向上。
新設計フレームにより軽量化とマス集中化が進められた車体は10kg軽量化され、さらにサーキット仕様の足まわりに最新の電子制御を盛り込むことでトライアンフ史上最強のロードスポーツモデルとなっている。実はつい最近試乗する機会があったが、強烈極まるパワーと鋭いハンドリングも含め従来モデルとは一線を画す走りに驚嘆した。まさに「カウルのないスーパースポーツ」とインプレ記事でも紹介したとおりだ。
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デイトナ955iの再来なるか!?
スピードトリプルは1994年に初代がデビューしてからすでに30年近い歴史があるモデルだが、同時代にはデイトナT595(後に955iに改名されている)というリッタークラスの3気筒フルカウルスポーツが存在していた。そして、T595のエンジンは初代スピードトリプルがベースだった。
また、トライアンフにはかつて「スリッピー・サム」の愛称で親しまれた旧トライデント系の3気筒レーサーがあり、60年代~70年代にかけて幾度もマン島TTレースを制するなど一時代を築いたこともあった。
そう考えると、トライアンフにリッタークラスの3気筒フルカウルスポーツが復活しても何も不思議はないどころか、世界中のファンがそれを待ち望んでいると思っていいだろう。今回のRRはそこへの橋渡しとなる第一弾かもしれない。気が早いかもしれないが、将来的には市販車ベースでの最高峰レースであるスーパーバイク世界選手権への参戦へと夢は膨らむ。
近年のMoto2における独占的エンジンサプライヤーとしての実績に加え、新型スピードトリプル1200RSのハイパフォーマンスぶりを見るにつけ、その可能性は大いにあると期待してしまうのだ。
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