【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】
今のバイクは素晴らしいけれど、昔にも優れた楽しいバイクがいろいろあった。自分の経験も踏まえて「今あったらいいのになぁ」と思うバイクを振り返ってみたい。第2回は「カワサキ・KSR II」について。
前回のAX-1同様、レッドバロンの「譲渡車検」付き中古車のメディア試乗会で久しぶりにKSR IIに乗る機会があった。30年近く前になるが、実は自分もかつて所有していたことがあり、懐かしさとともに当時のことを思い出したのだった。
【「今あったらなぁ」のバイク達】
◆(1)【ホンダ・AX-1】バイク便御用達の街乗り最強マシン
オンとオフ、本当に速いのは誰か!?
KSRはそれ以前の空冷エンジンを搭載したKSの進化版として90年に登場した。エンジンを水冷化しホイール径を前後12インチに拡大、倒立フォークと前後ディスクブレーキを新たに装備するなど、当時のミニバイクとしては先進的なスペックだった。
そして、なんといってもこのスタイリング。当時、米国で流行っていたスーパーバイカーズの雰囲気を投影したモデルとして若者を中心に人気を集めたのだった。スーパーバイカーズとは、ロードレース、モトクロス、ダートトラックの有名ライダーを一堂に集めて「本当に一番速いのは誰なのか」を決めるレース。
のちにWGP500cc王者となるエディ・ローソンが2ストモトクロッサー「KX500」ベースの怪物マシンをフルカウンターでズリズリしていた姿が瞼に焼き付いて離れず、衝動買いしてしまったのがKSR IIだった(笑)。
ちなみにスーパーバイカーズの人気が欧州に飛び火してフランスで始まったのがスーパーモタード。マシンは大排気量モトクロッサーベースであることは同じだが、ホイールが前後17インチでアスファルト路面がメインであることが主な違い。
対するスーパーバイカーズはオンとオフの比率がほぼ同等で、高速のフラットダートやジャンプセクションが設定されるなど、アメリカンらしい危険な香りプンプンの豪快なレースだった。
ダートも遊べる通勤快速
話を戻して、排気量50ccのKSR Iに対し80cc版がKSR II。見た目は同じだがパワフルなKSR IIが当時からやはり人気で、最高出力10psは現代のZ125 PROをも上回る。毎日の通勤にも使っていたが、両腕で抱え上げられるほど軽量な車体に2ストの弾けるような瞬発力とくれば、とにかく速い!
都会のストリートではまさに敵なしだった。
KSR IIで奥多摩方面をツーリングしたり、途中の河川敷などもよく走った。当時はまだそういうことにうるさくない時代で、有志で作った秘密の場所が河原や野原のあちこちにあった。もちろん今は許されないが、いろいろな意味で曖昧さが残り、ヤンチャすることに寛容な昭和の空気が残っていた気がする。
ちょうど第三京浜の高架下にも私設のモトクロスコースがあって、小さなジャンプ台やウォッシュボードもある立派なものだった。週末になると、そこをモトクロッサーに混じってKSR IIで挑むのだが、12インチでフルボトムするわけだから当然ながら転びまくる。でも、笑っていられるのがミニのいいところ。
憧れのスーパーバイカーズに参戦!(ミニだけど)
そのうち、もっと思い切り走ってみたくなり、当時カワサキの「KAZE」が主催していたKSRのワンメイクに出てみたりもした。昔の筑波東コースでシリーズ戦をやっていて、コースの途中から特設のオフロードセクションに飛び出していく本格的なレイアウトで、雑草の生い茂る細い獣道のようなダートを全開で駆け抜けるのが楽しかった。コースに泥を持ち帰るのでブロックタイヤでも滑りまくるし、コテッとよく転ぶけれどケガもしない。
▲90年代前半、筑波東コースで開催されていたKSRワンメイクレース
ある意味、低い次元で安全に憧れのスーパーバイカーズを体験できたわけである。一周の中でオンとオフを走り分けるKSRのワンメイクレースは、腕を磨くのにもとても役立った。
KSR IIは通勤からツーリング、サンデーレースを楽しむところまで付き合ってくれた最高の相棒だった。オン・オフ両刀使いの本気で遊べるミニバイク。そんなモデルが今もあったらいいのになぁ、と思うのだ。
▲KSR IIでスーパーバイカーズミニレースに参戦した当時の筆者
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