どうしても入手できない部品があるときには、手作り=DIY製作することで、対処可能なことがある。そんな時に、素材として利用可能な部品があれば、部品完成までは近道を通ることができるはずだ。ここでは、50年以上前に生産された、ヤマハスーパースポーツモデル用エアークリーナーエレメントの自作にチャレンジしてみた。

純正部品で原寸を確認……



茶筒状のエアークリーナーエレメントを利用するモデルをパーツリストのイラストから目星をつけ、ダメモトで購入してみたのがスズキの実用車K125用とカワサキの大型車ZRX1200用。偶然にもZRX用の外径がピッタリで長さも2倍!! つまり1個の部品で2気筒分作れそうな雰囲気だった。偶然の出来事だが超ラッキー!!

真っ二つにカットして1台分





コンパスを使ってエアーエレメント外周中央にカットラインを引いた。カッターの刃は切れが良い新品に交換し、ケガキ線に合わせて刃を滑らせるようにカット。濾紙の内側には形状保持用の筒型ネットが入っていたが、昔の部品にはこのような補強は組み込まれてなかった。今回の修復でも、濾紙単体の強度でエレメント構造を維持しようと思う。仮に、当時物メーカー純正部品があったとしても、濾紙の劣化で簡単に破けてしまったり、濾紙としての機能を果たさず吸入負圧で濾紙が破けてキャブが吸い込んでしまうなど、様々なトラブルを想定することができる。ピッタリ寸法の素材があって本当に良かった。

こんなボロでも部品取りで利用!!



1963年製のメーカー純正エアーエレメントだと思われるが、グイっと指を押し込むと破れて爪が突き刺さる濾紙部分をすべて撤去。筒形エレメントの前後鉄板+濾紙がエアークリーナーとしての構造体となっているので、単純にエレメントを取り外して走れば……ともいかないのがこのモデル。濾紙の接着部分を徹底的に除去した。

熱の利用がやっぱり便利



完全固着した接着剤を除去できないので、カーベック製CVジュニアを利用してエンド金具をしっかり温めた後にスクレバーで除去した。メンテナンスの実践に於いて、部品を温めることで分解しやすくなる例は数多くあるので、そんな際にカーベック製のCVジュニアはとにかく便利。ガソリンタンクのサビ取り時にも、小型タンク(例えばスーパーカブのC100用)ならCVジュニア内に収まるので、ザビとりケミカルで満たしたタンクを温める(50~60℃)ことで、ケミカルの活性が高まり作業効率は圧倒的に良くなる。

接着剤の乾燥にもCVジュニア





キャブレターからの吹き返しで混合ガソリンが付着すると考えられるのがエアークリーナーエレメント。濾紙とエンド金具の接着にはガソリンに強いエポキシ系接着剤を利用した。エポキシ接着剤は熱硬化性なので、金具に接着剤を載せて濾紙を押し付けて馴染ませたら、80℃設定でしばらく待ち、実温度と設定温度を見比べ再度温度設定を調整。硬化が始まり濾紙が自立保持できていることを確認できたら取り出し、さらに自然乾燥で数日間放置してみた。完全乾燥後の強度は驚くほど頑丈だった。

ヤマハ2スト250ccのルーツ的モデル

元祖2ストロークスポーツバイク(当時のヤマハはスポーツカーと表現していた)として登場した1959年発売のヤマハ250S。その後、モデル名称がYDS1となり、1962年モデルとして登場したのが進化型のYDS2だった。初代YDS1とS2はオイルポンプを装備しない混合ガソリン仕様で、オートルーブ機能を標準装備したのはYDS3からだった。このモデルは初代モデルの進化型であるYDS2で、このモデルをベースに開発されたのが、ヤマハ発の市販ロードレーサーであるTD1だった。

POINT

  • ポイント1・無いもの、入手できないものは自作する。そんな考えを持つことで旧車ライフを楽しむことができる
  • ポイント2・ 似たような部品をベースにすることができれば、同じ機能の部品を自作することもできる

一生懸命手作りした部品=DIY製作部品でも、仕上がりが悪ければバイクにダメージを与えてしまうことがある。スポンジ製の湿式エアーフィルターエレメントを自作したときのことである。一枚ものの汎用フィルターシートが手元に無かったので、使い端のフィルタースポンジ数枚を接着して組み合わせ、エアークリーナーケースに仕込んだことがあった。すると、時間の経過で、スポンジ同士の接着部が剥がれ、それによってスポンジの切れ端がキャブに吸い込まれてしまった……。柔らかいスポンジ素材で小さなカケラだったこともあり、その後、エンジンから異音やピストンとシリンダーに引っ掛かるなどのトラブル発生は無かったが、そんな作業が原因で起こったトラブルは、すべて作業者自身の責任になる。DIYの際には、十分に気を配り作業進行しなくてはいけない。

ここでは、他メーカー純正エアークリーナーエレメントを素材に、流用製作したエアーエレメントを一例にするが、これとて、すべての責任を承知の上で作業進行している。必要な部品が入手できない例は、旧車メンテナンスの世界では当たり前のように数多くある。そんな壁に立ち向かっていくことが、旧車を楽しむ醍醐味でもあるが、確かにアイデア通りにうまくいったときは、実に嬉しいものだ。

数多くの閲覧者さんには、まったく縁が無いメンテナンス&DIY部品作り実践だが、将来もしも旧車ライフに興味が湧いたときには、このような方法でも部品自作できる事実をご存じいただければと思う。この作業時には、カワサキZRX1200用エアーエレメントを当てずっぼで(パーツカタログのイラスト参考で)購入したが、納品された部品の詳細寸法関係を知った際には、思わず「ガッツポーズ!!」。同じ方法ですでに部品作りをしていた方もいたようだが、旧車ファンなら情報共有したいものです……。

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