
四輪車メンテナンスの世界では当たり前だが、手が届く範囲にブレーキ部品がレイアウトされているバイクの場合は、チューブを使った古典的な作業方法が多い油圧ブレーキシステムのエアー抜き作業。実際、そんな方法でも確実な作業進行は可能である。しかし、ひとたびワンマンブリーダーを利用すれば、その作業性の良さ、速さには、誰もが驚き、納得するはずだ。
目次
エアー抜きツールには様々な種類がある
ブレーキのエアー抜きツールとして一般的に知られているのは、注射器のようなシリンジにチューブ(ビニールやシリコンチューブ)を接続した工具だろう。コンプレッサーの圧縮エアーを利用して負圧を発生させ、ブレーキライン内のブレーキフルードや噛み込んだエアーを効率良く引き抜く、エアー式のワンマンブリーダーもある。ここで注目したいのは、チューブの途中に「ワンウェイバルブ」を装備し、ブレーキのエアー抜きを行う、ワンウェイバルブ付きのワンマンブリーダーだ。この工具があれば、ブレーキレバーを握ったり、ブリーダーを緩めたり、締め付けたりなどなど、テンポ良く行わなくてはいけない繰り返し作業を行う必要が無くなる。利用時にはいくつかの注意点もある。
「握って」「締めて」「放して」ではなく「締めずに」進行
文字通り「ワンウェイバルブ」が組み込まれたチューブをキャリパー側のエアーブリーダーへ差し込み、ブリーダーボルトを緩めてブレーキレバーを繰り返しポンピングする。勢い良くブレーキレバーをポンピングすると、ワンマンブリーダーのチューブが抜けてしまうのと、ブリーダーボルトのネジ山からフルードが滲み出してしまうこともあるため、ブレーキレバーのポンピングはゆっくり行う。ブリーダーボルトを緩めるときも、最低限の緩め量に調整するのが良い。
カラビナ付きペットボトルホルダーを利用する
ブリーダーボルトを緩め、ブレーキレバーを握ると、ブリーダーボルトに差し込んだ透明チューブの中をブレーキフルードが通過する(ブリーダーボルトから出てくる)様子を目視確認することができる。この際は、チューブエンドに空のペットボトルを差し込み、流れ出るブレーキフルードを溜めておくのが良い。夏場の給水時に、ペットボトルをベルトに引っ掛けて携帯することができる「カラビナ付きペットボトルホルダー」があると大変便利だ。
ホースがブリーダーから抜けないように作業進行
シリンジなどでエアーが噛み込んだブレーキフルードを抜き取る作業手順とは違い、そのスピードが圧倒的に早いワンマンブリーダーを使ったエアー抜き作業。早い分だけ、ブレーキマスターのリザーブタンク内に溜まったフルードは、一気に減っていく。タンク内が空になると再びエアー噛みの原因になるので、随時タンク内の残量を確認しながら作業進行するのが良い。レバーポンピングとフルード抜きをスムーズに進めるために、ブリーダーチューブの差し込み部分を結束バンドで締め付け、ブリーダーボルトの根元にグリスを多めに塗布することで、ブレーキフルードの漏れやエアー噛みを防止することもできる。
サイドスタンドでハンドルは左末切。レバーを握る!!
ブレーキレバーの握りに「いい感じの感触」が出れば作業終了だが、それでもさらに念のため、サイドスタンドでハンドルは左末切りにして、その状態で太い輪ゴムを使って(ここでは不要タイヤチューブの輪切りを利用)、ブレーキレバーを握り込み固定してみよう。そうすることで、さらに細かなエアー抜きを積極的に行うことができる。こんな状態の中、プラスチックハンマーでキャリパーや中間ジャンクションをコツコツ叩くことでも、噛み込んだ僅かなエアーが、上へ上へと昇っていく。作業終了後、この輪ゴム固定で車両を放置すれば、確実に満足度は高まるはずだ。また同時に、レバーを握った状態でブレーキフルード滲みが無いか!?確認することもできる。
- ポイント1・ワンウェイバルブの存在に注目。バルブ単品とホースを組み合わせればワンマンブリーダーに変身する
- ポイント2・ブレーキのエアー抜き時はリザーブタンクのフルード量を常時チェックして、フルードを切らさないように要注意
前後ブレーキおよびクラッチの操作方法がケーブルや金属ロッドのような機械式ではなく「油圧式」の場合は、作動油となるブレーキフルードのエアー抜き作業が必要不可欠になる(油圧式クラッチでも作動油にはブレーキフルードを利用)。ブレーキフルードは、マスターシリンダーのリザーブタンクから注入するものだが、単純にタンク内にフルードを流し入れても、ブレーキキャリパーへ向かって、なかなか流れ落ちてはくれない。そんな状況の中で、様々な作業手順が考案されてきた歴史があるが、「やり方の引き出し」は、状況に応じて使い分けることで、より一層、効率良く作業進行することができる。単純なブレーキフルードの入れ換え作業が一番容易だが、そんな作業時にもあると便利な工具は様々だ。
ここで注目したいのは、各種エアー抜きツールの中でも、通称「ワンマンブリーダー」と呼ばれる商品。一般的に、ブレーキフルードのエアー抜きや入れ換えを行う際には、キャリパーのエアーブリーダーにチューブを差し込み、
- 「1」ブレーキレバーを握っているときにエアーブリーダーを緩めることで、レバーの握り込み1回分のブレーキフルードを排出。その状態でレバーは握りっぱなし。
- 「2」ブレーキレバーを握り続けた状態でエアーブリーダーを締め付ける。
- 「3」ブレーキレバーを何度かポンピングした後に、再度、ブレーキレバーを力強く握り込む。
- 「4」再度、エアーブリーダーを緩めてブレーキフルードを排出。
- 「5」ブレーキレバーを握った状態のままで、エアーブリーダーを締め付ける。
- 「6」ブレーキレバーを戻したら、リザーブタンク内のブレーキフルードがレベル下限に達していないか確認する。そして、必要に応じて、新しいブレーキフルードを補給する。補給時は入れ過ぎに注意して、レベルラインの中間あたりに留めておくのが良い。
この「1」~「6」の作業を繰り返し行い、最終的にはブレーキフルードの入れ換えや、オイルライン内に滞留した「気泡=エアー抜き」を行う。この作業実践が、ブレーキフルード入れ換えやエアー抜きの基本手順と言える。
ここで注目したいのが、通称「ワンマンブリーダー」の存在である。ブレーキレバーを握った状態で、エアーブリーダーを緩める作業は楽ではないし、モデルによっては手が届かないこともある。そんなときにワンマンブリーダーを利用することで、前述した作業手順の「2」と「5」の作業が不要になる。
ワンマンブリーダーに組み込まれた「ワンウェイバルブ」が、ブレーキフルードの逆流を防ぐため、「2」「5」の作業タイミングで、エアーブリーダーを締め付けた状態と同じ環境を保つことができる。作業手順的には、ワンマンブリーダーをエアーブリーダーボルトへ差し込み、ブリーダーボルトを緩めたら(緩め過ぎには注意)、ブレーキレバーのポンピングを繰り返し、リザーブタンク内のブレーキフルードを送り込み続ける。タンク内のリザーブ量が減ったら、新しいブレーキフルードを注入し、ブレーキフルードの入れ換え作業を楽にするのだ。この繰り返しでブレーキフルードを新品に交換することができる。
ブレーキフルードは、極めて吸湿性が高いことで知られている。フルード内に湿気=水分が混ざると、ブレーキピストンがサビる原因になり、また、スラッジの堆積によってブレーキの作動性が低下。結論としてはブレーキ性能に影響してしまうのだ。また、大丈夫なつもりでも、湿気を含んだブレーキフルードでは、高温化に於けるブレーキ性能は著しく低下してしまう。重要保安部品のブレーキパーツを作動させるブレーキフルードこそ、エンジンオイルの交換と同様に、頻繁に交換するのが理想である。
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